上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- Top↑
ここ日本でも FOX JAPAN を通じて放映されている、アメリカの国民的人気オーディション番組、『アメリカン・アイドル』。日本では現在、第8シーズンが放映中ですが、本国アメリカでは既に最終結果が出ています。

この第8シーズンで準優勝したのが、今回のエントリの主役、アダム・ランバート

現在はデビュー・アルバムの製作中だそうですが、アルバムのリリースを待たずして早くも『ローリング・ストーン』誌の表紙を飾ってしまうなど、異例の人気ぶりです。

『Rolling Stone』表紙


アダム・ランバートがここまで支持される理由、それは単に歌が上手いだけではなく、どんな人をもハッとさせずにはおかない、万人から愛される爽やかな笑顔の持ち主であることも大きいと思います。万人から愛されるということは、裏を返せば「当たり障りがない」ということでもあるのですが、アダム・ランバートの場合は、目元を妖しく縁取るアイライナーや、黒いマニキュアといった、グラム・ロック・スターのようなメイクとの併せ技によって、単なる優等生ではない、毒のある個性が演出されています。正統派の美形アイドルのファンからも、個性派のポップ・スターを好む人たちからも等しく支持される、それがアダム・ランバートのずば抜けたスター性の理由だと思います。

アメリカのショー・ビジネス界のゴシップ記事を日本語で紹介している ABC 振興会さんのほうでも、アダム・ランバートについての報道を詳しく追いかけているので、ぜひ参照してみてください。(ABC 振興会さんのおかげで、今回のエントリを書くにあたってのリサーチはかなり楽でした。ありがとうございます)

ABC 振興会さんに掲載されているアダム・ランバートの記事一覧




さて、このアダム・ランバートなんですが、既に『アメリカン・アイドル』の第8シーズン放映中から、ゲイではないかという噂がメディア上に流れ始めていました。彼が男性とフレンチ・キスを交している写真もインターネット上に流出しました。

『アメリカン・アイドル』のようなオーディション番組では、ファイナリスト(最終候補者)の性的指向について噂が流れ始めると、大きなマイナスとなるのがこれまでの通例でした。たとえば、イギリスで放映されていたオーディション番組『Pop Idol』の第1シーズン(2001年~2002年)のファイナリストであったコーベンは、第1シーズン放映中に、ゲイであることがアウティングされました。このコーベンが不幸だったのは、流出した写真がアダム・ランバートのようなフレンチ・キス程度だったならまだしも、よりにもよってヌード写真だったことです。イギリスのゲイ向けポータル・サイト RainbowNetwork.com に本名で掲載されたセミ・ヌード写真や、イギリスのゲイ・コンテスト Mr.Gay UK に出場した際のヌード・フォトが一般に流出し、その騒動の直後に行なわれた電話投票で、コーベンは10人のファイナリストの最初の落選者となってしまいました。

オーディション番組の中で行なわれる電話投票は、性的指向の是非を直接問うているわけではない以上、これらの騒動がコーベンの落選にどこまで影響していたのか、正確なことは言えません。しかしコーベン自身は、『Pop Idol』からの落選後に次のような見解を述べています。

「僕は自分からは性的指向を明かしていないんだ。みんなの知るところとなったのは、それが公にバラされたからなんだ。悲しいことだけれど、ホモフォビアの人はまだまだいる。それこそが要因だ。もし僕がゲイだということが明かされてなければ、僕はまだ勝ち残っていたと思う」

コーベン バイオグラフィー(Queer Music Experience.)


しかし、皮肉なことに、この『Pop Idol』第1シーズンで優勝したウィル・ヤングは、デビュー・シングルの発売から1週間後に、タブロイド紙を通じて、ゲイであることをカミングアウトしましたが、その後もウィルは、イギリスの国民的人気アイドルとして次々と全英 No.1ヒットを生み出しています。コーベンとウィル・ヤングとでこうも明暗が分かれたのは、ウィルのカミングアウトが旬を過ぎてからのものではなく、全イギリス国民が彼に熱い眼差しを注いでいる只中で行なわれたという、その勇気が賞賛されてのものではないかと思います。

ウィル・ヤング バイオグラフィー(Queer Music Experience.)




