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ここのところ、アメリカのメジャー級の女性アーティストが、次々とカミング・アウトしています。

まず4月13日には、クリスチャン・フォークのジェニファー・ナップがメジャー級のクリスチャン・アーティストとしては初めて、レズビアンであることをカミング・アウトしました。

そして4月21日には、女性ラッパーのニッキー・ミナージュがメジャー級の黒人ヒップ・ホップ・アーティストとしてはたぶん初めて、バイセクシュアルであることを公的に認めました。

ジェニファー・ナップ バイオグラフィー ←読んでね。

ニッキー・ミナージュ バイオグラフィー ←読んでね。

この2人のカミング・アウトで興味深い点は、クリスチャン・ミュージックにしてもヒップ・ホップにしても、LGBTであることを公にしているメジャー級のアーティストがほとんどいないジャンルである、ということです。

そのような傾向のあるジャンルに属しているメジャー級の女性アーティスト2人が、同じようなタイミングでカミング・アウトしたのは、まあ単なる偶然だとは思いますが、だからこそ私はそこに、時代の変化の潮流を感じます。

って、口にするのも恥ずかしいくらいベタなフレーズですが。



そして、また1人。

クリスチャン・ミュージックやヒップ・ホップ以上に保守的と言われている音楽ジャンルに属するメジャー級の女性アーティストが、レズビアンであることをカミング・アウトしました。

カンサス出身のカントリー・シンガー、シェリー・ライトが、今日(5月5日)発売の『The Advocate』誌、および『People』誌のインタヴューを通じて、レズビアンであることを公にしたそうです。

それに先立つ5月3日、Advocate.com は一足先に、記事の予告篇のような形で、シェリーのカミング・アウトの事実だけを報じました。

Country Music Star to Come Out (Advocate.com, 2010.5.3)

実はですね、この5月3日の記事が出た直後に、Advocate.com は本来なら5月5日に掲載するべきインタヴュー記事の全文をフライングで掲載していたんです。数時間後には削除されてしまいましたが、そのうち改めて掲載されることと思います。このエントリを書いている時点では、まだ削除されたままです。

その数時間限りのフライング掲載のあいだに、件のインタヴューでの彼女の発言のいくつかを実は訳出しておいたので、今回のエントリではその内容を紹介していきたいと思います。
ちなみに、シェリー・ライトの名前は、日本ではあまり知られていないと思います。彼女に限らず、カントリー・ミュージックのアーティストの作品は、『Billboard』誌の Top200や Hot100の上位にランキングされない限りは、日本ではなかなか紹介されません。彼女のこれまでのアルバムも、たぶん日本盤は未発売だと思います。

そんなシェリー・ライトのこれまでの経歴については、Queer Music Experience.に新しくバイオグラフィーを掲載したので、そちらを読んでくださいねー。

シェリー・ライト バイオグラフィー ←読んでね。

"Single White Female"
(1999)


Single White FemaleSingle White Female
(1999/05/18)
Chely Wright

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さてさて。

女性カントリー・シンガーがカミング・アウトした例は、実はシェリー・ライトが最初ではないんじゃね? と思われたかたも、多くいらっしゃると思います。

そうなんです、オープンリー・レズビアンのカントリー・シンガーは、k.d.ラングが先駆者です。

ただし。

k.d.ラングはアメリカの歌手ではありません。彼女はカナダ出身なんです。

つまり、アメリカ出身のメジャー級カントリー・シンガーが同性愛をカミング・アウトした例は、おそらくシェリー・ライトが初めてなんです。

しかもシェリーは、アメリカの中でも特に保守的な地域と言われている、中西部の出身です。

それが何を意味しているのかというと、彼女が歌い、演奏している種類のカントリー・ミュージックというのは、単にサウンドだけがカントリー・ミュージックなのではなくて、保守派の思想もその一部として含めたところの、まさに正統のカントリー・ミュージックなんです。

ゆえに、彼女のカミング・アウトは、たぶんアメリカではこれから大きな議論を呼ぶことになると思います。

アメリカ中西部出身のメジャー級カントリー・シンガーがカミング・アウトした前例がないため、カントリー・ミュージックのファン層がシェリーのカミング・アウトにどのような反応を示すのか、シェリーにも全く予想がついていないことが、今回のインタヴューでは率直に語られていました。

