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イレイジャー/スノー・グローブ

イレイジャー (Erasure)初のクリスマス・アルバム『スノー・グローブ (Snow Globe)』が、2013年11月6日、日本で先行発売されます。

クリスマス・ソングのスタンダード・ナンバー8曲のカバーと、新曲5曲からなる作品です。

Snow Globe [帯解説・歌詞対訳付 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (TRCP147)Snow Globe [帯解説・歌詞対訳付 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (TRCP147)
(2013/11/06)
Erasure、イレイジャー 他

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運よく私は、このアルバムを正式リリース前に聴く機会に恵まれました。そういったわけで、今回のエントリでは『スノー・グローブ』を聴いての所感をつづりたいと思います。

イレイジャー バイオグラフィー (Queer Music Experience.)

クリスマス・アルバムというのは、基本的には企画アルバムだと思います。つまりはイレギュラーな作品であって、通常のオリジナル・アルバムとは同一線上で評すべき作品ではない場合も多いのですが、このイレイジャーの『スノー・グローブ』にかぎっては、そうではないと思います。

ある意味では通常のオリジナル・アルバム以上に、アンディ・ベルの現在のたたずまいが、ダイレクトに反映されたアルバムになっているように、私は感じます。

アンディ・ベルのような、デビュー時からカミング・アウトしていたゲイのアーティストのパブリック・イメージは、その先駆者であったトム・ロビンソンやジミー・ソマーヴィルのそれと、イコールになっていた傾向が、アンディ・ベルがデビューするまでは、強かったように思います。

それら先駆者の表現というのは、キャムプな側面もあるにはありましたが、マイノリティであるがゆえの悲哀や、政治的・闘争的な姿勢のほうが、より強く前に出ていました。

ゆえにオープンリー・ゲイのアーティストには、総じて悲壮感の漂うイメージが形成されていたように思うのです。

(あ、別にトム・ロビンソンやジミー・ソマーヴィルのことを批判しているわけではないですよ。私は彼らの表現も大好きだし、彼らのファンです)

トム・ロビンソン バイオグラフィー (Queer Music Experience.)

ジミー・ソマーヴィル バイオグラフィー (Queer Music Experience.)

しかし、アンディ・ベルの個性は、それらの先駆者たちとは、また異なるものでした。

アンディは、ゲイであることを哀しんだり、あるいはゲイを疎外する社会に怒りをぶつけたりするよりも、代表曲「ア・リトル・リスペクト (A Little Respect)」にもあるように、人々の融和を望んでいました。

だから、彼の表現は明るかった。

もちろん、少数者の痛みを、彼が知らなかったはずはありません。むしろ、その痛みをよく知っているからこそ、なおのこと彼は、他者に対して優しくあろうとしたのではないでしょうか。

その優しさに裏打ちされた、生来の楽天的な明るさ、前向きさこそが、アンディ・ベルというオープンリー・ゲイ・アーティストの新しさであったと思うのです。

しかし、21世紀に入ってから、そうしたアンディの楽天的な明るさには、変化が生じたように感じます。

といっても、アンディの表現に悲壮感が漂うようになったということではありません。

アンディの目線は、依然として光の射す方に向いています。しかし、そこには、荘重さとか峻厳さのようなものが備わったと私は感じるのです。

その変化の背景に、アンディとそのパートナーの HIV 陽性が1998年に判明したことが、どこまで影響しているのか、それは私にはわかりません。が、少なくとも無関係ではないように思います。

そして、現在のアンディの歌声に備わっている荘重さとか峻厳さが、クリスマスという宗教的な題材と結びつくことによって、通常のオリジナル・アルバム以上に際立っているのが、今作『スノー・グローブ』ではないでしょうか。

昨年(2012年)には、アンディのマネージャーでありパートナーでもあり、ともに闘病を続けてきたポール・ヒッキーが、62歳で亡くなっています。

そのポール・ヒッキーとの思い出に、この『スノー・グローブ』は捧げられていますが、そうした辛く哀しい体験を経てもなお、アンディは人々の安穏を願い、希望を歌いつづけています。

特にアルバムのオープニングを飾る新曲「Bells Of Love (Isabelle's of Love)」はまさにそうしたナンバーで、そんなアンディの歌声に、私は宗教者のような気高さすら感じるのです。

ぜひ、ひとりでも多くのかたたちに聴いていただきたい、感動的な作品です。

アルバムからのファースト・シングル「ガウデート (Gaudete)」は、ラテン語によって歌われている、キリスト生誕を祝う聖歌です。

"Gaudete"
ガウデート
(2013)

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ポップの叔父さん、アンディー・ベル

イレイジャーのヴォーカリスト、アンディー・ベルの初めてのソロ・アルバム『Electric Blue』が、10月3日に、イギリスで発売された。

Electric Blue


アンディーの公式サイトを見ると、どうやらこのアルバムは、イギリスとドイツ、U.S.A.のみの発売のようで、輸入盤が入荷されるのをずっと待っていたのだが、ようやく先日、TOWER RECORDSの新宿店で購入できた。

一足先に購入していた先行シングル「Crazy」を聴いた限りでは、それほど大幅にイレイジャーから路線変更しているようには感じなかったのだが、アルバムを通して聴いてみると、イレイジャーにはない曲調の作品も多く収録されている。

特に、シザー・シスターズのジェイク・シアーズと共演した「I Thought It Was You」は、ジェイクのイメージを充分に意識したディスコ・ミュージック調で、こういうタイプの曲を、ヴィンスはまず書かない。

ジェイクのソロ・パートが大サビだけなのが少し物足りないが、楽曲全体はまさにイレイジャーとシザー・シスターズの融合といった雰囲気で、期待に違わぬイメージ。

デビュー20年目にして初のソロ・アルバムであり、今が旬のシザーズとの共演という話題性もある『Electric Blue』だが、しかしどういうわけか、世間の反応は鈍いようだ。

このあとに紹介するインタヴューの中でも、アンディー自ら「オンラインでの反応をまるで見かけない」と述べている。

ヒット・チャートの成績も、シングル「Crazy」が全英35位、アルバムのほうは全英119位と、アンディーのこれまでの実績を考えると、ちょっとあり得ない数字である。

原因はいろいろあるだろうが、1つには、レーベルの宣伝不足が考えられる。アルバムのクレジットを見ると、「Andy Bell appears courtesy of Mute Records」とあり、そうした契約の仕方が、販売戦略には裏目に出たのかもしれない。



国内盤の発売はない上に、イレイジャー自体が日本では決して知名度が高いとは言えないので、『Electric Blue』発売にあたってのアンディーのインタヴューが、日本で活字になることは、ほとんど期待できない。

そこで、Gay.com UKに10月10日付で掲載された、『Electric Blue』についてのアンディーのインタヴューを、全文翻訳してみた。それを以下に掲載する。


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