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前回のエントリでは、ニューヨークのボールルーム・シーンを発信源とするクイアー・ラップと、そこで活躍しているラッパーで、先月末に新作ミックステープをリリースした2組のうちの一人、Le1f(リーフ)の音源や映像を紹介しました。

そして今回は、その2組のうちのもう一人、ケイクス・ダ・キラー (Cakes Da Killa)について書いていきます。

ケイクス・ダ・キラーは、2011年に最初のミックステープ『Easy Bake Oven EP』を発表しています。そして、Le1f の新作『Fly Zone』の配信開始と全く同日の先月(2013年1月)29日に、ケイクス・ダ・キラーも、新作ミックステープ『The Eulogy』をリリースしました。

『Easy Bake Oven EP』ジャケット
『Easy Bake Oven EP』ジャケット

『The Eulogy』ジャケット
『The Eulogy』ジャケット


『The Eulogy』からの先行シングル「Goodie Goodies」のミュージック・ヴィデオは、今のところはまだ制作されていないようですが、前作『Easy Bake Oven EP』の収録曲「Whistle (Beat It Up)」のオフィシャル・ミュージック・ヴィデオは、YouTube にて視聴が可能です。ご覧になってみてください。

"Whistle (Beat It Up)"
(2012)


というわけで、ケイクス・ダ・キラーは女装ラッパーではありませんが、前回のエントリで紹介した Le1f と同様(か、あるいはそれ以上に)、日本で言うところのオネエ的な所作で、ギャングスタ・ラップをパフォーマンスしています。

日本のオネエ系タレントのみなさんをテレビ番組で見慣れているかたたちの目から見ても、ケイクス・ダ・キラーのオネエっぷりは、かなりのものである気がするのですが、こうしたスタイルを採択しているにもかかわらず、意外にもケイクス・ダ・キラーは、そのインタヴューの中で、クイアー・ラップについて懐疑的な発言が目立っているのが私には興味深くあります。

たとえば、今月(2013年2月)8日に『Out』誌のサイトに掲載された、『The Eulogy』の紹介記事によると、ケイクス・ダ・キラーは、「『クイアー・ラップ』のトレンドがどこに向かっているのかが僕にはわからなかったし、その一部にはなりたくなかった」と発言しています。

LISTEN: Cakes Da Killa's 'Goodie Goodies' (Out Magazine, 2013.02.08)

また、前回のエントリからリンクを張っている Pitchfork.com の記事によると、ケイクス・ダ・キラーは Le1f やその他のクイアー・ラップの先人たちに畏敬の念を抱いてはいるのですが、しかしその一方で、ゲイのラッパーであるというだけで、彼らの二番煎じ、後追いだと思われてしまうことを、非常に嫌がり、怖れているんですね。

(註:Le1f がラッパーとしてデビューしたのは、ケイクス・ダ・キラーよりも後のことですが、既にそれ以前から Le1f はプロデューサーとしてクイアー・ラップ・シーンではよく知られた存在でした)

これらのインタヴュー記事を読む限りでは、ケイクス・ダ・キラーというアーティストは、ゲイであることにはオープンである一方で、自分がオープンリー・ゲイのラッパーであることや、そうであり続けることについては、迷いとか怖れのような感情がある、という印象です。

『Easy Bake Oven EP』のダウンロードは、下のURLからどうぞ。
http://downtownmayhem.com/DTMRecords.html


『The Eulogy』のダウンロードは、下のURLからどうぞ。
http://mishkanyc.bandcamp.com/album/the-eulogy




さて、私は前回のエントリで、ニューヨーク・クイアー・ラップが現地ではどのように受容されているのかが、インターネットによるリサーチだけではわかりづらい、と書きました。

その感触に、依然として変化はないのですが、先に紹介した YouTube の「Whistle (Beat It Up)」のコメント欄に、興味深い投稿がありました。

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2013.02.19 Top↑
YouTube に代表される動画共有サイトや、楽曲のダウンロード販売の普及によって、海外のLGBTインディー・ミュージシャンの楽曲に接したり、その音源を入手したりするのは、私がそれらのミュージシャンについてネット上で記事を書き始めたころ(2001年ごろ)と比較しても、明らかに容易になりました。

