FC2ブログ

柏本圭二郎ライヴ@Living Together Lounge Vol.72観覧記

『Living Together Lounge vol.72』フライヤーこれまた開催からずいぶんと時間が経過してしまいましたが(大汗)、今回のエントリは、2010年12月5日に開催されたHIV啓発イヴェント、Living Together Lounge Vol.72の中で行なわれた、柏本圭二郎(かしもと・けいじろう)さんのライヴの観覧記です。

Living Together Lounge は、新宿 CLUB ArcH を会場に、毎月第1日曜日に行なわれている、Living Together 計画のクラブ・パーティです。「HIVを持っている人も、そうじゃない人も、ぼくらはもう一緒に生きている」というリアリティーの共有をコンセプトに、HIV陽性のかたやその周辺のかたがたの手記のリーディングと、アーティスト/ミュージシャンのかたのライヴ・ステージによって構成されています。

※Living Together 計画のサイトはこちら

12月5日の Living Together Lounge では、圭二郎さんのマネージャーさんも、リーディングで出演されました。

圭二郎さんとの出会い、HIVとの関わり、圭二郎さんの代表曲「世界中のすべてのマリア」が書かれた背景などが、マネージャーさんの口から語られたのちに、その「世界中のすべてのマリア」の歌詞が、朗読されました。

この歌詞の背景には、HIVが深く関わっていたのです。

そして、マネージャーさんのリーディングが終了したあと、間髪を入れずに圭二郎さんのライヴがスタートしました。

続きを読む

スポンサーサイト



柏本 圭二郎/世界中のすべてのマリア

柏本 圭二郎「世界中のすべてのマリア」

日本で最も有名な LGBT のアーティストでいらっしゃる美輪明宏さんは、その著書やテレビ番組の中で、「無償の愛こそが究極の愛」であると、くり返し説いておられます。

有名な「ヨイトマケの唄」や、自ら訳詞を手がけられたエディット・ピアフの「愛の讃歌」も、「無償の愛」がテーマ。それらの「無償の愛」の数々を、美輪さんは大切に歌い続けておられます。

一方、今日の J-Pop で「無償の愛」の歌に出会えることって、ほとんどないですよね。

「ラブソング」という言葉は半ば日本語化していますが、その日本語化した「ラブソング」がテーマとしているのは、あくまでも「恋愛」であって、「愛」ではないような気がします。

J-Pop に限らず、今日のポピュラー音楽で、「恋愛」を超えた先にある「無償の愛」を歌おうとすると、その多くは「愛の歌」ではなく「平和を願う歌」になっているように思います。

もちろん、それはそれで素晴らしいんですよ? それらを批判したいわけじゃない。私がいいたいのは、「無償の愛」そのものがテーマの楽曲は、実は現代では希少なんじゃないか? ということです。

さて、当ブログの2010年7月9日のエントリでご紹介させていただいた柏本 圭二郎(かしもと・けいじろう)さんのファースト・シングル「イルミナシオン/恋の曲がり角」が、先日(10月10日)、ついに全国発売となりました。

イルミナシオン/恋の曲がり角イルミナシオン/恋の曲がり角
(2010/10/10)
柏本圭二郎

商品詳細を見る


そして同日には、ニュー・シングル「世界中のすべてのマリア」が、iTunes Store から配信リリースされました。

作詞は、前作「イルミナシオン」と同じく PSYOW さん。作曲は小林洋介さん。昭和歌謡的な世界観をエレクトロニック・ダンス・ミュージックにのせて歌い上げていたのが前作の特徴ですが、今作は打って変わって、スケールの大きなバラード。

プロデュースとアレンジを担当されているのは、HOME MADE 家族やスキマスイッチを手がけられた Taja の狩野佑次さん。2コーラス目からリズム体が本格的に加わることで段階的に力強さと躍動感を増し、大サビではクワイヤー風のコーラスも加わって大団円を迎えるという構成の、感動的なバラードです。

レコーディングの模様は、圭二郎さんのブログの8月7日付のエントリに詳しく記されていますが、今作のコーラスには、Taja の田中菜穂さんや、C-C-B の関口誠人さんも参加されています。

天使のラブソング!みんな!ありがとうございましたっ!!(圭二郎のウラ生、2010.08.07)

