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『あいたいおと』観覧記

『あいたいおと』ポスター 2013年11月28日(火)から12月9日(月)まで、新宿二丁目のコミュニティーセンター akta を会場にして、写真家の服部 敦(はっとり・あつし)さんの写真展『あいたいひと』が開催されました。

 そして、その企画の一環として、期間中の12月7日(土)には、同会場にてライヴ・イヴェント『あいたいおと』も開催されました。

 出演者は、服部さんとアサカさんのお二人によるユニットの豚豚フラッグ、ピアノ連弾のアサカ&秋山のお二人、このブログではおなじみの藤井 周さん、そしてみみずくずの林レイナさんの、計4組のみなさんです。

 コミュニティーセンター akta は、アジア最大のゲイ・タウンである新宿二丁目の、公民館のような場所です。多目的スペースなので、ギャラリーとして使われるだけでなく、今回のようにライヴ・イヴェントが行なわれることも少なくありません。私がこれまでに観覧記を書いたライヴ・イヴェントのうち、2005年6月5日開催の『dEliver from 大吾y』や、2011年4月16日開催の『pray and sing for 3.11 「僕らが奏でる祈りのうた」』などが、akta を会場にして行なわれたものでした。

 akta でのライヴというのは、出演者とオーディエンスの物理的な距離が近いという点では、カフェ・ライヴに共通する部分もあるのですが、会場の性質が異なっているためか、カフェ・ライヴとはまた違った雰囲気の音楽空間が楽しめます。

『dEliver from 大吾y』観覧記 (Queer Music Experience.)

pray and sing for 3.11 「僕らが奏でる祈りのうた」観覧記 (当ブログの2011年5月5日付のエントリ)

 そして、「展覧会の一環として行なわれたライヴ・パフォーマンス」という部分に着目するならば、私がこれまでに観覧記を書いたものとしては、2000年から2011年まで毎年夏に開催されていた、セクシュアル・マイノリティによるアートの祭典、Rainbow Arts において、ゲイ・ミュージシャンの Yosuke さんが、2010年度の最終日(7月31日)と2011年度の最終日(7月30日)に、それぞれライヴ・パフォーマンスを行なわれた例があります。このうち、2010年度のライヴ・パフォーマンスの観覧記を、私はこのブログに書いています。

Yosuke in Rainbow Arts 2010 (当ブログの2010年8月12日付のエントリ)

 この Rainbow Arts における Yosuke さんの試みというのは、2010年8月12日付のエントリの中でも述べているように、「音楽を『展示』する」というものでした。そして、そこで行なわれたパフォーマンスも、その試みの延長線上にある、いわば「展示作品と同列」のものであり、「展示の一部」として行なわれたものでした。

 では、今回の『あいたいおと』の場合はどうだったのか、というと。

「展示作品と同列」とか「展示の一部」であるというよりは、「写真展『あいたいひと』の姉妹編」という印象を、私は受けました。

 つまり、服部 敦という一人のクリエイターが、同じ一つのテーマを、写真という手法を用いて表現したものが、写真展『あいたいひと』であり、ライヴ・イヴェントのオーガナイズという手法を用いて表現したものが、ライヴ・イヴェント『あいたいおと』である、という。

 では、その「同じ一つのテーマ」とは何だったのか。

 それはもう、『あいたいひと』『あいたいおと』というタイトルが示しているとおり、「被写体となった人々に対する、服部 敦からの思い入れ」であったと思います。

 で、ですね。

 ここから先に私が書いていく内容は、あくまでも私個人の解釈であり、私個人の印象なのであって、絶対的な一つの評価ではない、ということは、どうか予めご承知おきください。

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マダム・ピロガネーゼ Live@池袋エイズフェス'13観覧記

 今日、12月1日は、世界エイズデーです。

 そして、その世界エイズデーの前日の昨日(2013年11月30日)、池袋にてエイズ啓発イヴェント『池袋エイズフェス'13』が開催されました。

 会場の中池袋公園は、2010年3月27日に鹿嶋敏行さんがワンマン・ライヴを行なわれた、豊島区民センターの向かいにあります。(そのときのライヴ観覧記はこちら。)

