2014/01/19
第1回冬の東京レインボー祭り観覧記
2014年1月13日(月)は、アジア最大のゲイ・タウン、新宿二丁目の冬祭り、
『第1回冬の東京レインボー祭り』 に足を運んでまいりました。
2000年に第1回が開催されて以降、『東京レインボー祭り』は、夏の大型ゲイ・イヴェントとして定着していますが、今回は初めて、冬の開催が試みられました。
とはいっても、夏の東京レインボー祭りがなくなったわけではありません。また、冬のレインボー祭りのほうも、閉会宣言で語られていたところに拠れば、第2回の開催が正式決定しているわけではないようで、今後の東京レインボー祭りが、はたして夏と冬の二本立てになるのかどうかは、今回の『第1回』の反響次第のようです。
さて、お祭り全体についての私個人の感想は、というと。
第2回の開催があるのであれば、ぜひまた足を運んでみたい、と思いました。
実は私、東京レインボー祭りに足を運んだのは、本当に久しぶりのことだったんですね。そして、長らく足が遠ざかっていた理由というのは、あまりにも人出が多すぎたからでした。
ここ数年の東京レインボー祭りの実際の人出がどうだったのかはわかりませんが、私が実際に体験した初期の東京レインボー祭りって、その人出の多さが、本当に尋常じゃなかったんですよ。
もう、仲通り全体が満員電車並みの混雑具合。
当時の私は、そうした混雑ぶりも含めて、イヴェントの賑わいそのものを楽しむことができていました。でも、体調を崩しがちになってからは、極端な人混みの中に長く身を置くことができなくなってしまいました。そのため、東京レインボー祭りに限らず、極端な人出の多さが予想されるゲイのクラブ・イヴェントなどからも、長らく足が遠ざかっていました。
そんな私が、今回『冬の東京レインボー祭り』に足を運んでみようと思い立ったのは、実は正直なところを申し上げれば、夏のレインボー祭りほどには人出が多くはないであろう、という気がしたからでした。
実際、今回の『第1回冬の東京レインボー祭り』の人出は、ごくごく標準的な賑わいの商店街のお祭りと、同規模のものでした。
ちゃんと人出はあるんだけど、でも人混みをかき分けないと前に進めないほどではない、という。
その余裕こそが、私には非常にありがたかったのです。
出店で売っていた甘酒をすすりながら、縁日とか初詣の感覚で、のんびりと街を散策する。そういう楽しみ方ができる余裕というものが、『冬の東京レインボー祭り』にはありました。
だから、とっても楽しかった。
もちろん、運営側のみなさんにおかれましては、人出は多ければ多いほど望ましいのだとは思います。でも、私のように、長い時間、人混みに塗れることができない人間には、『冬の東京レインボー祭り』の程よい人出は、とってもありがたいものでした。
それから、人出の多さが極端ではないからこそ味わえる、もう一つの楽しさというのは、LGBTではいらっしゃらないであろう地域のかたたちや、あるいは通りすがりのかたたちが、路上で繰り広げられているダンス・パフォーマンスやドラァグ・ショーに足を止め、それを他のLGBTの参加者のかたたちと一緒になって楽しんでいらっしゃる、そういう光景が見られるところですね。
2013年12月1日付のエントリ にも記しましたが、私はそうした光景を見るのが、すごく好きなんですよ。LGBTのイヴェントが、その地域の日々の風景に、ごくごく自然に溶け込んでいる感じがするので。
そうした光景は、夏の東京レインボー祭りでは、目にすることができませんでした。少なくとも私が経験した範囲内に限られますが。あまりにも人が多すぎて、LGBTではない地域のかたとか、通りすがりのかたが、気軽にフラッと入っていける状況ではなかった気がします。
もちろん、それはそれで、「LGBTによるLGBTのためのお祭り」という感じが強くするので、それによって育まれるセクシュアル・マイノリティ間の連帯というのも、大切だとは思うんですが、今回の『冬の東京レインボー祭り』のように、「
地域の日常風景に溶け込んでいるLGBTのイヴェント 」、っていうのも、私は大好きなんですよね。
だから私は、『第1回冬の東京レインボー祭り』を、とっても素敵なお祭りだと思いました。
さて、その『第1回冬の東京レインボー祭り』のツイッターの公式アカウントから、当日のタイムスケジュールを、以下に引用します。
14:00 開会宣言(餅つき大会開始) 14:10 花魁女装道中出発 14:30 パフォーマンス開始 [Wild Boysさんによるバンド演奏] [日出郎さんによるライブ] 15:00 花魁女装道中出発 15:30 パフォーマンス開始 DOt It (ハロプロ大好きダンスユニット)さん Bar shoop さんによる Show 16:00 新虹さんによるエイサー(練り歩き開始) 16:05 エイサー演舞 16:30 閉会宣言「風船飛ばし!」 このタイムスケジュールのうち、特に私のお目当てだったのは、ロック・バンドの
