西日本メンバー8名のみなさんによる、虹ファイ WESTsのパフォーマンス。 今回の単独ライヴをもって卒業されるうちのおひとり、 北山一護さんのソロ。 このドレスだけでも十分スゴいのに、 この下にはさらにスゴい衣装が隠されていました。 さて。
今回の単独ライヴの最大の特色は、なんといっても、これまでの単独ライヴとは違って、チーム分けが行なわれずに、メンバーが曲毎に入れ替わる、というスタイルが採られていたこと、ですよね。
いったいどのような背景があって今回のこのスタイルとなったのか、それは部外者の私にはわからないのですが、結果的には、これは大正解だったように思います。
というのも、これによって、メンバーのみなさんお一人おひとりの個性が、これまでの単独ライヴよりもはるかに際立っていたんですよね。
たとえば最初の単独ライヴでは、ダンスの得意な赤組、歌唱力重視の青組、可愛いらしさが前に出た黄組、というようなチーム分けが行なわれていたんですが、それはパフォーマンス上でのカラーの違いを際立たせるためのもので、「グループ全体の印象づけ」には有効な手法であった反面、その一方では、同系統のキャラクターのかたたちがひとくくりにされている、という状態でもあったので、メンバーお一人おひとりの個性の違いは、むしろチームのカラーに溶け込んでしまって、かえって紛れがちであったかもしれません。もちろん、これは今から振り返ってみるとそう感じるということであって、当時からそのように感じていたわけではないんですが。
しかし、今回の単独ライヴでは、曲毎にメンバーの組み合わせが変化するというスタイルを採っていたことによって、全く系統の異なった個性のかたたちが一緒に同じ曲をパフォーマンスするということになり、それによってメンバーお一人おひとりの個性の違いがくっきりと浮かび上がり、互いの個性を引き立て合うという相乗効果に繋がっていたんですよね。
だから、メンバーお一人おひとりのキャラの立ち具合が、前回の単独ライヴの比ではなかったです。
これだけ大人数のグループでありながら、メンバーお一人おひとりのキャラがきちんと立っているというのは、非常に凄いことだと思います。
そして、このことは、インディー・ミュージックのネットラジオ番組
『たけださとしの歌のフリーマーケット』 のパーソナリティーのたけださとしさんや、このブログで幾度もご紹介させていただいているシンガー・ソングライターの藤井 周さんなどとも、終演直後にお話をさせていただいて、完全に意見の一致するところでした。
そういったわけで、今回の単独ライヴを実際にご覧になったみなさんがたの多くも、まず間違いなく、たけださんや周さん、そして私が感じたのと同じことを、お感じになったのではないでしょうか。それを私は確信しています。
あえてチーム分けを行なわずに、曲毎にメンバーのかたの組み合わせが変化するというスタイルを採っていた、今回の単独ライヴ。
大成功だったと思います。
とはいうものの。
曲毎にメンバーのかたの組み合わせが目まぐるしく変化するせいで、出演したみなさんのバックステージでの混乱ぶりも、やはりこれまでの単独ライヴの比ではなかったのではないでしょうか。
実際、衣装替えが追いつかなかったりとか、マイクや小道具を忘れて手ぶらでステージに出てきてしまったり、といったハプニングの頻度も、過去最高レヴェルだったので(笑)。
ただ、これもやはり、今回のライヴを実際にご覧になったみなさんであれば、完全に意見の一致するところであろうと私は確信しているんですが、それらのハプニングを、虹組ファイツのオーディエンスのみなさんは、誰一人として、マイナスにはとらえていないと思うんですよね。
そんなことは最初から気にしちゃいない、というか。
虹組ファイツの魅力って、そういうところで左右されてしまうような性質のものでは、そもそもないんですよね。
そういったハプニングでさえ、虹組ファイツの大きな魅力の一つ。
5度めとなった今回の単独ライヴ、あくまでも私が実際に観てきた範囲内での話ではありますが、間違いなく、過去最高のものでした。
これまででいちばん楽しかった。
本当に素晴らしかったです。
それと、前回の単独ライヴからの変化、ということで言うと、私は前回の単独ライヴの観覧記の中で、次のように書きました。
