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今回は、スペインのLGBTアーティストのお話です。

スペイン出身のオープンリー・ゲイの著名人として先ず第一に名前が挙がるのは、映画監督のペドロ・アルモドバルだと思います。

しかし、アルモドバル監督は、その作風とは裏腹に、プライベートについては多くを口にしません。

というのも、アルモドバル監督が育ったのは、フランコ総統による独裁政権下、つまり、同性愛者が弾圧されていた時代のスペインだったからです。

だからこそアルモドバル監督は、カミングアウトではなくフィクションを語るという形で、ゲイとしての自分を解放していったのです。

ただし、これは勘違いしてはほしくないのですが、アルモドバル監督が自身の性的指向について多くを語らないからといって、彼のことを腰抜けだと批判したいわけでは全くないです。

アルモドバル監督は、むしろ大いに反骨精神に溢れた人です。

でなかったら、あそこまでゲイゲイしい作品を、いくつも世に送り出したりはしないはずです。

2005年6月30日、スペインでは同性婚の合法化が下院で可決されました。それを受けて、アルモドバル監督は記者会見で、以下のような声明を出したそうです。

「今日は歴史的な日です。しかし、これはただ単に、政治がようやく社会に追いついたというだけのことなのです。」

「私の映画が社会を変えたのではありません。社会が進歩していくのをサポートしていたに過ぎません。」

※参照した記事はこちら。
http://www.time.com/time/europe/hero2005/almodovar.html



さてさて。

いつものように枕が長くなってしまいましたが。

1975年のフランコ総統没後、急速に民主化が進み、2005年には世界で3番目に同性婚が合法化された国となったスペインですが。

オープンリーのLGBTアーティストの数は、まだそれほど多くはないようです。

つーか、私が知らないだけかも知れませんが。

(11月4日追記:どーやら私が知らないだけでした。詳しくはこの次のエントリを読んでください。)

ようやく私が知ることのできたスペインのLGBTアーティストが、これから紹介するエンリケ・デル・ポソ(Enrique del Pozo)です。

まずはヴィデオ・クリップからどーぞ。

曲名は、「Every Little Bit」です。

ちなみに、ですね。

もしも職場からこのブログを見ているというかたがいらっしゃったら、このヴィデオ・クリップを再生するのは、帰宅してからのほうがいいかも。

この作品は、ミュージック・ヴィデオとしては、性的に最も過激な部類に属します。

局部とか臀部の露出こそありませんが、その代わり、ナニの形がハッキリとわかる下着の膨らみだとか、乳首舐め、指舐めなどのシーンが出てきます。地上波ではゼッタイに放送できません。

"Every Little Bit"
(2006)




エンリケ・デル・ポソは、オープンリー・バイセクシャルのスペインの歌手です。

そのプロフィールを、以下に紹介していこうと思うんですが。

これから記す内容は、ひょっとしたら不正確な内容を含んでいるかもしれないということを、先ず最初にお断りしておきます。

というのもですね、エンリケ・デル・ポソについて書かれたネット上のテクストって、大半がスペイン語なんですよ。英語で詳しく書かれたテクストが全然見当たらない。いわんや日本語をや。

なので、エンリケ・デル・ポソについて知ろうと思ったら、グーグルの言語ツールを使ってスペイン語のテクストを英語に翻訳したものを読むしかないんです。しかしながら、オリジナルのテクストがどこまで正確に英語に直されているかということも、もちろん私にはわからないので、ひょっとしたら事実誤認を含んでいるかもしれない、ということを踏まえた上で、以下の内容を読んでくださいねー。



アーティストのプロフィールを手っ取り早く知るには、やっぱウィキペディアだろ、っつーことで、まずはスペイン語版 Wikipedia を読んでみました。

それによると、エンリケ・デル・ポソは、1957年マドリッド生まれ。

つまり、今年で50歳。

ということは、ひょっとしたらキャリアの長い人なのかなーと思ってたら実際その通りで、十代のころから舞台俳優としてキャリアを積んでいたみたいです。ケン・ラッセルの1974年の映画『マーラー』にもチョイ役で出演していたそうで。

そんなエンリケ・デル・ポソがポップ・シンガーに転じたのは1977年。

エンリケ・イ・アナ(Enrique y Ana)という男女デュオの片割れとして、彼はポップス界にデビューしました。

男女デュオではあるんですが、しかしそれは「あえて定義するならそうなる」ということであって、エンリケ・イ・アナは、世間の人々の大半が男女デュオと聞いて思い浮かべるイメージからは、いささか外れたところにいるグループだと思います。

まあ、その理由は、このヴィデオ・クリップを観てもらえればおわかりいただけると思います。

エンリケ・イ・アナの代表曲「Amigo Felix」です。

"Amigo Felix"
(1981)