Wild Boys さんと、
日出郎 (ひでろう)さんのライヴ。
Wild Boys さんは、MCに拠れば、今回が4度めのライヴなんだそうですが、メンバーのみなさんの顔触れはというと、これまでにもさまざまなバンドで、ゲイ・コミュニティの音楽イヴェントに出演を重ねてきたかたたちばかり。
ゆえに、安定感は抜群。
リーダーの angen さんは、参加なさるバンドごとに担当楽器が異なっているという、マルチ・インストゥルメンタリスト。この Wild Boys ではギター担当でいらっしゃいます。
ベース担当は、つっちさん。私はつっちさんの演奏する姿が、かねてからとっても好きだったんですよね。軽くピョンピョン跳ねながら、いつでも笑顔でいらっしゃって。そうしたつっちさんの姿からは、「演奏することの楽しさ」が、本来ならそれを知らないはずの私のようなオーディエンスにも、ちゃんと伝わってくる。それがとても好きで。
そのことを、リハーサル終了後にご本人にもお伝えしたら、返ってきたジョークは、「女優ですから(笑)」。
……なんだろう、私が感じた、この敗北感は(笑)。
そして、今回のライヴからは、Avant-garde BOZU のおタカさんが、ピアノ/キーボードで加入。(Avant-garde BOZU の新作のリリースを、私はずっと待ってるんですよー! と、届かないかもしれない私信をここで書いてみる。)
そのおタカさんの鳴らすホーン・セクションの音が、最大限に効力を発揮していたのが、3曲めに演奏された、AKB48の
「恋するフォーチュンクッキー」 。
オリジナルからして既に懐かしさの漂う洋楽テイストの曲でしたが、そのオリジナルが80年代初期のディスコ風味であったのに対して、Wild Boys さんのヴァージョンは、さらに時代をさかのぼった、モータウン風味に近い感じ。その違いによって新しく加味された、どことなく甘酸っぱい雰囲気が、私は好きでした。
この「恋するフォーチュンクッキー」の演奏は、ダンサーのかたがお二人加わって、オーディエンスのみなさんも一緒に踊りましょう! という趣向で行なわれたんですが、最前列のみなさんが、オリジナルどおりの振り付けを、何らとまどうことなく当たり前のように踊りこなしていらっしゃった光景に、わりと本気でビビりました。
女性アイドル・ポップスがメインのクラブ・イヴェントでは、こうした光景は別に珍しくもないんでしょうけれども、私自身は女性アイドル・ポップスの熱心なファンではないし、クラブ・イヴェントも長くご無沙汰しているので、この光景は軽いカルチャー・ショックでした(笑)。「ええっ!? この振り付けって、もはやオカマの一般教養なの!? そんなの知らねーよ!!」みたいな。
でも、よくよく考えてみると、「恋するフォーチュンクッキー」という楽曲には、確かにプライド・ソングとして楽しめる側面もあるんですよね。AKB48のファンではない私ですら、この曲については素直に「ああ、良い曲だな」と思える、その理由というのは、まさにそうした側面ゆえだったりします。
この Wild Boys さんによる「恋するフォーチュンクッキー」に合わせて踊っていらしたのは、オーディエンスの最前列のみなさんだけでなく、次に出番を控えていらっしゃった日出郎さんも、とっても楽しそうな笑顔で、本部テントの脇で、一緒に踊っていらっしゃいました。それが強く私の印象に残っています。
というわけで、続いて登場なさったのは、日出郎さん。
私が今回の『冬の東京レインボー祭り』での日出郎さんのライヴを、絶対に観たい! と思っていた理由は、「青空の下で、しかも新宿二丁目の路上で熱唱する日出郎さんの姿」を観たかったからなんですよね。
ゲイ・シンガー/ミュージシャンのかたが「青空の下」で熱唱される姿というのが、私は前々から好きなんです。
それは、たぶん私が、ゲイ・コミュニティに実際に足を運ぶようになった、ごくごく初期の段階で、いきなりプライド・パレードの移動ライヴの盛り上げ役をやらせていただいたという、ちょっと特殊な体験が由来しているのだと思います。
まだそのころは、「ゲイであることをお祝いしよう」というお祭り的な趣旨でのゲイ・パレードが、日本でも開催されるようになってから、大して間がなかったんです。
つまり、プライド・パレードが、決して当たり前のものではなかった。
恒例行事ではなかった。
だから、すごく熱かったんですよ、みんな。