さて、この新曲を、圭二郎さんは「大きな愛の歌」と呼んでおられますが、この「大きな愛」というのは、「無償の愛」と限りなく近似値だと思います。

というよりも、ひょっとしたらこの曲で歌われている「大きな愛」は、その「無償の愛」さえもいたわり包み込んでしまうような規模のものかもしれません。

どれだけ裏切られ、略奪されようとも、自分はひたすら与え続ける、「無償の愛」。

ほんのかすかな温もりや光をよすがに、自分からは何も求めず、来世でも同じように愛し続けることを高らかに誓う「無償の愛」。

「無償の愛」は、それが傷つくばかりのものであるからこそ、尊い。

しかし、この「世界中のすべてのマリア」は、そうした「無償の愛」ゆえに背負ってしまう痛みを美化するだけの、傷心ソングには終わっていないと、私は思いました。

この曲は、「無償の愛」の持ち主であるがゆえに痛みを抱えながらも懸命に生きている、そうしたすべての人々を讃え、その傷を癒すために、より大きな次元での慈しみを注ぎ込んでいる――そういう曲です。少なくとも私の心にはそのように響きました。

アメリカのミュージック・シーンでは、クリスチャン・ミュージックというジャンルが音楽市場の一角を占めていますが、「世界中のすべてのマリア」は、クリスチャン・ミュージックの世界観に近い味わいを、J-Pop の世界に持ち込んだ曲のように聴こえました。

もちろん、マリア信仰を直接のテーマとしているわけではありません。ここでの「マリア」は、「慈愛」とか「慈悲」の象徴として歌われています。

「マリア」によって象徴される「慈愛」や「慈悲」の心とは、まさしく「無償の愛」。そして、この「世界中のすべてのマリア」は、そのタイトルにもあるとおり、この曲を聴いているであろう、世界中のありとあらゆる「無償の愛」の持ち主を讃え、さらにもっと「大きな愛」で包み込み、癒そうとする、そんなスケールの大きな、まさに「大きな愛」の歌なんです。

ちなみに圭二郎さんは、8月29日に新宿歌舞伎町で開催されたイベントで、この「世界中のすべてのマリア」を黄色い T シャツ姿で歌われたそうなんです(そのイベントは今年の24時間テレビの放映と同日の開催だったので:笑)。

このブログをご覧になってくださっているみなさんも、ぜひ「世界中のすべてのマリア」を聴いてみてください。そして、圭二郎さんがこの曲に込めた「大きな愛」を、感じ取ってもらえたらと思います。

“世界中のすべてのマリア”
(Live, 2011)


柏本 圭二郎「世界中のすべてのマリア」 - iTunes で「世界中のすべてのマリア」をダウンロード



柏本 圭二郎/イルミナシオン

「イルミナシオン/恋の曲がり角」CD ジャケット

ジャケットはレトロな昭和歌謡風味。イントロで鳴り響くトランペットの音色も、場末感ただようムード歌謡風。

……と思いきや、そこにすかさずドスドスと被さってくる、バスドラの重低音。

あれよあれよという間に、セピア色の昭和歌謡の世界は、きらびやかなエレクトロニック・ダンス・ミュージックの世界へと早変わり。

私の目下のヘビーローテーション曲、「イルミナシオン」とは、そんな曲です。

この曲を歌う柏本 圭二郎(かしもと・けいじろう)さんは、東海地方で活躍されている、いわゆるオネエキャラのタレントさんです。でも、見た目は野郎系、というところがポイント。

オネエキャラは所作や口調だけではなく見た目もフェミニンと理解されているノンケの方たちにとっては、圭二郎さんのキャラ設定は、ひょっとしたら軽いカルチャー・ショックかもね。

でも、藤嶋の周囲にいるゲイの友人のみなさんって、圭二郎さんのようなタイプの方が多いんですよ。

ノンケの方が「ゲイ」と聞いてパッと思い浮かべるような、華奢でフェミニンな方はむしろ少なくて、「ヒゲに短髪、でも中身は乙女」みたいな方のほうが、あくまでも藤嶋個人の場合は、圧倒的に多い。

だから、藤嶋には圭二郎さんのようなタレントさんのほうが、より身近な存在として感じられます。

さて、今年(2010年)の4月28日に発売された、柏本 圭二郎さんの初めての CD「イルミナシオン/恋の曲がり角」は、ダブル A サイド・シングルです。

圭二郎さんは現在コミュニティ FM で2本のレギュラー番組を担当していらっしゃいますが、そのうちの1本、『柏本圭二郎のとりあえず、生!?』で、圭二郎さんのためのオリジナル楽曲の募集をおこない、そして誕生したのが「イルミナシオン」なんだそうです。