とはいうものの。

日本にいながらにして、それらの現場の「空気」までも体験することは、依然として難しい。

というか、どれだけ技術が進化しようとも、それはたぶん不可能だと思います。

レポート記事やライヴ映像だけでは絶対に伝わらない、現場での盛り上がりを実際に体験した者でなければ共有することのできない「空気」は、確かにあります。

そして、その「空気」こそが、実はムーヴメントの原動力であったりします。

たとえば、何かのムーヴメントを批判するかたたちというのは、往々にして、そうしたムーヴメントの外側にいらっしゃいますよね? ムーヴメントの現場の「空気」を、ご自身でも実際に体験された上で批判行為をなさっているかたは、ごく少ない。ところが、初めはそのムーヴメントに否定的だったにもかかわらず、実際にムーヴメントの現場の「空気」に接した途端に、当初の考え方を大きく転回なさったというケースも、実は珍しくないんです。

結局、人は論理によってのみ動くものではなく、現場の「空気」こそが、人を衝き動かしているんです。

良くも悪くも、人は「空気」によって動かされます。

思想や理念は、あくまでもムーヴメントの起点でしかなく、ムーヴメントを実際に動かしていく原動力となっているものは、実はその現場を満たしている「空気」の中にあるんです。

「空気」の中に原動力があるからこそ、それに実際に触れることによって、理念とか思想が大幅に転回するということも起こり得る。

人を動かすのは、実は「空気」なんです。良くも悪くも。

だから、現場の「空気」を自分でも体験し、自分のものとしない限りは、そのムーヴメントに賛同するにせよ、あるいは批判するにせよ、いったい何がそのムーヴメントを衝き動かしているのかという、動きの本質を把握することは、まず不可能です。

何かのムーヴメントについて語るとき、それが賛辞であれ批判であれ、そのムーヴメントの現場に実際に足を運んで、現場の実際の「空気」を体験していないのであれば、それはかなりの手落ちなんですね。

ということは、つまり。

私がこのブログに書いている、海外のLGBTのインディー・ミュージック・シーンについての記事は、実は手落ちだらけなのです。現地取材をした上で書いているわけではないから。



と、まあ、このように長々と、冒頭からエクスキューズに走っている理由というのは、今回のエントリで取り上げようとしている話題は、現場の「空気」を実際に体験した上で書いている話ではないからです。

今回のエントリは、ニューヨークのボールルーム・シーンにおけるクイアー・ラップについてのお話です。



ニューヨークのクイアー・ラップについて、私が興味を持つようになったのは、下のリンクの記事を読んだのがきっかけです。

We Invented Swag: NYC's Queer Rap (Pitchfork, 2012.03.21)

これはほぼ1年前の、決して新しくはない記事ですが、それを今こうして引っ張り出してきているのは、この記事の中で紹介されている若手のラッパー2組が、先月の末に、そろって新作ミックステープをリリースしたばかりだからなんです。

その2組のラッパーについて、より詳しい情報を求めていろいろと調べていく中で、私はこの Pitchfork.com の記事と出会いました。

そこで紹介されているラッパーたちの多くは、ニューヨーク・クイアー・ラップについての予備知識がない人の目には、まず間違いなく、イロモノに見えることと思います。

具体的に説明すると、彼らニューヨークのクイアー・ラッパーたちは、たとえば一目で男性だとわかるような女装姿(ヒゲを生やしたままの軽女装)とか、あるいは日本の文化で言うところのオネエ・キャラ丸出しの所作でギャングスタ・ラップをパフォーマンスしたりしているんですね。

ニューヨークのクイアー・ラップ・シーン1

ニューヨークのクイアー・ラップ・シーン2
(画像は Pitchfork より)


こうしたニューヨークのクイアー・ラップは、音だけを聴いているぶんには、非常に尖ったサウンドと内容をもった、アヴァンギャルドな味わいのゲイ版ギャングスタ・ラップなんですが(ゲイングスタ・ラップとも呼ばれています)、そんな彼らのパフォーマンス・スタイルは、ヒップホップ・カルチャーにおける同性愛嫌悪の激しさとか根強さを知らない人の目には、単にコミカルなもののように映るだろうと思います。

しかし、彼らがこのようなパフォーマンス・スタイルを選択しているのは、最初は奇を衒ったに過ぎなかったのかもしれませんが、それを実際に貫いていくにあたっては、ヒップホップの激しい同性愛嫌悪と、否が応でも向かい合っていかなくてはなりません。