池袋エイズフェス'13 フライヤー


 主催は、やはり中池袋公園の向かいにある池袋保健所に、東京都が設置した、HIV/エイズに関する情報ラウンジ「東京都エイズ啓発拠点ふぉー・てぃー」さんです。

池袋保健所
池袋保健所


 私が『池袋エイズフェス』に足を運んだのは今回が初めてだったのですが、会場で配られていた印刷物に記載されていた共働団体一覧を見ると、学生さんのサークルが複数、名前を連ねていたり、その他の団体も「若者の立場からの情報発信」といったような趣旨のことを盛んに謳っていて、とにかく「若者」というワードがすごく強調されていて、既に四十台に足を踏み入れている私は、それらを読んで、一瞬「ウッ」となってしまったのが、正直なところだったりします。

「ひょっとしたら、中年の俺って、ここでは場違い?」みたいな。

 いや、もちろん、不愉快な思いをしたということでは全然ないですよ。こちらが一方的に、一人勝手に引け目を感じていただけです。

 うーん、なんと説明したらいいのかな。強いて例えるならば、四十を過ぎた私が、一般の客として大学の学園祭に足を運んで、「ああ、俺はもう、学生じゃないんだよなあ」という当たり前の事実を、今さらのように再確認してしまったような。それに近い感覚でした。

 これって、ジェネレーション・ギャップがどうこうという話ではなくて、自分は既に「若者」というコミュニティの外側なのだという事実を、頭で理解するのではなく、現実の事象として体感してしまったことの寂しさ、というか。

 まあ、要するにこれは、「若者」のコミュニティにも「熟年」のコミュニティにも属せない、まさしく「中間の世代」である「中年」のゲイの、単なる戯言です。

 戯言なんだけど、ちょっと書いてみたかったんです。すいません。

 それはそれとして。

 実際、『池袋エイズフェス』の雰囲気は、学園祭のそれに非常に近いと思いました。手書きの立て看板とかタイムテーブルとかを見ると、「ああ、こういうのって、大学のキャンパス内で、よく見かけたよなあ」なんて。

池袋エイズフェス 立看板

池袋エイズフェス テント横

「タイムテーブル」ではなく「タイムライン」となっているのは、
表(テーブル)じゃないから?(解釈に自信ナシ)
池袋エイズフェス タイムテーブル


 私は用事があったので会場には最後までいられなかったのですが、フィナーレにはパレードも行なわれたようです。

池袋エイズフェス フロート


 この『池袋エイズフェス』のように、休日の公園を会場にして行なわれる啓発イヴェントでは、ドラァグ・クイーンのかたたちがステージの上で「オカマ」とか「女装」とか、場末な単語を連発しているその前を、就学前の子どもさんがターッと無邪気に駆け抜けていったり、あるいはたまたま散歩に来ていたのであろう高齢者のかたが、「なんじゃ、これは」というような顔をしながらゆっくり横切っていくという、実にカオスな光景が、必ずと言っていいほど見られます。

 そうした光景を目にできるのが、実は私にはとっても嬉しいし、楽しい。

「まずは関心をもってもらう」という、あらゆる層へのアピールと、理解への入口としてのエンタテインメント性とかお祭りの要素も、啓発イヴェントには大事だと、私個人は思っています(HIVはLGBTだけの問題ではないし、啓発イヴェントとゲイ・イヴェントは何らイコールではないので)。

 この日の『池袋エイズフェス』でも、やはり親子連れのかたや、ご高齢のかたが、いかにもLGBTなかたがたに混じって、イヴェント企画のワードラリーに参加なされて、景品の豚汁やチョコバナナを召し上がっていらっしゃいました。

 こういう、カオスだけど和やかな光景、私は大好きです。

池袋エイズフェス お子さん連れのお母さん


 さて。

 このブログはLGBTミュージックについての話題が中心なので、ここから先は、既にこのブログでも何度も紹介させていただいている、マダム・ピロガネーゼさんのステージについて、主に書いていきます。

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第三回「だしょっ!」観覧記

第三回「だしょっ!」フライヤー今回のエントリも、開催から既に長い時間が経ってしまっているライヴの観覧記です。話題にする旬の時期を大幅に外してしまいました。すみません。

