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「イルミナシオン/恋の曲がり角」CDジャケットジャケットはレトロな昭和歌謡風味。イントロで鳴り響くトランペットの音色も、場末感ただようムード歌謡風。……と思いきや、そこにすかさずドスドスと被さってくる、バスドラの重低音。あれよあれよという間に、セピア色の昭和歌謡の世界は、きらびやかなエレクトロニック・ダンス・ミュージックの世界へと早変わり。

私の目下のヘビーローテーション曲、「イルミナシオン」とは、そんな曲です。

この曲を歌う柏本圭二郎(かしもと・けいじろう)さんは、東海地方で活躍されている、いわゆるオネエキャラのタレントさんです。でも、見た目は野郎系、というところがポイント。

オネエキャラとは所作や口調だけではなくて見た目もフェミニンである、と理解されているノンケのかたたちにとって、圭二郎さんのキャラ設定は、ひょっとしたら軽いカルチャー・ショックかもね。でも、藤嶋の周囲にいるゲイの友人のみなさんって、圭二郎さんのようなタイプのかたが多いんですよ。ノンケのかたが「ゲイ」という単語を聞いてパッと思い浮かべるような感じの、華奢でフェミニンなかたはむしろ少なくて、「ヒゲに短髪、でも中身は乙女」みたいなかたのほうが、藤嶋の場合は圧倒的に多い。だから、藤嶋には圭二郎さんのようなタレントさんのほうが、より身近な存在として感じられます。

さて、今年(2010年)の4月28日に発売された、柏本圭二郎さんの初めてのCD「イルミナシオン/恋の曲がり角」は、ダブルAサイド・シングルです。圭二郎さんは現在コミュニティFMで2本のレギュラー番組を担当していらっしゃいますが、そのうちの1本、『柏本圭二郎のとりあえず、生!?』で、圭二郎さんのためのオリジナルの楽曲の募集を行ない、そして誕生したのが、「イルミナシオン」なんだそうです。

昭和歌謡的なネオンの街の物語を、エレクトロニック・ダンス・ミュージックに載せて歌うという組み合わせの妙が、この「イルミナシオン」という楽曲の面白さだと思うのですが、この組み合わせって、実はかなり難しかったりします。

というのも、エレクトロニック・ダンス・ミュージックって、実は時代の流行にものすごく縛られているジャンルなんです。ロックとは違って、音を聴いただけで、どの時代に制作された楽曲なのかが、だいたいわかってしまう。たとえば、シンセサイザーの音色の違いとか、プログラミングによるドラムスの音色の違いとか、そういった要素に、時代性がものすごく出てしまう。しかも、最先端の音作りを狙えば狙うほど、リリースからほんの少し時間が経過しただけで、時代遅れ感がかえってMAXになってしまう。ということは、裏を返せば、レトロ感を意図的に演出するのも難しい、ということでもあるんです。だから、往年のダンス・ミュージックの再現を試みても、同時代性からは決して離れられない。

ところが、「イルミナシオン」のアレンジメントって、不思議とタイムレスな仕上がりなんですよね。

たとえば、この曲のピアノの鳴らし方って、明らかに'80年代末の、初期のハウス・ミュージック風です。でも、全体のアレンジメントは、決して初期のハウス・ミュージックを再現したものではありません。うねるようなシンセ・ベースの鳴らし方は、'90年代前半のテイストだし、それらのシンセサイザーの音色自体は、ゼロ年代以降のエレクトロニカ風です。このように、それぞれの時代の流行が、決してあからさまではないサジ加減でミクスチャーされていることによって、「イルミナシオン」のアレンジメントは、たぶん二十代の人が聴いても、三十代以上の人が聴いても、懐かしさと新しさが程よく入り混じった、同時代性の縛りから解き放たれたエレクトロニック・ダンス・ミュージックになっているんです。

だから、昭和歌謡的な世界観の歌詞と組み合わせても、エレクトロニック・ダンス・ミュージックが半ば必然的に帯びている同時代性とのギャップが、この曲の場合は、ほとんど生じていません。それどころか、その昭和歌謡的な世界観までもが、アレンジメントの力によって、タイムレスなものになっている。どんな世代の人が聴いても、新しさと懐かしさの両方を感じることができる。それが、「イルミナシオン」という楽曲の魅力だと思います。



それともう一つ、この「イルミナシオン」で特筆すべき点は、柏本圭二郎さんのオネエというキャラクター設定が、この曲の中には持ち込まれていない、ということです。

通常、オネエキャラのタレントさんがCDをリリースされるときには、そのタレントとしてのキャラクター設定が、そのまま楽曲の中にも持ち込まれている場合がほとんどです。たとえば、IKKO さんや、はるな愛さんのデビューCDでは、「どんだけ~」や「いうよね~」といった決めフレーズが、楽曲のタイトルやサビの部分の歌詞にも、そのまま用いられています。また、オープンリー・ゲイのタレントの前田健さんがCDを出された際には、持ちネタの一つである「前田健子」というキャラクター設定が持ち込まれていました。

このように、タレントとしてのキャラクター設定をそのまま楽曲の中に持ち込むという作り方を、私は特に批判的に見ているわけではないです。こうした作り方をしたほうが、購買層にとっては親しみやすいものができあがりますから。ただ、こうした作り方は、「本業は歌手ではないタレントさんの、企画モノ作品」という色合いが強くなってしまうので、継続的な歌手活動にはつながりにくいんですよね。それが残念で。

柏本圭二郎さんの場合も、もう一つのダブルAサイド曲であり、番組で共演されている“H♡美”さんこと沢野ほなみさんとのデュエット曲「恋の曲がり角」のほうでは、ふだんの圭二郎さんのオネエキャラの設定が、そのまま持ち込まれています。

ところが、「イルミナシオン」のほうには、そうしたキャラ設定は持ち込まれていないんですね。

つまり、「イルミナシオン」という楽曲は、圭二郎さんがパーソナリティーを務めておられるラジオ番組の企画から誕生した作品でありながら、実は圭二郎さんのタレントとしてのキャラ設定に基づいて成立している楽曲では、ないんですね。

ということは、この曲を歌っているのは、実は「オネエタレントの柏本圭二郎」ではなく、あくまでも「歌手・柏本圭二郎」なんです。

この点は極めて重要だと、私は思います。

“イルミナシオン”
(Live, 2010)


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OTAI RECORD

柏本圭二郎 MySpace

柏本圭二郎 HP


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2010.07.09 Top↑
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