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カルチャー・クラブがボーイ・ジョージ抜きで再結成するというニュースを、私はABC振興会さんの記事で知りました。

この記事の中で、D姐さんはボーイ・ジョージのことを「カルチャー・クラブそのもの」と書いていらっしゃるのですが、私も同じように思っていました。

だから、私はQueer Music Experience.の中では、ボーイ・ジョージとカルチャー・クラブの音楽を別物とは見做さず、同一線上のものとして論じてきました。

そんな私にしてみれば、カルチャー・クラブがボーイ・ジョージ抜きで再結成しても、それはもはやカルチャー・クラブではあり得ない、というのが、このニュースに接したときに抱いた、最初の感想でした。

しかし、それ以上に私は、このニュースに、何か不穏な空気を感じます。







まず気になったのが、この再結成の発表が、ボーイ・ジョージにまたもや逮捕状が出たというニュースの直後に行なわれた、ということでした。

そして、こちらの記事によれば、新生カルチャー・クラブのお目見えは、ボーイ・ジョージの執行猶予期限である、6月26日にぶつけられているのです。

ということは。

この再結成は、トラブル続きのボーイ・ジョージが、マネージャーのトニー・ゴードンによって、カルチャー・クラブから追い出された、ということではないのか? という気がするのです。



カルチャー・クラブの新ヴォーカリストの公募広告が出されたのは、6月19日です。その翌日には、トニー・ゴードンが、コメントを発表しています。

そのコメントは、カルチャー・クラブの海外のファン・サイトの1つ、『Cyber Chameleon』に掲載されています。

以下に、トニー・ゴードンのコメントの翻訳を掲載します。

私たちは皆、とても興奮しているところです。カルチャー・クラブが、ボーイ・ジョージ抜きで再結成することになった理由については、彼らはジョージを愛していて、彼と共に再結成をしたかったのだけれども、現在のジョージは、違った種類の音楽と方向に進んでいて、カルチャー・クラブとパフォーマンスすることには、もはや関心を持っていない、ということなのです。

彼らは、ここ数年のあいだ、彼らのライヴをもう一度聴きたいという沢山のリクエストを受け取ってきました。彼らには、熱狂的なファンがたくさんいます。そうしたファンの多くと相談した結果、人々が聴きたいのはボーイ・ジョージではないのだ、という結論が出ました――彼らは、バンドの他のメンバーと同じように、曲を愛しているのです。

私たちは、魅惑的で刺激的なフロントを構成するために、4人のメイン・シンガーを立てる予定です。現段階では、カルチャー・クラブは忠実なファンのために、そして、新しいファンのために、ワールド・ツアーを敢行する考えです。

新しく改革されたカルチャー・クラブは、とても刺激的で、素晴らしい音楽を演奏してくれるでしょう。彼らは、彼ら自身の正当性において、驚くべき歌手を――ボーイ・ジョージのそっくりさんではない歌手を――探しているのです。

我々の知っている、我々の好きなカルチャー・クラブの現代版、2006年バージョンとなるでしょう。


このコメント中にある、「人々が訊きたいのはボーイ・ジョージではなく、カルチャー・クラブの音楽なのだ」という結論を出した「熱心なファン」というのは、いったいどういった人たちなんでしょうか?

そのような結論を出した「熱心なファン」の存在が、本当にあったと仮定して。

私がこのコメントを読んで先ず思ったのは、「まるでサッカーのフーリガンのようだ」ということでした。

たとえば、熱心なサッカー・ファンは、応援しているチームの選手が試合中に決定的なミスを犯したりすると、選手に物凄い罵倒を飛ばしますよね? 場合によっては、暴力を振るったりもしますよね?

そういう「熱心なファン」の姿は、サッカーに関心のない私の目には、「愛しさ余って憎さ百倍とは、まさにこのことだな」と映ります。

つまり、あまりにも熱心になり過ぎた結果、自分が応援しているのはいったい誰なのかがわからなくなっているのではないか? という気がするのです。

一種の視野狭窄です。

応援しているチームの選手に暴挙を振るおうとするサッカー・ファンを見ていると、

「あなたはいったい、誰を応援しているの? どのチームを応援しているの? あなたが罵倒したり、暴力を振るっているのは、そもそもあなたが応援していた人たちではないの?」

という思いに駆られます。

そして。

「人々が訊きたいのはボーイ・ジョージではなく、カルチャー・クラブの音楽なのだ」という結論を出した「熱心なファン」の心理というのも、これと同じものではないだろうか、という気がするのです。