前々回のエントリは、観覧記と銘打ちつつも、実質的には評論でしたが、今回のエントリは、本当に普通の観覧記です。

去る3月31日(日)に、新宿二丁目のバー、がいずばを会場に、ライヴ・イヴェント『第三回「だしょっ!」』が開催されました。

その内容は、かつての日本のゲイ・インディーズ・シーンで活躍していたデュオ・ユニット、てるけん。のヴォーカリストであった、こるてさんのワンマン・ライヴです。

てるけん。は、当時は teruco 名義で音楽活動をされていたこるてさんと、現在では sola さんを始めとする数々のゲイ・ミュージシャンのサポート・ピアニストとして大活躍をなさっている、けんけんさんのおふたりによるユニットです。

てるけん。の詳しいバイオグラフィーは、つい先日に公開を再開したばかりの Queer Music Experience.本編に掲載してあります。こるてさんとけんけんさんのおふたりの、てるけん。時代をご存知ないというかたは、ぜひ参照なさってみてください。

てるけん。バイオグラフィー (Queer Music Experience.)

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おととわ。Vol.1観覧記

おととわ。vol.1 フライヤー今回は、ライヴの観覧記です。

とはいっても、開催からずいぶんと時間が経ってしまっているのですが。すいません。



3月16日(土)、早稲田の Le Cafe RETRO さんを会場に、写真家の服部敦さん企画のカフェ・ライヴ・イヴェント、『おととわ。Vol.1』が開催されました。

出演は、オープニング・アクトの babooextract さん、そして Men⇔Dy さん、アカクロさん、椎名竜仁さんの計4組のみなさんでした。

これらのみなさんのパフォーマンス自体に、大きな不満や疑問はありません。ただ、イヴェント全体のあり方や、その運営方法といった部分で、私の中にはモヤモヤが残りました。

そのことについて、ブログに書いてしまっていいものかどうか、大いに悩みました。開催から記事の掲載まで、こんなにも長く時間がかかってしまったのは、それがためです。

でも、あえて載せることにしました。

私がこれから記す内容を、運営側のかたがお読みになったら、まず間違いなく、気分を害されるだろうと思います。傷つけてしまうだろうと思います。ひょっとしたら実務上の迷惑をかけてしまうかもしれません。それは本当に申し訳なく思っています。

でも、ここに記した内容が、当日の来場客の一人であった私の、率直な感想と、そして意見です。

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とんちピクルス×鹿嶋敏行 秋分の日の五分五分スペシャル!観覧記

秋分の日の9月23日は、銀座6丁目の Miiya Cafe にて行なわれた、『たけださとしの歌のフリーマーケット実写版「とんちピクルス×鹿嶋敏行 秋分の日の五分五分スペシャル!」』に、お出かけしてまいりました。

全体は3部構成。まず第1部は、とんちピクルスさんのソロ。第2部は、サポートに竹内大輔さんを迎えての鹿嶋さんのソロ。そして第3部が、とんちさんと鹿嶋さん、さらに竹内さんも加わってのセッション・タイム。

とんちピクルスさん1 鹿嶋敏行さん1
鹿嶋敏行さん2 とんちピクルスさん2


とんちピクルスさんと鹿嶋さんの、おふたりの個性の好対照ぶりは、ご本人たちも今回のライヴのMCで「白と黒」「水と油」などといった自虐ジョーク的表現でネタにされていたんですが、藤嶋個人の感触としては、とんちピクルスさんと鹿嶋さんのあいだには、かねてから同じ匂いを感じていたのですよね。ご本人たちにもそのことは以前からお伝えしていたのですが、今回のライヴを企画なさったたけださとしさんも、たぶん藤嶋と似たようなことを感じていらっしゃったと思うんです。

ただ、その同じ匂いというのが何なのか、今まではうまく言語化できていませんでした。でも、今回のツーマン・ライヴを拝見したことで、ようやく言葉になってくれそうです。

とはいっても、厳密な音楽理論に基づいた話などではなくて、限りなく文芸解釈に近い、それでいていささかロジカルに過ぎるものかもしれないのですが。

     ☆

藤嶋によるとんちピクルス論は、既に Queer Music Experience.本編に記しています。その文章は本来 Q.M.E.のために書いたものではないので、文体がガチガチに堅いのですが、この中で述べていることをものすごく簡単にまとめてしまうと、とんちピクルスさんの世界観というのは、将来が保証されている安定した人生からはみ出してしまっている(あるいははみ出さざるを得ない)生き方への、共感とか感情移入によって成り立っている、ということです。

そして、ここからが今回の本題なんですが、そうした種類の共感や感情移入は、おそらく鹿嶋さんにも通ずる要素だと思うんですね。

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