一方、アダム・ランバートは、その性的指向がメディアの詮索の対象となっていたにもかかわらず、その抜群の歌唱力と抜きん出たスター性によって、優勝候補の本命として第8シーズンを牽引。最後の最後で優勝は逃したものの、それは多くの視聴者にとって意外な結末でした。ひょっとしたら不正な投票が行なわれたのではないかという疑惑も囁かれ始め、第8シーズン終了後もアメリカのマス・メディアではさまざまな憶測が飛び交うこととなりました。

ABC 振興会さんの記事によると、番組のスポンサーである AT&T 社の携帯電話からはテキスト・メッセージでの投票も可能になっているんだそうですが、この AT&T 社が、アダム・ランバートと優勝を争ったクリス・アレンの地元アーカンソー州で、無料でテキスト・メッセージが送れるサーヴィスを行なっていたり、1回の送信で10回分のテキスト・メッセージの送信ができる「パワーテキスト」の方法を教えていたという疑惑が持ち上がりました。この疑惑は、アメリカのゲイ・メディアでも大きく報じられています。

先にも書いたとおり、オーディション番組の電話投票は、性的指向の是非を直接問うものではない以上、この最終結果が、アメリカ社会のホモフォビアを示すものであるかどうかは、断言できません。しかし、たとえ優勝できなくとも、『アメリカン・アイドル』のようなフォーマットのオーディション番組では、ファイナリストに選ばれた時点で既に成功への大きなチャンスが与えられているともいえます。たとえば、映画『ドリームガールズ』で大ブレイクしたジェニファー・ハドソンは、第3シーズンのファイナリストですが、最終結果は7位。にもかかわらず、彼女は『アメリカン・アイドル』の歴代優勝者を超える大きな成功を手にしています。

最終的には準優勝に終わったアダム・ランバートですが、彼もまたクレイ・エイケンやジェニファー・ハドソン、エリオット・ヤミンのように、優勝せずとも大スターとなった歴代のファイナリストのあとに続こうとしています。



そしてアダム・ランバートは、全米のゲイ・メディアからも大きな期待を集めています。彼が表紙を飾った『ローリング・ストーン』誌2009年6月13日号で、アダム・ランバートはゲイであることを堂々とカミングアウトしたのです。

「僕がゲイだと聞いて驚く人がいるとは思わないな。……僕は、自分の性的指向に誇りを持ってる。ゲイであることを受け入れてるし、それは僕の一部なんだ。」

この他にも、ABC 振興会さんの記事によると、彼は本当は第8シーズンのファイナル後に記者会見でカミングアウトしてしまおうと考えていたそうなんですが、『ローリング・ストーン』誌上でカミングアウトしたほうがカッコいいと考え直した、と語っているそうです。まあ、これはたぶん『ローリング・ストーン』誌へのリップ・サーヴィスではないかと思います。記者会見よりも誌上でのカミングアウトのほうが大勢の記者からの質問攻めを回避できるから、というのが本当の理由ではないでしょうか。

いずれにせよ、こうしたカミングアウトがあった後も、アダム・ランバートは依然として人気者であり、アメリカ音楽界の台風の目であり続けています。ひょっとしたら保守層からの反発もあるのかもしれませんが、現状ではアダム・ランバートを支持する声のほうが圧倒的に大きいようです。

こうした人気の過熱ぶりを見ていると、アメリカのLGBTアーティストを取り巻いている状況は、着実に変化しつつあるのだということを実感します。



以前からこのブログをご覧になってくださっているみなさんには説明不要のことかもしれませんが、世界中で名を知られている著名なLGBTアーティストの多くは、実はアメリカではなくイギリスの出身です。エルトン・ジョンしかり、フレディ・マーキュリーしかり。ボーイ・ジョージジョージ・マイケルもニール・テナント(ペット・ショップ・ボーイズ)も、みんなイギリスのアーティストです。1999年に男性アイドルとしては世界で初めてゲイであることをカミングアウトしたボーイゾーンのスティーブン・ゲイトリーも、正確にはアイルランド出身ですが、拠点はやはりイギリスです。2005年には、やはりイギリスを主な拠点としているアイルランド出身のボーイバンド、ウエストライフのマーク・フィリーが、スティーブン・ゲイトリーとウィル・ヤングに続いて、ゲイであることをカミングアウトしています。

そんなイギリスとは対照的に、保守層からの反発が根強いアメリカでは、ヒットチャートを席巻するほどの人気アーティスト、特にアイドルとしてティーンエイジャーから絶大な支持を集めているアーティストがLGBTであることをカミングアウトする例は、極めて稀でした。

