上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- Top↑
2013年1月17日(木)は、池袋にあるライヴ・ハウス、鈴ん小屋(りんごや)さんにて行なわれた、鹿嶋敏行さんの企画ライヴ、"Serious Playground"に足を運んでまいりました。

会場の鈴ん小屋さんは、まるで日本料理屋さんのような内装の、和風ライヴ・ハウスです(実際に有機創作料理をいただくこともできます)。受付には玉砂利が敷かれていて、床はつやつやの板敷き。当然、土足は厳禁。入口で靴を脱いで中に上がります。出演者のみなさんも全員、靴下や裸足でパフォーマンスをなさいます。

あ、そうそう、受付でドリンクチケットとして渡されたのが、なんと本物のどんぐりでした。こういう遊び心も素敵な鈴ん小屋さんです。

※鈴ん小屋さんのサイトは、こちら

さて、今回の"Serious Playground"なんですが、このライヴは鹿嶋さんが鈴ん小屋さんからツーマン・ライヴをすすめられ、そこから企画がスタートしたのだそうです。最終的にはツーマンではなく、鹿嶋さんが「大好きな音楽仲間」と絶賛するアーティストさんが3組も出演されるイヴェントとなりました。

タイトルの"Serious Playground"は、鹿嶋さんの敬愛するローラ・ニーロの曲のタイトルから採られています。日本語にすると「真剣な遊び場」。今回の3組のアーティストさんとの共演、そしてそこから生まれるケミストリーが、鹿嶋さんには楽しくて楽しくて仕方がないのですが、だからといって馴れ合いになってはいけないという、つまりこれは、楽しい真剣勝負。まさしく"Serious Playground"なのです。

そして、これは私がまったく個人的に感じたことなのですが、この"Serious Playground"は、鹿嶋敏行版の『ソラニワ』でもあったのではないかと、そんな気がしました。

音楽性やパフォーマンスのスタイルはさまざまでありながら、そこに集った出演者たちの根底には、共通した何かがあり、その何かが響き合って、とても温かい時間と空間が生まれる――かつて鹿嶋さんが出演された『ソラニワ vol.3』(2010年11月23日開催)は、そんなライヴ・イヴェントでありました。

『ソラニワ vol.3』観覧記(2011年2月1日掲載)

今回の"Serious Playground"に出演なさった4組のみなさんも、やはり根底の部分では何かが共通しているという感触を、私は受けました。それをあえて言葉にするならば、この4組のみなさんは、世の主流に流されたりおもねったりすることなく、固有の表現世界を築き上げていて、しかもそれでいて排他的には決してならずに、いつでも扉を開いていて、どんなお客さんをも受け入れ、うたの力で温かく歓待するという、その懐の広さ、受容力の大きさこそが、根底の部分で共通していたように思うのです。

単に固有の表現世界を持っているだけでなく、その世界にオーディエンスをいざない、うたの力を媒介にして、そこにいる全員が存在を許される、誰にでも居場所がちゃんとある空間を作り出してしまう――それが、"Serious Playground"に出演なさった4組のみなさんに共通する特性であったと、私はそう思います。

うたの力が作り出す、誰もが等しく受け容れられる、遊び場。

sola さんがオーガナイズした場合に、それは『ソラニワ』と呼ばれ、鹿嶋さんの場合には"Serious Playground"と呼ばれる。

『ソラニワ』と"Serious Playground"のあいだには、同じ種類の優しさがあると、私は感じました。



今回の"Serious Playground"に集った4組のアーティストのみなさんの顔触れはというと、鹿嶋さんのほかには、アコースティック・ギターの弾き語りスタイルのヒラヲユミさん、アフリカの民俗音楽に他ジャンルの要素を加味している3ピース・バンドの Zawadi Band さん。

そしてもう1組が、とんちピクルスさんです。

このブログのテーマはLGBTミュージシャンの音楽なので、ここではあえて、鹿嶋さんととんちピクルスさんのおふたりに記事の内容を絞らせていただきますが、ヒラヲユミさんも、Zawadi Band さんも(特に女性ヴォーカルの Nire さんが)、先にも述べたとおり、固有の世界を内面に持っているだけでなく、その世界をオーディエンスの前に現出させてしまうほどのアーティストさんでした。



とんちピクルスさんさて。

今回2組目の出演者として登場なさった、とんちピクルスさんのセット・リストですが、CD音源で既に私が個人的に親しんでいて、なのにライヴではまだ未体験だった2曲が含まれていて、それが私にはとても嬉しかったです。

そのうちの1曲は、『DEMODAS2』に収録の「湯の花」。エレクトロニカ路線の楽曲ですが、同じエレクトロニカ系でも、疾走感のある「どうだいドラえもん」や「かっこうドライブ」とは異なり、それこそ温泉のようにのんびり、ゆったり、ほっこりとした雰囲気の曲です。『DEMODAS2』のエンディングを飾っているナンバーですが(シークレット・トラックを除く)、いきなりこれがオープニングでパフォーマンスされました。ちょっとビックリ。

今回のライヴのお客さんは、とんちさんのことをご存じなかったかたのほうが多くいらっしゃったように思います。それなので、レコ発だった2012年10月31日開催の『10" PICKLES SHOW(といんちピクルス ショー)』のときと比べると、客席の雰囲気がずいぶんと違っていました。『10" PICKLES SHOW』のときは、ほとんどのお客さんがとんちさんのファンだったので、ワクワクとした高揚感がいっぱいにみなぎっていたのですが、今回の客席は、実際にパフォーマンスが始まるまでは、「この人はいったいどういうミュージシャンなんだろう? なんだか予測がつかないわ」といった感じの、未知であることを楽しんでいる雰囲気が、濃厚に漂っていました。