今後のキャリアがどうなるのか、シェリーは決して楽観視はしていません。

初めて本当の自分をさらけ出した新作アルバム『Lifted Off The Ground』や、同時発売される回想録『Like Me』が、はたしてこれまでのファンに受け入れてもらえるのかどうか、彼女は不安を覚えています。それを隠そうともしていません。

カミング・アウトしたことによって、カントリー・シンガーとしてのキャリアが失われてしまうことすら、シェリーは覚悟しています。

この辺の話は日本に暮らしている私たちにとってはなかなか実感しにくいことなんですけど、カントリー・シンガーのカミング・アウトっていうのは、主流のポップ・シンガーがカミング・アウトする以上に、シンガーとしてのキャリアに致命的な大打撃を与えるものなんです。

「同性愛者であるせいで、カントリー・ミュージック界でのキャリアが駄目になったとしたら、傷つくことになるでしょうね。でも、充分に覚悟はしているわ。単にカントリー・ミュージックを演っているというだけでは私という人間は不完全なんだってことに、ついに自覚を迫られるようになってしまったの。私という人間を完全に実現する方法を見つけ出さない限り、もう持ちこたえられそうにもなかったのよ」

このインタヴューから見えてくるものというのは、アメリカの中でも特に保守的といわれている中西部で生まれ育ち、ヒップ・ホップ以上に保守的といわれているカントリー・ミュージックの世界に長年に渡って身を置いてきた女性にとっては、メディアを通じてカミング・アウトする以前に、そもそも自分の性的指向を受け入れること自体がとてつもなく困難であった、ということです。

実際、シェリー・ライトは2006年に自殺すら試みたそうです。

しかし、そこから立ち直ることができたのは、彼女には音楽があったからでした。

「歌のおかげで、私は本当に命を救われたわ。歌を書くというプロセス――そして私の人生を書き下ろして本にするという体験のおかげで――私はここまでやってこられたのよ。もうこれ以上、偽りの人生を送ることはできないってことに、ようやく気がついたの。すべてを変えなくちゃいけないわ。本を書くという体験……今回のアルバム、カミング・アウト、そうした劇的で激しい体験は、人生でもう二度とはないでしょうね。途方もなく紆余曲折した道のりだった。感謝はしているけれど、また繰り返すのは御免こうむるわ」

この Advocate.com のインタヴューは、次のような彼女の言葉で締めくくられていました。

「私はまだ、ゲイ女性として自分探しをしている途中なの。でも、ようやく自分の居場所を見つけ出して、とても興奮しているわ。ゲイ・コミュニティの一員であることにワクワクしているのよ。以前はそんなふうに感じたことは一度もなかったわ」

彼女の今後のキャリアは、はたしてどうなっていくのでしょうか。今回のインタヴュー記事のライターでさえ、楽観的なことは書いていませんでした。ディキシー・チックスの名前を引き合いに出して、リベラルな発言を行なったカントリー・ミュージシャンがどれだけ叩かれるかということに言及していました。

でも、アメリカの音楽界は、ブッシュ政権時代に比べると、かなりリベラルな空気を取り戻しているように、個人的には感じています。

それをいちばんよく象徴しているのが、レディー・ガガの大成功であり、彼女のおかげで道が開かれたと公言しているアダム・ランバートの人気者ぶりであると思います。

アダム・ランバート バイオグラフィー ←読んでね。

そして、このエントリの冒頭でも述べたように、ジェニファー・ナップやニッキー・ミナージュなど、保守的と言われているジャンルの中から、同性愛をカミング・アウトする女性アーティストが次々と現れているのも、アメリカ音楽界の変化を示しているはずです。

太平洋を遠く隔てた日本から応援していても、シェリー・ライトのキャリアをサポートする大した力にはならないだろうけど、私はシェリー・ライトを応援していきます。

アメリカ中西部で暮らす若いLGBTの人たちに前向きな気持ちを与えてくれる、そんなロール・モデルとしてのキャリアが、シェリー・ライトの前途には開けています。

Lifted Off the GroundLifted Off the Ground
(2010/05/04)
Chely Wright

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2010.05.05 Top↑
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