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オーストリアから新たなヒゲのドラァグ・シンガーが、ユーロヴィジョンに降臨。

 このブログでは、2007年から2008年にかけての一時期、ユーロヴィジョン・ソング・コンテストについて集中的に書いた時期がありました。

※当ブログのユーロヴィジョンについてのカテゴリはこちらです。

 今回のエントリでは、そのユーロヴィジョン・ソング・コンテストに関する話題について、久々に書いていきます。

 来年(2014年)にデンマークのコペンハーゲンにて開催されるユーロヴィジョン・ソング・コンテストの、オーストリア代表に選ばれているのが、漆黒のラウンド髭をたくわえたドラァグ・クイーンの、コンチータ・ヴルスト (Conchita Wurst)です。

 ユーロヴィジョンにドラァグ・クイーンのシンガーが登場するのは、これが初めてではありません。髭を生やしたドラァグ・クイーンのシンガーも、既にブルガリアのアジスや、スペインのラ・シェールといった例を、このブログで紹介しています。

※当ブログのアジスについてのカテゴリはこちら

※スペインの髭付きドラァグ・シンガーのラ・シェールを紹介した当ブログのエントリはこちら

 そんなわけで、私にとっては、ユーロヴィジョンに出演する髭付きドラァグ・クイーン・シンガーというのは、これといって珍しくも目新しくもなく、むしろ見慣れていてもおかしくないくらいのはずなんですが、それにもかかわらず、コンチータ・ヴルストのアーティスト写真を初めて見たときには、かなりのインパクトを受けました。

コンチータ・ヴルスト1

コンチータ・ヴルスト2


 このコンチータ・ヴルストのヴィジュアルは、かつては日本にも存在していたゲイ・インディーズ・シーンの黎明期に大活躍をなさっていた Fiction Mitz さんの、髭を生やした時の顔にそっくりだったので、個人的にはかなりウケました。

Fiction Mitz バイオグラフィー(Queer Music Experience.)

2001年8月25日の
東京レズビアン&ゲイパレード2001前日祭 GLORY
(東京・代々木公園イベント広場)に
出演した時の Fiction Mitz
Fiction Mitz


 まあ、それはそうとして。

 このコンチータ・ヴルストに限らず、髭付きのドラァグ・シンガーというのは、その強烈なヴィジュアルゆえに、どうしても色モノのように思われがちなんですが、ブルガリアのアジスがそうであったように、コンチータ・ヴルストもまた、ユーロヴィジョンのオーストリア代表に選出されたがために、ホモフォビアの人々から政治的な圧力を加えられているそうなんです。

 そうした事態に至るまでのコンチータ・ヴルストのキャリアの変遷については、親サイトの Queer Music Experience.に、新しくコンチータ・ヴルストのバイオグラフィーをまとめたので、ぜひそちらもお読みになってみてください。

コンチータ・ヴルスト バイオグラフィー(Queer Music Experience.)

 さて、上にリンクしたバイオグラフィーにも記していますが、先月(2013年10月)に ORF(オーストリア放送協会)が、ユーロヴィジョンの2014年度のオーストリア代表にコンチータ・ヴルストを選出したという、その決定に反発する声が、国内外から挙がっているそうなのです。

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イレイジャー/スノー・グローブ

イレイジャー (Erasure)初のクリスマス・アルバム『スノー・グローブ (Snow Globe)』が、2013年11月6日、日本で先行発売されます。

クリスマス・ソングのスタンダード・ナンバー8曲のカバーと、新曲5曲からなる作品です。

Snow Globe [帯解説・歌詞対訳付 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (TRCP147)Snow Globe [帯解説・歌詞対訳付 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (TRCP147)
(2013/11/06)
Erasure、イレイジャー 他

商品詳細を見る


運よく私は、このアルバムを正式リリース前に聴く機会に恵まれました。そういったわけで、今回のエントリでは『スノー・グローブ』を聴いての所感をつづりたいと思います。

イレイジャー バイオグラフィー (Queer Music Experience.)