カルチャー・クラブを熱心に応援するあまり、そうしたファンの人たちは、あまりにもトラブル続きのボーイ・ジョージを、許せなくなってしまったのではないでしょうか。



たぶん、ボーイ・ジョージ抜きの再結成の話は、以前から水面下で進んでいたのだと思います。それがこのタイミングで発表されたのは、裁判所から命じられた地域奉仕活動を履行せず、裁判を引き伸ばした挙句に、またもや逮捕状を出されてしまったボーイ・ジョージへの、事実上の強制解雇ではないか? という気がしてなりません。

メタドン中毒を克服し、清浄な身となっていたはずのボーイ・ジョージ。

ゲイ・コミュニティの代弁者として、エルトン・ジョンやジョージ・マイケル、マドンナといったセレブへの批判を繰り拡げていたボーイ・ジョージ。

そのような彼だったからこそ、

昨年の10月、彼がコカイン所持で逮捕されたとき、多くのファンが「彼への信頼を裏切られた」という思いを抱いたはずです。

そして、ジョージを熱心に応援していた人ほど、ジョージへの失望もまた、大きかったはずなのです。

その失望感が、まるで応援していたチームの選手を罵倒するフーリガンのように、「愛」から「憎しみ」へと、180度転じてしまった。

――私の目には、そのように映ります。



もちろん、全ては憶測でしかありませんが。



ただ、ですね。



その種の「憎しみ」というのは、裏を返せば、
自分の愛している人が、自分の思い通りに動いてくれないことへの怒り」、
なんですよね。



つまり、エゴです。



「自分が『こうあってほしい』と思うボーイ・ジョージ像」を、ボーイ・ジョージが演じてくれない。

だから、憎い。

それが、「熱心なファン」の本音だと思うのです。



つまり、今回の再結成は、「熱心なファン」のエゴイズムに基づいた、ボーイ・ジョージのカルチャー・クラブからの排斥、と私の目には見えてしまうのです。







現在のボーイ・ジョージが、カルチャー・クラブとして活動していくことに関心がないというのは、ある程度は本当のことだと思います。もしもジョージの側に再結成の意志があるのなら、もっと早い時期に実現していたはずだからです。

ジョージにその意志がない以上、ジョージ抜きでの再結成があったとしても、それはやむを得ないことだとは思います。

しかし、先に引用したトニー・ゴードンのコメントを読むと、建設的な意志に基づく再結成とは言い難いという印象が、どうにも拭い去れません。

今回の再結成は、すべてがボーイ・ジョージを否定する方向に働いている気がするからです。

ボーイ・ジョージとは異なった個性のヴォーカリストを求めているだけではなく、メインのヴォーカルを4人も立てて、バンドの形態そのものを変えようとしているのも、私の目には、ジョージの痕跡を可能な限りバンドから消し去ろうとする努力のように見えます。

しかし、そのように努力すればするほど、かえってボーイ・ジョージの存在を彼らが強く意識していることが、逆説的に浮かび上がってきてしまうのです。

さらに、バンドの音楽面での要だった、ギター/キーボード担当のロイ・ヘイの参加がないことも、非常に気になります。

カルチャー・クラブのヴィデオ・クリップ集『Greatest Hits』には、1998年の1度目の再結成時の彼らのインタヴュー映像も収録されています。その中で、当時の再結成について、ドラマーのジョンが「これは仕事だ」と非常にドライな発言をしているのに対して、ロイは真向から反発し、「楽しくなくなったらやめる」と語っていました。

今回の再結成にロイの姿がない理由は、現時点では正確にはわからないのですが、以前にはそのように語っていたロイなので、そんなロイの姿がない今回の再結成は、はたしてメンバーにとって真に楽しいと思えるものなのかどうか。

私には、疑わしく思えます。





ひたすら懐疑的なことばかりを書き連ねてきましたが。

それでも私は、新生カルチャー・クラブを無視することはしません。

たとえボーイ・ジョージ抜きの再結成であっても、カルチャー・クラブの音楽は、あくまで「ジョージとジョンの愛憎関係を歌ったもの」であり、したがって、イコール、ボーイ・ジョージの音楽でもあるわけです。

ジョージの音楽が、カルチャー・クラブの名の下に、ジョージ以外のヴォーカリストによって、どのように歌い継がれていくのか。

私は、それを見届けていきたいと思います。



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2006.06.22 Top↑
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