上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- Top↑
 このブログと、親サイトの Queer Music Experience.では、LGBTであることを自ら公にしていたり、あるいはLGBTであることが何らかの形で明らかになっているシンガー/ミュージシャンの話題のみを取り上げています。

 その性的指向について噂になりながらも、本人による性的指向への言及が一切ない、という存命中のシンガー/ミュージシャンの話題は、原則として、取り上げていません。

 己の性的指向を明言できるのは、当人だけです。他者が性的指向を決め付けることなどはできないし、するべきでもない。そのような私自身の考えに基づいて、当ブログと親サイトの Queer Music Experience.では、LGBTであることが何らかの形で明らかになっているシンガー/ミュージシャンの話題のみを取り上げています。それ以外のシンガー/ミュージシャン――たとえば、本人はLGBTであることをカミング・アウトしていないにもかかわらず、それがまるで既成事実でもあるかのように、その性的指向が人々の口の端に上ってしまっているようなシンガー/ミュージシャン――の場合は、当人の口からハッキリと、自身の性的指向についての言及がない限りは、このブログや Queer Music Experience.で話題にすることは、原則として、ありません。

 ただし、その原則には沿うていない、一部の例外記事もあります。

 今回のエントリは、その例外記事の一つとなります。



 今月(2013年10月)13日、テレビ東京系列で放映されているドキュメンタリー番組『ソロモン流』に、美川憲一(みかわ・けんいち)さんが登場なさいました。



 美川さんがオープンリー・ゲイであるという誤解は、なにも異性愛者のかたたちのあいだだけでなく、ゲイの当事者のかたたちのあいだにも非常に多いという印象が私にはあるのですが、美川憲一さんは、ご自身のことを同性愛者だとメディア上で明言なさったことは、これまでにはありません。

 上に埋め込んだスポット映像の中で、美川さんは「全て喋るわよ。お聞き!」と、視聴者の興味を自ら煽っていらっしゃいます。こんなふうに言われたら、さぞや赤裸々な内容が語られているのだろうと期待を膨らませてしまう視聴者のかたもいらっしゃったかもしれませんが、しかし『ソロモン流』という番組は、他局のトーク・バラエティ番組にありがちな過剰な煽り演出は、むしろ控えめなので、10月13日の放送分でも、タブロイド紙的な興味に基づく話題の提供は、それほどありませんでした。

 当然、美川さんの性的指向も、番組の中では明らかにされていません。

 とはいえ、『ソロモン流』の製作スタッフのかたがたが、美川さんの性のあり方について、強い関心を抱いているであろうことは明らかにうかがえる、そのような番組構成でした。

 まずは美川さんへのインタヴューからスタート。画面の外にいる男性スタッフ(ディレクターさん?)のかたから投げ掛けられた質問は、次のようなものでした。
男性スタッフ:「美川さんは男何%? 女何%?」


 ――この質問が、美川さんの性自認や性的指向を遠回しに問うたものなのか、それとも文面通りに、美川さんの中にある男性性と女性性の比率について尋ねているのか。スタッフのかたの真意は、私にはわかりません。

 しかし美川さんは、この質問を、おそらくは、あえて意識的に、文面通りに解釈なさったのだと思います。次のように回答をなさいました。

「初恋も女性だし、童貞を失った時も女性で、でも私の血の中に半分女の部分があるのは、生い立ちだと思う。」


 この発言を導入部にして、番組は美川さんのこれまでの歩みの紹介や、半年間に及んだ美川さんへの密着取材の様子へと移っていきます。そして、やはりそれらの取材VTRの中でも、美川さんがご自身の中性的なキャラクターについて言及なさっている場面が、いくつかありました。

 たとえば、カメラが回っていない時や、完全にプライヴェートの場面であっても、美川さんがいわゆるオネエキャラのままでいらっしゃることについて、魚住りえさんによるナレーションが、「喋り方もイメージも、テレビなどで拝見する、そのまま。」と評した後に、美川さんが次のように語っていらっしゃった取材VTRがありました。