まず、リーダーの岡本 忍さんについて、私は、
「岡本さんは、アイドルという存在に自己同一化を図っていらっしゃるというよりも、むしろアイドルという存在に対して、常に一定の距離を置き、アイドルという存在を外側から見つめる、いわばメタ・ゲイ・アイドルとでも呼びたくなるようなスタンスを、常に保っていらっしゃるんですね。 (中略)『ゲイアイドルごっこ』が『ごっこ』ではなくなってしまう一線を、少なくとも岡本 忍さん個人についていえば、岡本さんはその一線を本能的に見極め、それを超えることなく、あくまでも『ごっこ』の領域に、踏みとどまり続けていらっしゃいます。 」(太字も原文ママ) そして、当時は虹組ファイツの背番号33番だった、сн∀маさんこと南 浩平さんについては、
「岡本さんと南さんのおふたりは、そのプロデューサー的な視点ゆえに、メタ・アイドル的な性質を備えていらっしゃるという点では大きく共通していながらも、岡本さんの場合は、『ごっこ』が『ごっこ』でなくなってしまう一線を決して越えることはなく、一方の南さんは、『ごっこ』を極めることによって、『ごっこ』の領域を超えていらっしゃる。 」(太字も原文ママ) と書きました。その上で、
「岡本さんと南さんのおふたりに限らず、虹組メンバーのかたたちのあいだで、『ゲイアイドルグループごっこ』とは何なのかの定義が、どのようになされているのか、私にはわかりませんが、たぶん虹組メンバーのかたたちのあいだでは、『ゲイアイドルグループごっこ』の定義がさまざまであり、『ごっこ』を女性アイドルのパロディ的な性質の、戯画表現として理解していらっしゃるかたと、ゲイ男性が女性アイドルとほぼ同じ種類の表現行為をすることそれ自体が『ごっこ』であると認識していらっしゃるかたとが、混在しているように、私には感じられます。 (中略) このように、『ごっこ』の定義と、『ごっこ』に臨むスタンスが、メンバーのみなさんそれぞれのあいだで異なっている、そうした雰囲気が以前よりも際立って感じられたのも、今回の単独ライヴで私の印象に残った点の一つです。」 と書き、最後には、
「『ゲイ・アイドル』という言葉がどのような存在を指しているのか、2013年の今は、たぶん過渡期というか、変化の境目のような時期にある ような気が、私はするんですよね。『ゲイ・アイドル』とか『ゲイアイドルごっこ』といったものに、オーディエンスのかたたちだけでなく、おそらくは虹組メンバーのかたたちのあいだでも、明確な共通意識が実は存在していないのではないか、という。 その意味では、虹組ファイツという集団自体も、実は過渡期に入りつつある ような気が、私はします。 どんなアーティストの場合でも、そのキャリアの絶頂期というのは、次におとずれるであろう変革期の序章 です。今現在の虹組ファイツは、誰の目から見ても絶頂期を迎えているからこそ、同時に過渡期に差しかかっている、と言えます 。」(太字も原文ママ) と結びました。
そして一年が経過した、今回の5回めの単独ライヴを観て私が思ったのは、
「ああ、虹組ファイツは過渡期を抜けたな」、と。
この5回めの単独ライヴをもって、虹組ファイツは過渡期を抜けた な、と。
どうして私がそのように思ったのかというと。
今回の単独ライヴでは、前回の単独ライヴのときに感じたような、「『ごっこ』に臨むスタンスが、メンバーのみなさんそれぞれのあいだで異なっている」という雰囲気を、それほどには感じなかったんですよ。
故に今回は、リーダーの岡本 忍さんだけではなく、
虹組ファイツというグループ全体が、「ごっこ」の領域に踏みとどまり続けることを選択した 、という印象を、私は受けたんですよね。
まあ、あくまでも個人的な印象ですが。
「ごっこ」を極めることによって「ごっこ」の領域を超えていらっしゃったメンバーの代表格であった南 浩平さんが、あれから虹組ファイツをご卒業なさって、ソロ・アーティストのсн∀маとして、別個の道を歩むようになったことや、やはり同じように「ごっこ」の領域を超えていらっしゃった背番号25番の三浦小麦さんが今回のライヴを最後に虹組を卒業なさる、といった要因も大きいとは思うのですが、決してそれだけが理由なのではなくて、