というわけで。

エンリケ・イ・アナの片割れであるアナは、当時でおそらくローティーンの、まだ幼さの残る女の子。

そして、曲調からも想像が尽くかと思われますが、エンリケ・イ・アナは、ローティーン以下の児童層をターゲットにしたポップ・グループだったんです。

エンリケ・イ・アナは、本国スペインだけではなく、南米などの他のスペイン語圏でも、チビッ子たちのアイドルとして、大いに人気を博したそうです。1981年には、主演のミュージカル映画『Las aventuras de Enrique y Ana』も公開。いま観てもらったばかりの「Amigo Felix」の映像は、そこからのものです。

つまり、エンリケ・デル・ポソは、'70年代末から'80年代初頭にかけては、日本の芸能界で例えると田中星児に当たるような、いわば「歌のお兄さん」的なポジションの人として、スペイン語圏では知られていた人みたいなんですよ。



私がエンリケ・デル・ポソを知ったのは、「Every Little Bit」のヴィデオ・クリップが最初だったので、エンリケ・イ・アナ時代の映像をあとから観て驚きはしたものの、さほどの抵抗感はないんですよ。「ふえー、人に歴史アリとはまさにこのことだなー」みたいな感じで。

でも、逆にエンリケ・イ・アナの全盛時にチビッ子だった、当時のファンにしてみたら、たとえその人がゲイであったとしても、「Every Little Bit」のエンリケ・デル・ポソは、ちょっと受け入れ難いんじゃないか、という気がします。

バイセクシャルがどうこうとかいうんじゃなくて、往年の「歌のお兄さん」的なイメージとのギャップが、あまりにも激し過ぎて。

仮にですよ、もしも田中星児が、フリーセックスをテーマに、男性モデルの乳首を舐めちゃったりとかするようなヴィデオ・クリップを発表したら、全盛時の彼を知る日本人の大半はドン引いちゃうと思うんですよ。少なくとも私はドン引きます。

って、ものっそい極端な例え話ですが。

でも、それに近い拒絶反応が、スペインの人々のあいだにはあったんじゃないかという気がします。実際、「Every Little Bit」のセールスは、あまり芳しくはなかったようです。


ちなみに、エンリケ・イ・アナは、7枚のアルバムを遺して1983年に解散しています。その後、アナは芸能界から引退していますが、エンリケはソロ・アーティストとして活動を継続。しかし、かつてのような大きな成功は収められていないようです。その主たる要因は、やはりエンリケ・イ・アナ時代のイメージが、未だに人々のあいだからは払拭されていないってことなんでしょうねー。現在のエンリケはTVタレントとしての知名度が勝っているようで、歌手としてのエンリケ・デル・ポソは、スペインの人たちのあいだでは、どうやら「過去の人」っぽい位置づけのようです。

スペイン語版ウィキペディアには、エンリケの性的指向についての記載は全くありませんが、エンリケがバイセクシャルであることを公にしたのは、どうやら2006年3月、アンテナ3というスペインのテレビ局の番組『Where are you heart?』の中でのことのようです。このカミングアウトの数日後、エンリケはレポーターからの質問に答え、とある有名な男性スポーツ選手と交際していることを語りましたが、交際相手のプライバシーに配慮してか、名前までは明かさなかったそうです。

参照した記事はこちら。
http://www.todocorazon.net/noticia691.html(←もちろんスペイン語です)

その他にも、いくつかのスペイン語ブログを読んでみたんですが、それらを見る限りでは、エンリケにはかねてから同性愛の噂があったようで、彼のカミングアウトは決して青天の霹靂だったわけではなく、「ついにようやく認めた」という感じのものだったみたいです。

「Every Little Bit」のリリース時期については、実は正確なところがよくわからないのですが、この曲のヴィデオ・クリップが YouTube にアップロードされたのが2006年の4月なので、たぶんエンリケのカミングアウトを受けてリリースされたものなんだと思います。



エンリケ・デル・ポソは今年50歳で、ペドロ・アルモドバルとは比較的世代の近い人です。

つまり、アルモドバル監督と同じく、エンリケ・デル・ポソも、フランコ独裁政権下の時代に育った人です。

歌手としてのエンリケ・デル・ポソは、セールスの面から言えば、確かに「過去の人」なのかもしれません。

しかし、フランコ政権下における同性愛者への弾圧をリアルタイムで経験した世代に属するエンリケのようなアーティストが、「Every Little Bit」のような大胆な作品をリリースしているのは非常に意義深いことだと思うし、そのことが彼よりも若い世代のスペインのLGBTアーティストたちを鼓舞してくれればと、私はそう期待しています。



最後にもう1本、エンリケ・デル・ポソのヴィデオ・クリップを観てもらいたいと思います。

タイトルは「Eres Diferente」。今年(2007年)のユーロプライドの模様を活写したヴィデオ・クリップです。

"Eres Diferente"
(2007)




エンリケ・デル・ポソ公式サイト
http://www.enriquedelpozo.es/



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2007.10.28 Top↑
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