青空の下、陽光の下で熱唱するゲイ・ミュージシャンのみなさんの姿と、一般の参加者のみなさんが、感涙しながら、ゲイ・ミュージシャンのみなさんの歌声に合わせて、拳を空に突き上げ、渋谷の街を歩いていくという、そういう胸熱な光景を、私はゲイ・コミュニティに足を運ぶようになった、本当にごくごく初期の段階で、いきなり間近で、目の当たりにしたんですよね。
あのときに感じた、ゲイ・シンガー/ミュージシャンのみなさんの歌声が持つ、パワーの物凄さ、それを初めて味わったときの、胸の熱さ。それを私は、今でも追い求めている、というところがあって。
ライヴ・ハウスでのパフォーマンスからは、ちょっと得られない種類の感動なんですよね、これって。やっぱり。
だから、今回、『冬の東京レインボー祭り』に日出郎さんも出演なさると聞いたとき、「これは観たい! ぜひとも観なければ!」と。
そんなわけで、この観覧記を執筆するよりも前に、日出郎さんのバイオグラフィーを、親サイトの Queer Music Experience.に掲載しておきたいなーと思い、開催当日の午前中に、新しくアップロードしておきました。日出郎さんのお名前はご存知であっても、そのテレビ・タレントとしてのご活躍ぶりをリアルタイムではご覧になっていないという世代のみなさんにこそ、ぜひ読んでいただきたいです。
※日出郎 バイオグラフィー
Here > > さて、今回の『冬の東京レインボー祭り』での日出郎さんのライヴなんですが、披露なさったのは、
「シンデレラ・ハネムーン」 と
「ガン降りの雨」 の2曲。
「シンデレラ・ハネムーン」は、日出郎さんがこよなく敬愛なさっている岩崎宏美さんの代表曲の、トランス・アレンジによるカヴァー。直前に出演なさった Wild Boys のみなさんが平成アイドルの「恋するフォーチュンクッキー」を演奏していたのに対して、昭和アイドルの「シンデレラ・ハネムーン」を歌われる日出郎さんは、冒頭で一言。「この曲の振り付けは、さすがにみんなも知らないよね?(笑)」
そして「ガン降りの雨」は、タイトルからも明らかなように、「ガン掘り」に引っかけた下ネタ・ソング。この曲が青空の下で歌われることの痛快感ときたら、もう(笑)。最高でしたね。
今回の写真は、すべて、
くま絵師の悠さん にお願いして、提供していただきました。悠さん、どうもありがとうございましたー! やっぱり餅は餅屋だよ! 上手いよなあ。
そして、悠さんも、私と同様、「日出郎さんの後ろに青空を入れたかった」とおっしゃっていました。
日出郎さんは本当に、スポットライトの下はもちろんのこと、青空の下でも、実に映えるかたでいらっしゃるんですよね。
オーディエンスを楽しませることに長けていらっしゃる日出郎さん。だからこそ、日出郎さんの出演時間は、本当にあっという間の出来事に感じられました。
それでいて、呆気なさは全然ない。
あっという間の中に、めいっぱいの楽しさが詰まっている。
もっと聴きたいんだけど、だからといって満足していないわけじゃない。充分に満喫はしたんだけど、でも本当はもっともっと聴いていたい。
その「過不足のない濃密感」にこそ、私は日出郎さんの、長いキャリアに裏打ちされた豊かさ、確かさを感じました。
素晴らしかったです。
2回めのパフォーマンス・タイムは、場所が本部テントの前から新宿公園前の路上へと移され、「ハロプロ大好きダンスユニット」と謳われた DOt It さんのダンス・パフォーマンスと、Bar shoop さんによるドラァグ・ショーが行なわれました。
この DOt It さんのパフォーマンスを観て、私は以前から気になっていた「ゲイ・アイドル」という言葉の定義について、いろいろと思うところがあったのですが、それは別の記事として、次回のエントリに記すことにします。
2回めのパフォーマンス・タイムに引き続いては、この東京レインボー祭りやその他のプライド・イヴェントでもすっかりお馴染みの、新虹(あらぬーじ)さんによるエイサーの練り歩き、および演舞。
そして最後は、夏の東京レインボー祭りと同じく、恒例の風船飛ばし。
このころには既に日が暮れ始めていたのですが、それでもやっぱり、私たちの風船が、よく晴れた青空へと舞い上がっていくのを見るのは、胸にグッとくるものがありますね。
第1回冬の東京レインボー祭り、確かに寒いっちゃあ寒いし、運営スタッフのみなさんも、出演者のみなさんも、ひょっとしたら夏のイヴェント以上に大変な思いをなさっていたのでは、と思います。
でも、これからは夏と冬の2本立てになってくれたら、私はものすごく嬉しいです。
二丁目振興会のみなさま、大変お疲れさまでした。そして、楽しいひとときを、どうもありがとうございました。
来年も、第2回の開催を、楽しみにしております!
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