「(ドスの利いた声で)『どうしたんだよ、え? 何やってんだよ、ほら!』って、(イメージに)合わないでしょう? 要は染み付いたのよ。」


「染み付いた」とはどういうことなのか。インタヴュー映像での発言によると、美川さんの人気が低迷していた、どん底の不遇時代に、キャバレーやショーパブなどを巡業していく中で、

「酔っ払っている人を相手にするには、やっぱりオネエ言葉がいちばん不気味がられて良いかな、って。ウケたしね。その時に、男の部分が出ない方が、お客さんを捌けるかな、っていうのはあったのね。」


 と美川さんは仰っていました。酔客を捌くための、一種の営業スキルとして生み出された中性的なキャラクターが、そのまま「染み付いた」、それが今日の美川さんの個性に繋がっている、という説明の仕方を、おそらく美川さんはなさりたかったのではないかな? と思いました。

 他にも、美川さんがかつては人工授精で子どもを儲けることも考えていたと、取材VTRやインタヴュー映像の中では語られていました。

「母に一つだけ叶えてあげられなかったことは、孫を見せてあげられなかったこと。母たちがね、『私たちがいなくなったら、天涯孤独になるのよ。結婚しなくても、(孫が)それでも欲しいわ』って言われたのよ。」

「母たちがね、『子どもを作りなさいよ、結婚しなくても』。そう、人工授精で。」

「人工授精で……って考えたのよ。韓国とロサンゼルスと、探していただいたのよ。」


 しかし、それでも子どもを儲けなかった理由は、

「愛がないものを、はたして作っていいのかな、って思ったのよね。でも、『大丈夫なの? あんた一人で』って言われて、『あんたたち二人の息子だもの、一人でも大丈夫よ』って。」


 異性愛者のかたでも生涯独身を貫くかたはいらっしゃるので、美川さんがこのように非婚宣言とも取れる発言をなさっているからといって、これを美川さんのカミング・アウトとするのは明らかに曲解ですが、これもまた美川さんの性のあり方をめぐる話題の一つではある、と思います。

 そして、番組のエンディングでは、魚住さんによるナレーション中で、次の質問が美川さんに発されます。

ナレーション:「結局のところ、美川さんは、男性ですか? 女性ですか?」


 この質問への美川さんの回答をもって、10月13日放送分の『ソロモン流』は幕を閉じます。

 私は、このエンディング部分で、ナレーションの一部として発された、「男性ですか? 女性ですか?」という質問の仕方が、非常に気になりました。

 この、「あなたは、男性ですか? 女性ですか?」という質問は、一見すると直球のようでいて、実は非常に曖昧です。

 性自認を問う質問のようにも取れるし、性的指向を尋ねているようにも受け取れる。あるいは、自分の中にある男性的な部分と女性的な部分の比率を問うている質問だと解釈することだって可能です。(いったい何をもって男性的とするのか、あるいは女性的とするのか、という問題もありますが、そこまで掘り下げてしまうと話が大幅に逸れてしまうので、ここではあえて脇に置いておきます。)

「あなたは男性ですか? 女性ですか?」という聞き方は、性をめぐるさまざまな命題のうちの、いったいどれについての問いなのかが、全くもって曖昧です。非常にわかりにくい、不鮮明な内容の質問ではないでしょうか。

 しかも、「男何%? 女何%?」という質問と、「男性ですか? 女性ですか?」という質問は、同じようでいて、実は全然違います。

 前者は、一人の人間の中に共存している男性性と女性性の比率を問うものであるのに対して、後者は中間やグレーゾーンの存在を前提とはしていない、性の二者択一を迫るものです。

 にもかかわらず、おそらくは「男何%? 女何%?」という質問に答えているのであろう美川さんのインタヴュー映像に、あとから「男性ですか? 女性ですか?」という、性の二者択一の問いかけのナレーションを付け加えるという編集の仕方は、はたしていかがなものなんでしょうか。

 この、「美川さんは、男性ですか? 女性ですか?」という質問は、収録の現場で美川さんに向けて実際に発されたものではありません。このエンディング場面での美川さんの回答シーンが、もしも番組のスタッフさんによる冒頭での「美川さんは男何%? 女何%?」という質問への回答の続きであったとするならば、この編集の仕方は、明らかに美川さんの発言を歪めるものです。