クリスマス・アルバムというのは、基本的には企画アルバムだと思います。つまりはイレギュラーな作品であって、通常のオリジナル・アルバムとは同一線上で評すべき作品ではない場合も多いのですが、このイレイジャーの『スノー・グローブ』にかぎっては、そうではないと思います。

ある意味では通常のオリジナル・アルバム以上に、アンディ・ベルの現在のたたずまいが、ダイレクトに反映されたアルバムになっているように、私は感じます。

アンディ・ベルのような、デビュー時からカミング・アウトしていたゲイのアーティストのパブリック・イメージは、その先駆者であったトム・ロビンソンやジミー・ソマーヴィルのそれと、イコールになっていた傾向が、アンディ・ベルがデビューするまでは、強かったように思います。

それら先駆者の表現というのは、キャムプな側面もあるにはありましたが、マイノリティであるがゆえの悲哀や、政治的・闘争的な姿勢のほうが、より強く前に出ていました。

ゆえにオープンリー・ゲイのアーティストには、総じて悲壮感の漂うイメージが形成されていたように思うのです。

(あ、別にトム・ロビンソンやジミー・ソマーヴィルのことを批判しているわけではないですよ。私は彼らの表現も大好きだし、彼らのファンです)

トム・ロビンソン バイオグラフィー (Queer Music Experience.)

ジミー・ソマーヴィル バイオグラフィー (Queer Music Experience.)

しかし、アンディ・ベルの個性は、それらの先駆者たちとは、また異なるものでした。

アンディは、ゲイであることを哀しんだり、あるいはゲイを疎外する社会に怒りをぶつけたりするよりも、代表曲「ア・リトル・リスペクト (A Little Respect)」にもあるように、人々の融和を望んでいました。

だから、彼の表現は明るかった。

もちろん、少数者の痛みを、彼が知らなかったはずはありません。むしろ、その痛みをよく知っているからこそ、なおのこと彼は、他者に対して優しくあろうとしたのではないでしょうか。

その優しさに裏打ちされた、生来の楽天的な明るさ、前向きさこそが、アンディ・ベルというオープンリー・ゲイ・アーティストの新しさであったと思うのです。

しかし、21世紀に入ってから、そうしたアンディの楽天的な明るさには、変化が生じたように感じます。

といっても、アンディの表現に悲壮感が漂うようになったということではありません。

アンディの目線は、依然として光の射す方に向いています。しかし、そこには、荘重さとか峻厳さのようなものが備わったと私は感じるのです。

その変化の背景に、アンディとそのパートナーの HIV 陽性が1998年に判明したことが、どこまで影響しているのか、それは私にはわかりません。が、少なくとも無関係ではないように思います。

そして、現在のアンディの歌声に備わっている荘重さとか峻厳さが、クリスマスという宗教的な題材と結びつくことによって、通常のオリジナル・アルバム以上に際立っているのが、今作『スノー・グローブ』ではないでしょうか。

昨年(2012年)には、アンディのマネージャーでありパートナーでもあり、ともに闘病を続けてきたポール・ヒッキーが、62歳で亡くなっています。

そのポール・ヒッキーとの思い出に、この『スノー・グローブ』は捧げられていますが、そうした辛く哀しい体験を経てもなお、アンディは人々の安穏を願い、希望を歌いつづけています。

特にアルバムのオープニングを飾る新曲「Bells Of Love (Isabelle's of Love)」はまさにそうしたナンバーで、そんなアンディの歌声に、私は宗教者のような気高さすら感じるのです。

ぜひ、ひとりでも多くのかたたちに聴いていただきたい、感動的な作品です。

アルバムからのファースト・シングル「ガウデート (Gaudete)」は、ラテン語によって歌われている、キリスト生誕を祝う聖歌です。

"Gaudete"
ガウデート
(2013)