つまり、女装やオネエ・キャラと、ギャングスタ・ラップという組み合わせは、実は非常に闘争的な性質のものなんですね。

そうした知識があるのとないのとでは、彼らのようなパフォーマンス・スタイルは、見え方が大きく変化してしまうのです。

さらに加えて、それらのクイアー・ラッパーが活躍しているニューヨークのボールルーム・シーンというところも、また独特の性質があるんですね。

1990年代の初頭に、マドンナの「ヴォーグ (Vogue)」の大ヒットによって一気に世に広まったヴォーギングは、このニューヨークのボールルーム・シーンを発祥の地としています。ボールルーム・シーンについては、日本語版ウィキペディアの「ヴォーギング」のページでわかりやすく解説されているので、ぜひそれを参照していただきたいのですが、このボールルーム・シーンの主な担い手は、黒人のゲイ男性です。

ということは、ニューヨークのボールルーム・シーンで活躍しているクイアー・ラッパーたちにとって、ヴォーギングとは、「自分たちが生み出した、自分たち自身の文化」に他ならないんですね。

先月末に新作ミックステープをリリースした、ニューヨークのボールルーム・シーンで活躍している2組の若手ラッパーのうちの一人、Le1f(リーフと発音します)の「Wut」という楽曲のミュージック・ヴィデオでは、Le1f がヴォーギングを披露しています。しかし、それはダンサーとしての訓練を受けた上での本格的なものではないからこそ、ニューヨークのボールルーム・シーンやヴォーギングについての知識をもたない人の目には、このミュージック・ヴィデオにおける Le1f の姿は、単に「ヴォーグ」の振り付けをパクったゲイのラッパーとしか見えないのかもしれないのです。

しかし、そうではないんです。

Le1f にとってヴォーギングとは、「自分たち黒人のゲイが生み出した、他ならぬ自分たち自身の文化」なんです。

ヒップホップの同性愛嫌悪に関する知識と、ヴォーギングの成り立ちの背景にあるニューヨークのボールルーム・シーンと、それを形成した黒人のゲイの人々に関する知識があるのとないのとでは、ヴォーギングをしながらギャングスタ・ラップをパフォーマンスする Le1f の姿は、絶対に見え方が変わってくるはずなのです。

"Wut"
(2012)


で、ですね。

私が今回のエントリの冒頭で、長々とエクスキューズした、「現場の『空気』を体験していなければ、それはそのムーヴメントの本質を把握したことにはならない」という話。

それが、ニューヨーク・クイアー・ラップ・シーンについての話題と、どう結びついてくるのかというと。

2013.02.16 Top↑
日本時間の2月11日に授賞式が行なわれた、第55回グラミー賞。最多の6部門にノミネートされていたフランク・オーシャン (Frank Ocean)は、残念ながら主要3部門での受賞はならなかったものの、アルバム『チャンネル・オレンジ (channel ORANGE)』が最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム賞を、そしてジェイ・Z&カニエ・ウエストとのコラボレーション曲「No Church In The Wild」が最優秀ラップ/歌唱コラボレーション賞を受賞。計2部門を制しました。

おめでとうございます!

"No Church In The Wild"
(Jay-Z & Kanye West feat. Frank Ocean)

(2012)


また、フランク・オーシャンはステージ・パフォーマンスも披露しました。曲は、最優秀レコード賞にノミネートされていたシングル「シンキン・バウト・ユー (Thinkin Bout You)」ではなく、『チャンネル・オレンジ』の実質的なエンディングである「フォレスト・ガンプ (Forrest Gump)」でした。

この「フォレスト・ガンプ」は、歌われている対象が"Boy"であり、同性愛を歌っているのではないかとも言われている曲です。

そうした曲をグラミーのステージで披露したからには、アメリカのゲイ・メディアは、さぞかしこれを絶賛しているだろうと思いきや、意外にも総じて反応は今一つでした。

Is Frank Ocean's "Forrest Gump" the Greatest LGBT Grammy Performance? (AfterElton, 2013.02.11)