 というのも、この編集の仕方では、まるで美川さんが、性自認ないしは性的指向について問われているのにもかかわらず、それをご自身の中にある男性性と女性性の比率についての話題にすり替えているかのようにも見えてしまう。実際そういう映像に仕上がっている。

 現場のスタッフのかたは、あくまでも「男何%? 女何%?」という聞き方をしていた。にもかかわらず、それが編集段階で、「美川さんは、男性ですか? 女性ですか?」という、いったい何について尋ねているのか判然としない質問と、似たような意味合いのものとして混同されてしまっている。

『ソロモン流』という番組は以前から好きだったので、この混同は、私にはとても残念でした。

 重箱の隅を突付くようなレヴェルの批判ではあるかもしれません。しかし、この混同が、よりによって、視聴者のみなさんの印象に強く残るであろう、番組のエンディングの場面で起こってしまっていたということが、私には非常に後味が悪かったのです。このエンディングでの美川さんの発言が実にさっそうとしたものだっただけに尚更です。

 美川さんは、おそらく実際には「男性ですか? 女性ですか?」という質問に答えていたのではなく、「男何%? 女何%?」という質問に答えられていたのだと思いますが、次のように仰っていました。

「男らしく歩こうとかも思わないし、女らしくしてスカート履きたいとも思わないし。だから、私はこのまんまの美川憲一が好きなのよ。」




 さて、このブログは、一応は音楽の話題が中心なので、美川憲一さんについて書くならば、美川さんの歌の話題に真先に触れなければいけなかったのに、後回しになってしまいました。

 でも、私が今回のエントリを書こうと思い立ったのは、美川さんのニュー・シングル「生きる」が、本当に素晴らしい作品であったからです。10月13日放送分の『ソロモン流』の中でも、「生きる」は大きくフィーチャーされていました。

 この曲の素晴らしさを、私のブログをご覧になってくださっているみなさんにも知ってもらいたいと思い、普段の執筆上の原則からは少し外れてみた、というわけです。

 美川さんの歌われるジャンルは、演歌やムード歌謡だけではありません。美川さんはシャンソンにも大きく力を注いでおり、シャンソンのコンサート『ドラマチックシャンソン』を毎年開催なさっています。今年の『ドラマチックシャンソン』のステージの様子も、『ソロモン流』の中では紹介されていました。

 そして、今年の5月にリリースされたニュー・シングル「生きる」も、やはりシャンソンのカヴァー曲です。

 ここ日本では「生きる」という邦題のほか、「最後の一幕」というタイトルでも知られている「Ma derniere volonté」が、その原曲です。1977年の作品で、作曲はシルヴァイン・ルベル(Sylvain Lebel)、作詞はアリス・ドナ(Alice Dona)。そしてこれを最初に歌ったオリジナル歌手は、イタリアの俳優のセルジュ・レジアニ(Serge Reggiani)です。美川さんがこの曲のシングル化を希望なさったのは、実は7年前のことなんですが、しかし著作権の関係でなかなか実現には至らず、2013年の今年になって、ようやくリリースが叶ったのだそうです。

 美川さんヴァージョンの「生きる」の歌詞は、万人に向けた人生の応援歌であると同時に、美川さんのこれまでの人生を振り返る、自伝的な側面も併せ持っています。

 そして、その人生が浮き沈みの激しいものであったことは、日本の多くのみなさんが知るところであり、そのような人生を歩んでこられたからこその、美川さんならではの説得力が、美川さんヴァージョンの「生きる」には、満ち溢れています。

 ミュージック・ヴィデオのほうは、合成映像がいささかチープに見えてしまうかもしれませんが、楽曲の良さを損なうものではないと思います。ぜひご覧になってみてください。

 本当に、素晴らしい楽曲なんです。

“生きる”
(2013)


生きる生きる
(2013/05/08)
美川憲一

商品詳細を見る




ABプロ オフィシャルサイト
http://www.ab-pro.co.jp/




スポンサーサイト
2013.10.20 Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://queermusicexperience.blog10.fc2.com/tb.php/349-481f4221
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。