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選択的バイセクシュアル・アーティストの系譜についてのこれまでの内容は、以下のとおりです。

1)選択的バイセクシュアル・アーティストの系譜・序章

2)選択的バイセクシュアル・アーティストの系譜・その1

3)選択的バイセクシュアル・アーティストの系譜・その2

4)選択的バイセクシュアル・アーティストの系譜・幕間



さてさて。

今回は、「選択的バイセクシュアルの女性アーティスト」について書いてみます。



「基本はノンケ、でもバイ体験にも興味がある」という人の割合は、たぶん男性よりも女性のほうが高いと思います。

なんでかっていうと。

ノンケ男子が想定する「バイ体験」と、ノンケ女子が想定している「バイ体験」とでは、指している内容の幅に、大きな差があるからです。

「バイ体験」にも興味があるというノンケ男子にとっての「バイ体験」とは、要するに「同性とのセックス」のことです。

対して、「バイ体験」にも興味があるノンケ女子の考えている「バイ体験」というのは、必ずしもセックスとは直結していない。

肉体的な接触の介在しない、ごくごくプラトニックな、「同性とのほのかな恋愛」を、「バイ体験」として想定している人もいる。セックスを含めた「本格的な恋愛」(っつーのもヘンな言い方ですが)を想定している人もいるだろうし、セックスは嫌なんだけどキスぐらいならしてみたいわーっていう、「ほどほどの恋愛」もある。

想定している「バイ体験」の内容が、男子と女子とでは、振幅にものっそい差があるんですよ。

想定している「バイ体験」の内容に、男女間で大きな振幅がある以上、「そんな貴女にジャストフィットする選択的バイセクシュアルのロール・モデルは、この人!」みたいな女性アーティストは、あんまりいないかも。




ただ、「基本ノンケ、でもバイ体験にも興味アリ」という定義のみを拠りどころにするのであれば。

「選択的バイセクシュアルの女性アーティスト」の筆頭に挙げられるのは、言うまでもなく、もちろんマドンナです。

マドンナの同性愛表現は、常にセックスに直結しているので、プラトニックな恋愛こそがお好みというタイプの選択的バイの女性には、マドンナの表現は、「なにもそこまで」という感じの、いささかトゥー・マッチなものに思えます。必ずしもフィットしていません。

ていうか、濃ゆいんですよね。マドンナの同性愛表現は。

加えて、マドンナというアーティストは、非常にフェミニスト的です。彼女自身は、自分がフェミニストであることを否定する主旨の発言を随所で幾度となく繰り返していますが、彼女の自己評価が何であれ、既に彼女の存在自体が、フェミニズムの傾向を帯びています。そのことは彼女もインタヴューで認めています。

フェミニズムの発想とは無縁のところでバイ体験に興味を抱いているノンケ女子からしてみると、したがってマドンナの表現は、いささか政治的・闘争的に過ぎるきらいがあるんですよね。

自分みたいな人間からしてみると、「いけいけー、もっとやれー」みたいな感じなんですけど。

"Justify My Love"
ジャスティファイ・マイ・ラヴ
(1990)




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こうした表現が世間に議論を巻き起こすことを、彼女は当然、わかった上でやっています。その点、彼女は明らかに確信犯なんですが、一方で彼女は、「こんなの別に大したことじゃないでしょ? 何を大騒ぎしてるの?」と言わんばかりのクールな佇まいを示しています。

そこが肝腎な点です。

もしも当時の彼女が、全くの無名であったり、あるいは既に零落したスターであったなら、この種の表現は、単なる「話題づくり」としか思われなかったはずです。

しかし、当時のマドンナは、飛ぶ鳥を落とすだけでは飽き足らず、それを頭からワリワリと喰らい尽くしてしまうような勢いを誇る、無類のスーパースターでした。つまり、ことさら「話題づくり」を必要とはしていなかったはずなんです。そんな彼女が、どうしてこんなにもリスキーな表現を選んだのでしょうか?