上のリンク先のコラムを書いたルイス・ヴァーテルさんは、フランク・オーシャンの今回のグラミーでのパフォーマンスに、かなり拍子抜けの態であるようです。

キーボードを演奏しながら歌っているフランク・オーシャンが、タイトルにも引用されているフォレスト・ガンプよろしく、あたかも走っているかのように見える仕掛けが施された、凝っているといえば凝っているステージングでしたが、しかしその仕掛けによって何かが起こるというわけではなく、淡々と進行して淡々と終了。「え? これだけ?」といった感じの物足りなさが残るパフォーマンスではありました。スタンディング・オベーションも、映像で見る限りではまばらな印象です。

グラミー側からの著作権侵害の申し立てによって、YouTube 上からは先日のグラミーの映像がどんどん削除されており、件のフランク・オーシャンのパフォーマンス映像も、すぐに削除されてしまう可能性が大ですが、いちおう埋め込んでおきます。関心のあるかたは、観られるうちに観ておいてくださいね。

"Forrest Gump"
(Live at the 2013 Grammys)


ちなみに、先のコラムの執筆者のヴァーテルさんによると、グラミーの授賞式におけるLGBTアーティストのベスト・パフォーマンスは、k.d.ラングの「コンスタント・クレイヴィング (Constant Craving)」で、最も過大評価されているのが、2001年にエミネムの「スタン (Stan)」を本人と共演したエルトン・ジョンだそうです。なるほど、確かに。


2013.02.13 Top↑
『Fragiler』ジャケット新宿二丁目の ALAMAS CAFE のDJブースから、毎月第四金曜日の22時より公開放送されている、ゲイ雑誌『Badi』の公式 USTREAM 番組『Badi チャンネル』のテーマ・ソング「KnocK」を歌われている、シンガー・ソングライターの Men⇔Dy (メンディー) さんの2枚目のアルバム『Fragiler』(フラジャイラー)が、2月3日より発売開始となりました。

同日には、やはり同じく ALAMAS CAFE のDJブースから、こちらは毎月第一日曜日に公開放送されている、Men⇔Dy さんがメイン・パーソナリティーの USTREAM 番組『ジェンダラスナイト』にて、『Fragiler』の全曲紹介がありました。

『ジェンダラスナイト』は録画放送もされているので、このブログをお読みになってくださっているみなさまも、ぜひ下のURLをクリックして、『Fragiler』の全曲紹介をご覧になってみてください。58:40前後から全曲紹介が始まります。

http://www.ustream.tv/recorded/29006057

さらに、たけださとしさんのポッドキャスト『たけださとしの歌のフリーマーケット』でも、Men⇔Dy さんをゲストに迎えた前後編が、やはり2月3日から配信開始となっています。

第185回★Men⇔Dyの地味なニューアルバムに込められたアーティスト魂! 2/9のイベントもよろしく(前編)★(たけださとしの歌のフリーマーケット、2013.02.03)

第186回★Men⇔Dyの地味なニューアルバムに込められたアーティスト魂! 2/9のイベントもよろしく(後編)★(たけださとしの歌のフリーマーケット、2013.02.03)

この『歌のフリーマーケット』の前後編や、『ジェンダラスナイト』の中でも語られているように、今回の Men⇔Dy さんのニュー・アルバム『Fragiler』は、Men⇔Dy さん曰く、「地味」なアルバムです。

どう「地味」なのかというと。

これまでの Men⇔Dy さんの楽曲にあったような、明るくダンサブルな要素が影を潜め、バラードや、あるいはプログレ色のある暗いイメージの楽曲が、その中心となっています。

そして、全体のテーマは、タイトルにもあるとおり、「コワレモノ」。

Men⇔Dy さんはご自身のブログの中で、今作について、次のように記していらっしゃいます。

「人は皆コワレモノ。
儚いモノを抱え、健気に生きようとすればするほど傷ついてしまうものです。

でも、私はそんな人間が好きです。
先にある砂粒くらいの光に向かって、もがきながらも進もうとする人の方を押してあげる事が出来るように、そういう気持ちで今作は作っていきました。

もがく事、絶望。
私にとって絶望は、先に進もうとする人が誰しもが味わうプロセスだと思っています。
そう考えると、絶望という言葉そのものは、けっしてネガティブな言葉には思えないのです。

いつかどこかで、絶望のふちにいる誰かの耳にこの作品が届いて、少しでも後押しする事が出来たなら、その時ようやくこのアルバムを出した事に達成を感じる事が出来るような気がしています。」