今回の単独ライヴでは、岡本 忍さん以外にも、多くのメンバーのかたたちが、ステージ上で「これはゲイアイドルごっこである」という明示を行なっていらっしゃった ことが、何よりも大きいんですよね。
具体的に言うと、たとえば、背番号57番の下嶋 大さんがMC中でポロッと口にした、「ふだんからこんなにホゲているわけじゃないんですけど」という一言であるとか。
あるいは、今回のライヴをもって虹組ファイツを卒業なさる背番号42番の北山一護さんが、日本でのお仕事をお辞めになって渡米されるというお話の中で、「実は仕事を辞めまして……あっ! アイドルは仕事なんかしちゃいけないのに!」とおっしゃることによって、『思わず「ゲイアイドルごっこ」を忘れて、「素の状態」に戻ってしまっていた自分』の姿を明示なさっていたりとか。
あるいは、やはり今回のライヴを最後に虹組ファイツを卒業なさる背番号27番の橘 俊平さんも、アンコールで行なわれた卒業式で、メンバーのみなさんに宛てたお手紙を読まれる中で、「アイドルのことは全然わからなかったけれど、東京での友だちが欲しくて、虹組ファイツに入った」とおっしゃっていたりとか。
これらはすべて、反射的な一言であったり、無意識的な発言であったりはするものの、いずれの場合も、メンバーのみなさんの「素の状態」が顔を覗かせた瞬間、なんですよね。
そして、「素の状態」が存在しているということは、裏を返せば、ステージ上での「ゲイ・アイドル」としてのキャラクターは、あくまでも「ゲイアイドルごっこ」である、ということの明示に他ならないわけです。
前回の単独ライヴのときは、メンバーの多くのみなさんが、当時は「ゲイ・アイドル」としての絶頂期を迎えていらっしゃったせいなのか、「素の状態」を見せようとはなさらなかった。あるいは、「ゲイ・アイドル」としての作られたキャラクターを、「素の状態」のときでさえ、ポーズではなく本気で貫き通そうとなさっていた、そういう印象だったんですよ。
つまり、「ゲイ・アイドル」のキャラクターに自己同一化を図っていらっしゃるかたが多かった。
一方、先に引用した、岡本 忍さんについての一文のように、「アイドルという存在に自己同一化を図っていらっしゃるというよりも、むしろアイドルという存在に対して、常に一定の距離を置き、アイドルという存在を外側から見つめる」というスタンスでいらっしゃることを明示していたメンバーのかたは、むしろ少数派だった。
でも、今回の単独ライヴでは、それが逆転していたんですよね。
「これはゲイアイドルごっこである」ということを、パフォーマンスの中で明示なさっていたメンバーのかたのほうが、今回は数が多かった。たとえそれが結果論であったとしても。
たぶん、これというのは、今回の単独ライヴの最大の特色である、曲毎にメンバーの組み合わせが変化するというスタイルの影響も、大いに関係しているように思います。
曲毎にメンバーの組み合わせが変化するせいで、たぶんバックステージは混乱を極めていて、その余裕のなさ故に、メンバーのみなさんが自分自身で作り上げた架空のキャラクターではない「素の状態」が、これまでになく顔を覗かせやすい状態にあったのではないかな、と。
メンバーのみなさんがステージ上で思わず本名で呼び合ってしまったりした場面が幾度かあったのも、やはり余裕のなさ故のことであって。
でも、それによって、「これは『ゲイアイドルごっこ』である」ということの明示が、なされていたんですよね。
もちろん、ここで私が書いていることは、どちらのスタンスのほうが正しいのかという話をしているのではないですからね、念のため。
私が言いたいのは、どちらのスタンスを採るにせよ、メンバーのみなさんのスタンスがまちまちであるよりは、スタンスが統一されていたほうが、グループとしての安定感は増す、ということです。
そして、今回の単独ライヴでの虹組ファイツのみなさんには、そうした安定感があった。
それを感じたから、私は「ああ、過渡期を抜けたな」、と。
過渡期を経たことで、グループの方向性が変化したのではなくて、むしろ原点に回帰した、という感じ。
今回の単独ライヴのサブタイトルが「忍、降臨」となっていたのも、まんざらそれとは無関係ではない、という気がします。