そんな状況に最初の変化が訪れたのは、2006年7月。

イン・シンクのメンバーだったランス・バスが、『ピープル』誌を通じてゲイであることをカミングアウトしました。これはアメリカの男性アイドル歌手としては初めてのことで、極めて画期的な出来事でした。

また、2008年の9月には、『アメリカン・アイドル』の第2シーズンで準優勝してデビューを果たしたクレイ・エイケンが、やはり『ピープル』誌のインタヴューに応えて、ゲイであることをカミングアウトすると共に、女性プロデューサーのジェイムズ・フォスターとのあいだに人工授精によって子供を授かったことを明かしました。このカミングアウトは、父親となるにあたって、これからは子供のためにも自分に正直でありたいというクレイの意志によるものでした。これに先立つ2006年3月、クレイはアウティングの被害に遭っています。ジョン・ポーラスという元グリーン・ベレーの男性が、ゲイ向けの出会い系チャットでクレイと出会い、一夜を過ごしたという話を、クレイのチャット画像と共に『National Enquirer』誌上にて暴露したのです。この件についてアメリカのマス・メディアは、クレイが本当にゲイなのかどうかを詮索するばかりで、ジョン・ポーラスの卑劣な行為を批判する声は、メディアの側からは全く上がりませんでした。(その後、ジョン・ポーラスは同年6月にメディアを通じてクレイに謝罪の意を表明しています。)

そして、アダム・ランバートのカミングアウトは、アメリカの男性アイドル歌手としてはランス・バスとクレイ・エイケンに続く、第3のケースとなりますが、アダムの場合、その人気が落ち着きを見せてからのものではなく、全米がアダムに熱狂しているさなかでのカミングアウトであり、しかもそれがアダムの将来に何らの暗い影を落としてはいないというところに、アメリカの音楽界が少しずつリベラルな気風を取り戻しつつあるのを感じ取ることができます。



さて、アダム・ランバートのデビュー・アルバムは、今秋リリースの予定です。レディー・ガガを手がけた RedOne がプロデューサーに迎えられていることが既に報じられており、出来上がりが今から楽しみです。

シングルのほうは、今シーズンから『アメリカン・アイドル』の審査員に加わった作曲家カーラ・ディオガルディによる、ファイナルでの課題曲「No Boundaries」のダウンロード販売が、既に5月より開始されています。

「No Boundaries」ジャケット

iTunes Store「No Boundaries」購入ページ(英語)


「No Boundaries」は、第8シーズンの覇者であるクリス・アレンとの競作形式で同日リリースされており、クリスのヴァージョンは全米最高11位、アダムのヴァージョンは全米最高72位。

……って、なんか、ものっそい大差がついているんですけど、何で?

と思ったら、その回答も、やはり ABC 振興会さんの記事の中にありました。それによると、この曲をテレビで頻繁に歌っているのはクリス・アレンのほうで、アダムがテレビで歌っているのは「No Boundaries」ではなく、やはり第8シーズンの中でアダムが歌った、ティアーズ・フォー・フィアーズの1982年のヒット曲「Mad World」。やはりダウンロード販売のみですが、こちらは全米最高19位を記録。めでたく Top20ヒットとなっています。

というわけで、アダム・ランバートによる「Mad World」のスタジオ・ライヴの映像をご覧いただきたく思います。歌い終わってからの実に爽やかな笑顔にご注目あれ。80年代初頭のニュー・ロマンティック・ブームを思い起こさせる美青年が、こんなにも爽やかな笑顔の持ち主だなんて、そりゃノンケ女子もゲイ男子も等しく彼に転ぶわけですよ。



"Mad World"
(Live At Regis & Kelly Show, 2009)




アメリカの大手レコード会社は、アーティストが性的指向をオープンにするのを好まない傾向があります。そのため、オープンリーのLGBTアーティストたちの多くは、大手ほどの広範な販売網を持たないインディペンデント・レーベルで活動する道を選ぶか、あるいはシザー・シスターズサム・スパローのように、アーティストの性的指向には比較的寛容なイギリスのメジャー・レーベルと契約する道を選んできました。

しかし、アダム・ランバートの今後の活躍によっては、そうした傾向を打ち破る変化がアメリカの音楽界に訪れるかもしれません。

アダム・ランバート、要注目のアメリカン・アイドルです。



スポンサーサイト
2009.07.27 Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://queermusicexperience.blog10.fc2.com/tb.php/228-312ac324
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。