私が Men⇔Dy さんのことを知ったのは、実は比較的近年のことです。だから、Men⇔Dy さんのデビューから今日までの変遷を、すべて見てきたわけではありません。そんな俄かファンの私であっても、今回の『Fragiler』が、これまでの Men⇔Dy さんのパブリック・イメージに比して相当「地味」な作品に仕上がっていることはわかります。むしろ、昔から Men⇔Dy さんのことを知らなかったぶん、Men⇔Dy さんの表現の引き出しの多寡がわかっていないからこそ、今回の変化の振幅が、なおさら大きく感じられるのです。

しかしながら、この「地味」なテイストこそが、Men⇔Dy さんが前々から取り組んでみたかった路線であるということは、たけださんの『歌のフリーマーケット』の中で、Men⇔Dy さんご自身の口からじっくりと語られています。「地味」であるせいで、ひょっとしたらこれまでのリスナーが離れていってしまうかもしれないことすら、Men⇔Dy さんは覚悟なさっているようで、それだけ強い思い入れが、この『Fragiler』には込められているのだということが、『歌のフリーマーケット』での Men⇔Dy さんのインタヴューを聴けばよくわかります。

さて。

Men⇔Dy さんが音源上でこれだけ大きな変化を示したとなれば、次に気になってくるのは、Men⇔Dy さんのライヴ・パフォーマンスの内容が、楽曲の雰囲気の変化に伴って、いったいどのように変貌するのか、ということ。

アルバムの発売開始からほぼ一週間後の2月9日には、Men⇔Dy さんと小松美佳さんの共同企画によるライヴ・イヴェント『Men⇔Dy × 小松美佳 presents 「shimokita 雪山ロッヂ」』が、下北沢 MOZAiC にて開催されました。出演は、Men⇔Dy さんと小松美佳さんのほかには、HIRUGI.co さんと、そして Men⇔Dy さんと共に『ジェンダラスナイト』のパーソナリティを務めていらっしゃる ooming.さんをヴォーカルに擁するロック・バンド、わるだくみの、計4組。

この『shimokita 雪山ロッヂ』は、『Fragiler』の発売記念ライヴではなく、会場を雪山のロッジに見立てた、コンセプト・ライヴです。架空のロッジから届けられる架空のラジオ・プログラムという体裁で、ライヴの全体が進行します。舞台転換のあいだには Men⇔Dy さんを始めとする出演者のみなさんによるラジオ風のトークも繰り広げられ、単なる対バン・ライヴとは一線を画した、テーマ・パーク感覚のライヴ・イヴェントでした。

これを企画した Men⇔Dy さんとしては、当日いらっしゃったお客さんから感想をいただくのであれば、ご自身のライヴ・パフォーマンスへの感想だけではなく、企画そのものへの感想や、共演者のみなさんのライヴ・パフォーマンスの感想なども、当然お聞きになりたいことと思います。だから、『shimokita 雪山ロッヂ』の観覧記を私も書くのであれば、Men⇔Dy さんについてだけではなく、イヴェント全体についても述べるべきだとは思うのですが、いかんせん字数が膨大になってしまうので、ここではあえて、このイヴェントにおける私のいちばんの関心事であった、『Fragiler』発売後初の Men⇔Dy さんのライヴ・パフォーマンスについて、話題を絞らせていただきます。



というわけで、先にも述べたとおり、私は Men⇔Dy さんのライヴを拝見するようになってから、実はまだそれほどの年月を経てはいませんが、その程度の俄かファンである私にも、Men⇔Dy さんのライヴ・パフォーマンスにはダンサブルなイメージがありました。

と同時に、そのダンサブルなイメージは、アーティストとしての Men⇔Dy さんの偽りなき一つの側面ではあったとしても、決して本質ではない、という感触も、実はありました。
2013.02.12 Top↑
日本時間では2月11日に発表となる、第55回グラミー賞。LGBTミュージックという切り口から見ての最大の注目点は、なんといっても、フランク・オーシャン (Frank Ocean)の受賞があるかどうか。