昭和歌謡的なネオンの街の物語を、エレクトロニック・ダンス・ミュージックにのせて歌うという組み合わせの妙が、この曲の面白さだと思うのですが、でもこの組み合わせを実現するのは、かなり難しかったんじゃないかという気がします。

というのも、エレクトロニック・ダンス・ミュージックって、実は時代の流行にものすごく縛られているジャンルなんですよね。

ロックとは違って、音を聴いただけで、どの時代に制作された楽曲なのかが、だいたいわかってしまう。

たとえば、シンセサイザーの音色の違いとか、プログラミングによるドラムスの音色の違いとか、そういった要素に、時代性がものすごく出てしまう。

しかも、最先端の音作りを狙えば狙うほど、リリースからほんの少し時間が経過しただけで、時代遅れ感がかえって MAX になってしまう。

ということは、裏を返せば、レトロ感を意図的に演出するのも難しい、ということでもあるんです。

だから、往年のダンス・ミュージックの再現を試みたとしても、同時代性からは決して離れられない。

ところが、「イルミナシオン」のアレンジメントって、不思議とタイムレスな仕上がりなんですよね。

たとえば、この曲のピアノの鳴らし方って、明らかに80年代末の、初期のハウス・ミュージック風です。でも、全体のアレンジメントは、決して初期のハウス・ミュージックを再現したものではありません。

うねるようなシンセ・ベースの鳴らし方は、90年代前半のテイストだし、それらのシンセサイザーの音色自体は、2000年代以降のエレクトロニカ風です。

このように、それぞれの時代の流行が、決してあからさまではないサジ加減でミクスチャーされていることによって、「イルミナシオン」のアレンジメントは、たぶん二十代の人が聴いても、三十代以上の人が聴いても、懐かしさと新しさが程よく入り混じった、同時代性の縛りからは自由なエレクトロニック・ダンス・ミュージックになっているんです。

だから、昭和歌謡的な世界観の歌詞と組み合わせても、エレクトロニック・ダンス・ミュージックが半ば必然的に帯びている同時代性とのギャップが、この曲の場合は、ほとんど生じていません。

それどころか、その昭和歌謡的な世界観までもが、アレンジメントの力によって、タイムレスなものになっている。

どんな世代の人が聴いても、新しさと懐かしさの両方を感じることができる。それが、「イルミナシオン」という楽曲の魅力だと思います。

それともうひとつ、というよりも、これこそがいちばん肝心な点なんですが、この「イルミナシオン」で特筆すべきは、柏本 圭二郎さんのオネエというキャラクター設定が、曲中にはまったく持ち込まれていない、ということです。

通常、オネエキャラのタレントさんが CD をリリースされるときには、そのタレントとしてのキャラクター設定が、そのまま曲中に持ち込まれている場合がほとんどです。

たとえば、IKKO さんや、はるな愛さんのデビュー CD では、「どんだけ~」や「いうよね~」といった決めフレーズが、楽曲のタイトルやサビの部分の歌詞にも、そのまま用いられています。

また、オープンリー・ゲイのタレントの前田健さんが CD を出された際には、持ちネタのひとつである「前田健子」というキャラクター設定が持ち込まれていました。

このような手法を、私は批判的に見ているわけではないです。このほうが購買層にとっては親しみやすいものができあがりますから。

ただ、こうした手法は、「本業は歌手ではないタレントさんの、企画モノ作品」という色合いが強くなってしまうので、継続的な歌手活動にはつながりにくいんですよね。それが残念で。

柏本 圭二郎さんの場合も、もうひとつのダブル A サイド曲であり、番組で共演されている“H♡美”さんこと沢野ほなみさんとのデュエット曲「恋の曲がり角」のほうでは、ふだんの圭二郎さんのオネエキャラの設定が、そのまま持ち込まれています。

ところが、「イルミナシオン」のほうには、そうしたキャラ設定は持ち込まれていないんですね。

つまり、「イルミナシオン」という楽曲は、圭二郎さんがパーソナリティーを務めておられるラジオ番組の企画から誕生した作品でありながら、実は圭二郎さんのタレントとしてのキャラ設定に基づいて成立している楽曲では、ないんですね。

ということは、この曲を歌っているのは、実は「オネエタレントの柏本 圭二郎」ではなく、あくまでも「歌手・柏本 圭二郎」なんです。

これこそが、この楽曲のいちばん肝心な点だと、私は思います。

“イルミナシオン”
(Live, 2011)


「イルミナシオン/恋の曲がり角」のネット通販は、こちらでどうぞ。
OTAI RECORD

柏本圭二郎 MySpace

柏本圭二郎 HP