そんな客席を前にしての最初の1曲が、いきなり「湯の花」。

かなりシュールな展開でした。

そして、「湯の花」のパフォーマンスに接した客席の雰囲気は、「予測がつかないわ」から、「ナニコレ、よくわかんないけど楽しい!」に変化していました(笑)。

「湯の花」のシュールなパフォーマンスで完全に客席を呑んだとんちさんは、続く「おちゃめ三度笠」のノリの良さで、オーディエンスのみなさんの心を見事に鷲づかみにしていました。さすがです。

2014年1月8日追記:私が初めてとんちピクルスさんの「湯の花」のライヴ・パフォーマンスを観たのは、実はこれが初めてではありませんでした。私が初めてとんちピクルスさんのライヴを観た、2005年8月28日の『とんち 音の波』の時に、既に「湯の花」のパフォーマンスにも接していました。恥ずかしい勘違いをしてしまいました。大変申し訳ありません。)

私が初めてライヴで聴くもう1曲は、「のびろ俺の如意棒」。限定盤の『とんち音の波』に収録されています。タイトルから容易にうかがえるように、こちらはエッチ路線の曲ですが、この曲にヒラヲユミさんと鹿嶋さんがやたらと大ウケしていたことが、むしろ私には大ウケでした(笑)。

今回のライヴではよりエンタテインメントに徹していらっしゃったのか、そのセット・リストはコミカルな楽曲が中心となっていた印象ですが、だからこそラストに歌われた「夢の中でないた」の叙情性と哀感は、初めてとんちさんの音楽に接したオーディエンスのかたたちの心には、ひときわ深く染み入ったことだと思います。まだ2組目だというのに、思わずアンコールをしたくなってしまったのは、きっと私だけではないはず。



鹿嶋敏行さんそして、鹿嶋敏行さん。

このことは鹿嶋さんご自身も既にブログで公表していらっしゃることなので、ここでもあえて触れさせていただきますが、鹿嶋さんは昨年の秋に、お父さまを亡くされました。

それによる慌しさもようやく過ぎて、今回が鹿嶋さんの実質的な復活ライヴとなりました(お父さまが亡くなられて以降、結果的にではありますが、鹿嶋さんはしばらくライヴをお休みしていらっしゃったのです)。

今回のセット・リストのうち、特に強い印象を残したのは、やはり「ヨイトマケの唄」でした。

以前から鹿嶋さんのライヴをご覧になっていらっしゃるかたならばご存知のとおり、鹿嶋さんは既に何年も前から「ヨイトマケの唄」をレパートリーとされています。昨年末のNHK紅白歌合戦の影響による、にわかカヴァーではありません。

そして、この日の鹿嶋さんの「ヨイトマケ」は、これまでとは異なった、ある種の生々しさが伴っていたように、私には聴こえました。

「ヨイトマケの唄」は母と子の物語であって、父と子のドラマを描いた曲ではありませんが、親子愛、家族愛が歌われた作品であることに変わりはありません。鹿嶋さんのお母さまと甥御さんもこの日は会場にいらしていたのですが、家族のことを思うとほとばしり出そうになる激情をコントロールせんとする、その意志の存在が、かえって鹿嶋さんの感情のゆらぎをうかがわせる、そんな雰囲気のパフォーマンスであったように、私には感じられました。デリカシーのない書き方をしてしまって申し訳ありません。



そして、"Serious Playground"と題された今回のライヴの大きな目玉は、やはり3組のアーティストさんのみなさんと鹿嶋さんとの、直接共演でしょう。

ヒラヲさんと Nire さんのおふたりが、鹿嶋さんのステージに1曲ゲストで一緒に登場し、御三方によるジャム・セッション的なパフォーマンスが繰り広げられたほか、とんちピクルスさんと鹿嶋さんのおふたりによる「遠くでひばりもないている」のパフォーマンスも披露されました。LGBTミュージックのブログの執筆者である私には、これこそが今回のライヴの最大の見どころとなりました。

おふたりの直接共演による「遠くでひばりもないている」は、2011年9月23日に開催された『とんちピクルス×鹿嶋敏行 秋分の日の五分五分スペシャル!』にて、既に披露されていますが、この日の2013年ヴァージョンは、それとはまた違った味わいのものとなりました。

とんちピクルス×鹿嶋敏行 秋分の日の五分五分スペシャル!観覧記(2011年10月11日掲載)

前回の共演では、イヴェントのタイトルにもあるとおり、鹿嶋さんととんちさんは五分五分であり、完全に対等な二人のケミストリーであったと思います。対して今回は、鹿嶋さんのステージにとんちさんが1曲ゲスト参加するという形での共演だったので、とんちさんは一歩下がって、鹿嶋さんを立てたパフォーマンスをなさっていたように私には感じられました。

一方の鹿嶋さんは、以前よりもこの曲を明らかに自分の血肉としていらっしゃって、そうしたおふたりの変化が、同じ組み合わせの中に新たなケミストリーを生み出していたと思います。


鹿嶋敏行さんと、とんちピクルスさん


今回のライヴは予想以上の長丁場でした。終電時間の早い私は、残念ながら鹿嶋さんのアンコールでのパフォーマンスを拝見することができませんでした。それがかなりの心残りでしたが、鹿嶋さんの実質上の復活ライヴをこうして見届けることができたことを、嬉しく思っています。

以上、"Serious Playground"観覧記でした。




とんちスタンプ・カード
とんちスタンプ・カード、ようやく2スタンプ目。
とんち粗品めざしてがんばろっと。



スポンサーサイト
2013.01.19 Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://queermusicexperience.blog10.fc2.com/tb.php/330-65bf5357
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。