昨年、メジャー級の黒人男性ヒップホップ・アーティストとしては初めて、同性愛をカミング・アウトしたフランク・オーシャン。デビュー・アルバム『チャンネル・オレンジ (Channel Orange)』は『Billboard』誌の Top200で最高2位を記録する大ヒット作となっています。また、そこからのシングル「シンキン・バウト・ユー (Thinkin Bout You)」は、同じく『Billboard』誌の Hot100で、まず2012年7月に最高72位を記録。その後は順位を落としていましたが、11月にアメリカン・ミュージック・アワードでのステージでパフォーマンスを披露し、その反響で「シンキン・バウト・ユー」は再度ヒット・チャートを上昇。このときは最高39位を記録しました。そしてグラミー賞にノミネートされた直後にも三度目の浮上を果たし、結果、現時点では最高32位を記録しています。今回のグラミーの授賞式でもフランク・オーシャンはパフォーマンスを予定しているので、受賞結果の如何を問わず、「シンキン・バウト・ユー」のピーク・ポジションがまたもや更新される可能性は、十二分にあり得ます。

チャンネル・オレンジチャンネル・オレンジ
(2012/08/22)
フランク・オーシャン、ジョン・メイヤー 他

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批評家筋からの高い評価を得ていることで商業的な成功をも手にしているフランク・オーシャンは、まもなく発表となる第55回グラミー賞では、レコード・オブ・ザ・イヤー、アルバム・オブ・ザ・イヤー、ベスト・ニュー・アーティストの3つの主要部門を含む、計6部門にノミネートされています。

アメリカのLGBT向けエンタテインメント・ニュース・サイト、NewNowNext.com は、"Will Frank Ocean Make (Queer) History On Grammy Night?"と題したコラムの中で、「もしもフランク・オーシャンがグラミーを受賞したならば、それは、オープンリー・ゲイであることが音楽界での成功を阻む障壁とはならないということを証し立てる、大きな一歩になるだろう」と述べています。

Will Frank Ocean Make (Queer) History On Grammy Night? (NewNowNext, 2013.02.07)

さらにこのコラムで興味深いのは、フランク・オーシャン以外にも、過去にグラミーを受賞したり、あるいはノミネートされたりしたLGBTアーティストの例がいくつか紹介されているところです。

それによると、まずブロードウェイ・ミュージカルの大御所作曲家であるスティーブン・ソンドハイムが、1976年に「悲しみのクラウン (Send in the Clowns)」でソング・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。ソンドハイムはこれ以外にも幾度もグラミーを受賞していますが、主要4部門での受賞は、今のところはこれのみです。

1984年には、ボーイ・ジョージ率いるカルチャー・クラブが、ベスト・ニュー・アーティストを受賞していますが、この時点でのボーイ・ジョージは、まだカミング・アウトはしていません。

ちなみに、この年のベスト・ニュー・アーティスト部門には、男装の麗人として人気を博していたアニー・レノックスのユーリズミックスもノミネートされています。当時はボーイ・ジョージやアニー・レノックスのようなジェンダー・ベンダーのアーティストが、イギリスだけではなくアメリカの音楽市場でも大いにもてはやされていた時期でした。

1989年には、インディゴ・ガールズがベスト・ニュー・アーティストにノミネートされています。しかし、残念ながら、ドイツ出身の男性デュオ、ミリ・ヴァニリに受賞を阻まれました(ミリ・ヴァニリはその後、レコードで実際に歌っていたのは別のミュージシャンであったことがプロデューサーによって暴露され、賞を剥奪されました)。インディゴ・ガールズは、性的指向を特に隠していたわけではありませんが、彼女たちがレズビアンであることを公にしたのは、やはり後年になってからのことです。

そして、ソロのオープンリー・ゲイのアーティストがベスト・ニュー・アーティストにノミネートされたのは、今回のフランク・オーシャンが初となります。受賞となると、今のところはまだ例がありません。

インディゴ・ガールズがベスト・ニュー・アーティストにノミネートされたのと同じ1989年には、ジョージ・マイケルの大ヒット・アルバム『FAITH』が、アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。しかし、ジョージ・マイケルもやはり、この時点では性的指向をカミング・アウトしてはいません。

そして、この NewNowNext のコラムの執筆者であるマーク・ブランケンシップさんのご存知の限りでは、レコード・オブ・ザ・イヤーを受賞したゲイのアーティストは、今のところはいないとのことです。



今回のグラミーでは FUN.やカニエ・ウエストらと並んで最多ノミネートのフランク・オーシャン。批評家筋から絶賛されている彼のことですから、さすがに無冠では終わらないだろうと思いますが、仮に主要3部門のいずれかを手中にできた場合には、それがどの部門であれ、ゲイ・カルチャー史上に残る快挙となることに間違いはありません。

フランク・オーシャンのグラミー受賞、私は大いに期待しています!