マドンナを衆目渇望症と決めつけるのは簡単です。が、それにしてみたところで、ここまでリスキーな表現に身を投じることの説明としては不足です。

つまり、そこには単なる「話題づくり」以上の、プラスアルファの意味性が添えられている、っつーことです。

でなければ、マドンナはとっくの昔に、表面的な話題性だけで支持を鞍替えするソフト・ユーザー層によって、使い捨てにされていたはずなんですよ。

この場合のプラスアルファの意味性とは、「既存のモラルへの挑戦」です。

そうした闘争的な姿勢が先ず最初にあるからこそ、「Justify My Love」のヴィデオ・クリップのマドンナには、「このぐらいのことで大騒ぎするなんて、アンタたちも大概、人間がちっさいよねー、ハン(←鼻で笑った音)」という、冷笑に近い目線がうかがわれます。

しかしながら。

選択的バイセクシュアルの女子の目からすると。

いくらマドンナが「こんなの全然大したことじゃない」ということを示したところで、ここまでディープにねっとりとやられた日にゃ、かえってドン引きなわけですよ。

そんなマドンナの同性愛表現のうち、比較的ライトな部類に属するのが、ブリトニー・スピアーズとクリスティーナ・アギレラ、そしてミッシー・エリオットと共演した、2003年度のMTVアワードでの、「Like A Virgin/Hollywood Medley」のパフォーマンス。

式典という場でのパフォーマンスゆえに、「こんなの大したことじゃないでしょ?」というマドンナの挑戦的な同性愛表現は、「ちょっとバイにも興味あるかも」という選択的バイセクシュアルの女性たちにとっては、ちょうど良い塩梅に抑えられています。

しかし、この映像の本当に面白いところというのは、マドンナたちのキス・シーンというよりは、むしろそれを眺めるセレブたちのリアクションのほうにあるでしょうね。

たとえば。

呆けたように白け切っているエミネムとか。

苦虫かみ潰しまくりのジャスティン・ティンバーレイクとか。

カメラを意識して殊更に失笑してみせるスヌープ・ドッグとか。

ところがどっこい、マドンナの側では、セレブ連中のそうした反応を予想できていないはずがないんだから、MTVのカメラ・クルーがそれらの反応を見逃すはずがないことも、当然計算のうちに入っていたはず。

つまり、マドンナがこのパフォーマンスを通じてブラウン管の向こう側に訴えたかったことというのは、実は同性愛表現そのものにあるのではなく、アメリカのポップス界のスターたちが、こうした同性愛表現にどのように反応するのかを見せる、ってところにあるでしょうね。

そもそも、ここでパフォーマンスされている楽曲自体が、アメリカのショー・ビジネス界を批判した「Hollywood」なんだしね。

「さあさあ、テレビの前のアンタたち! ハリウッドのセレブたちが、同性愛にどんな反応を示すのか、両の眼を見開いて、しっかりそれを観ておきな!」

――たぶん、そういうことだと思います。

だとすれば。

セレブのオーラを感じさせないくらい白け切っていたエミネムも、渋い顔のジャスティン・ティンバーレイクも、失笑していたスヌープ・ドッグも、みーんな、マドンナの手の上で踊らされていた、っつーことになります。(まあ、ジャスティン・ティンバーレイクの場合は、当時は別れて間もなかった元カノのブリトニーの、ああしたパフォーマンスを観るに耐えなかった、って感じなんでしょうけど。)

マドンナの表現って、性についての一種の踏絵みたいなものなんですよ。

マドンナの性的表現にどういうリアクションをとるのかによって、その人の性に対する問題意識の有り様が、否も応もなく浮かび上がってしまうんですよね。

マドンナとブリトニー、そしてアギレラの生キスに、生理的な拒絶反応を示すわけでもなく、かといって必要以上にはしゃいでみせることもなく、いたって無邪気に、ごくごくフツーにパフォーマンスを楽しんでいたのが、バカセレブの代名詞のように言われているパリス・ヒルトンだったっつーのは、案外象徴的かもしれません。

既存のモラルに縛られているよりは、パリス・ヒルトンのような人のほうが、かえって選択的バイセクシュアルをフラットに受け入れることができるのかもしれません。

だからといって、パリス・ヒルトンがロール・モデルだとは、全く思ってはいませんが。

"Like A Virgin/Hollywood Medley"
(featuring Christina Aguilera,
Britney Spears & Missy Elliott)

ライク・ア・ヴァージン~ハリウッド・メドレー
(from MTV VMA Performance, 2003)




イントゥ・ザ・ハリウッド・グルーヴ~リミックスド・アンド・リヴィジテット イントゥ・ザ・ハリウッド・グルーヴ~リミックスド・アンド・リヴィジテット
マドンナ、クリスティーナ・アギレラ 他 (2004/01/21)
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2007.05.13 Top↑
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