"Thinkin Bout You"
(2012)




Frank Ocean Official Site
http://frankocean.com/

Frank Ocean | フランク・オーシャン - UNIVERSAL MUSIC JAPAN
http://www.universal-music.co.jp/frank-ocean



2013.02.08 Top↑
1月29日、アメリカの複数のゲイ向けニュース・サイトが、ドラァグ・クイーンのシャロン・ニードルズ (Sharon Needles)の初めてのミュージック・ヴィデオ「This Club Is A Haunted House」の紹介記事を、一斉に掲載しました。

WATCH: Sharon Needles's 'This Club Is A Haunted House' (Out Magazine, 2013.01.29)

Sharon Needles ‘This Club Is A Haunted House’ Music Video (NewNowNext, 2013.01.29)

シャロン・ニードルズは、MTV系列のアメリカのLGBT向けテレビ局 Logo のリアリティ番組『RuPaul's Drag Race』に出演して一躍有名となった、異色のドラァグ・クイーンです。

どう異色なのかというと。

彼女は、“US版ホラー女装”とでも形容したくなるような、ゴス系のメイクとボンテージ・ファッションが特徴のドラァグ・クイーンだからなんです。

シャロン・ニードルズ


『RuPaul's Drag Race』は現在第5シーズンがスタートしたばかりですが、シャロン・ニードルズは昨年放送された第4シーズンの優勝者です。2004年からドラァグ・クイーンとして活動していた彼女は、この『RuPaul's Drag Race』への出演によって、全米級の人気タレントとなりました。

マリリン・マンソンを彷彿とさせる、ダークで耽美な彼女の個性は、玄人衆からの支持も多く集めているようで、あのレディー・ガガも Twitter でシャロンを絶賛しました。

レディー・ガガのツイート


そんな彼女が、今度は歌手として、デビュー・アルバム『PG-13』をリリースしました。アメリカのゲイ・メディアが一斉に彼女のミュージック・ヴィデオの紹介記事をサイトに掲載した1月29日は、そのリリース日でした。

コックリさんや悪魔崇拝など、ホラー・ストーリーの古典的モチーフがふんだんにちりばめられている、この『PG-13』の売れ行きは、なかなか好調のようで、アメリカの iTunes Store のポップ・アルバム・チャートでは、このエントリを書いている時点で4位を記録しています。

iTunes Store Pop Chart のスクリーン・ショット


参加しているゲスト陣も、豪華な顔触れがそろっています。オープニングの「This Club Is A Haunted House」では、ル・ポールが「Supermodel (You Better Work)」の冒頭のナレーションのパロディを自ら演じているほか、ニューヨークのクラブ・シーンを代表する MtF (Male to Female)のドラァグ・クイーンのアマンダ・ルポール、さらにはシザー・シスターズのアナ・マトロニックや、MtF のパンク・ロッカーの先駆として伝説的な存在となっているジェイン・カウンティなどが、このアルバムでシャロンと共演しています。

全体的な音はクラブ・ミュージックが主体となっていますが、ジェイン・カウンティとの共演曲などはゴリゴリのパンク・ロックとなっていて、ゲイ・カルチャーの主流を形成している要素と、その主流に対するカウンター・カルチャーとしてのクイアーコア的な要素が、シャロン・ニードルズという存在とそのアルバム『PG-13』という一つの器に、鮮やかに収まってしまっている点が、非常に面白いと私は思います。お薦めの一枚です。

シャロン・ニードルズ『PG-13』ジャケット


それでは、「This Club Is A Haunted House」のミュージック・ヴィデオをご覧ください。タイトルからして既にホラーですが、終盤ではシャロンが血塗れになりながら歌っています。血が苦手なかたは、閲覧を注意してくださいね。でも、楽曲はとってもキャッチー。



"This Club Is A Haunted House"
(2013)


iTunes - ミュージック - Sharon Needles「PG-13」



Sharon Needles Official Website
http://sharonneedles.com/



2013.02.02 Top↑
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