やっぱり、原点回帰を目指していたのかな、と。
表現者としての軸が一度たりともブレたことのない岡本 忍さんが、あえて前面に出ることの意味合いとは、そこにあるのかな、と。
ライヴで自らヴォーカルを執ることからは長らく離れていた岡本 忍さんが、今回のライヴで久々に生歌を披露なさったのは、虹組ファイツがあくまでも「ゲイアイドルごっこ」の「サークル集団」であることを、改めて高らかに宣言する、そういう意味合いがあったのかな、と。
私は一人勝手に、そう深読みをしています。
そして、今回の単独ライヴのクライマックスは、もちろん、定番曲
「なんちゃって大奥」 。
そしてアンコールは、卒業式にふさわしく、ピアノ伴奏の合唱曲としてアレンジされた
「桜咲け!!!」 を、岡本 忍さんの指揮で、メンバー全員で合唱。
感動的なラストでした。
繰り返しになりますが、5度めとなった今回の単独ライヴ、私にとっては間違いなく、過去最高の素晴らしい内容でした。
☆ それから、今回はゲストとして出演なさった、虹組ファイツ卒業生のсн∀маさんのライヴ・パフォーマンス。
虹組ファイツ卒業後のсн∀маさんのパフォーマンスを、私は動画では拝見していたのですが、生で観るのは、これが初めてでした。
もう、圧巻でしたね。
このかたは、虹組ファイツという器にはもはや収まり切らなくなっていらっしゃったんだろうなー、と改めて思いました。
いや、別にсн∀маさんと虹組ファイツが不仲だと言っているのではなしに。
たとえるならば、安室奈美恵さんがスーパーモンキーズという器には収まり切らなかったのに一脈通ずる要素が、сн∀маさんにはあるような気がします。
そして安室さんもスーパーモンキーズ(=MAX)も、その両者ともが、どちらもブレイクを果たしていったように、сн∀маさんも虹組ファイツも、どちらも同じファンのかたたちから隔てなく支持されていくと思います。
この日の単独ライヴで興味深かったのは、сн∀маさんのパフォーマンス場面と、虹組ファイツのパフォーマンス場面とでは、会場の雰囲気が全然違っていたことですね。
どちらのパフォーマンスも、オーディエンスからの声援が飛び交っていたという点では同じなんですが、今回のオーディエンスのみなさんの雰囲気は、сн∀маさんのパフォーマンスのときには「鑑賞」をなさっている、という感じで、一方の虹組ファイツのパフォーマンスのときには「参加」をなさっている、という感じでした。
実際、今回の単独ライヴに足をお運びになったファンのかたのツイートを拝見すると、「虹組ファイツのライヴに参加してきた」という書き方をなさっているかたが、何人もいらっしゃったんですよね。
「観に行ってきた」とか「足を運んだ」ではなく、「参加してきた」、なんですよ。
この言い回しの違いって、実は虹組ファイツのライヴの本質を言い当てていると思うんです。
虹組ファイツのみなさんがステージに出ているときに、オーディエンスから声援が送られるタイミングって、明らかに「ツッコミ」のタイミングであることが多いんですよ。
つまり、メンバーのみなさんが「素の部分」を見せた瞬間に、すかさずオーディエンスから、親しい友人への愛情表現としての「ツッコミ」が、声援という形を取って飛ぶ、という。
これっていうのは、ゲイアイドルサークルである虹組ファイツの「ゲイアイドルごっこ」に、ファンのみなさんも一緒になって、ファンという立場から虹組ファイツというサークル活動に「参加」していらっしゃる、ということなんですよね。
でも、сн∀маさんがパフォーマンスをなさっているときの声援は、「ツッコミ」じゃなかった。
なぜなら、сн∀маさんには、そういう隙がないから。
オーディエンスの誰しもが、сн∀маさんのパフォーマンスのクオリティーの高さに圧倒されてしまって、そこで送られる声援は、もはや「ツッコミ」ではなく、メジャー級のアーティストのライヴとかコンサートの会場で飛び交っている声援と、全く同じ種類のものになっていました。
故に、сн∀маさんのパフォーマンスと虹組ファイツのパフォーマンスのときとでは、会場の雰囲気が大きく異なっていた、と私は思うんですね。
もちろん、今回の単独ライヴに足を運ばれたことを「参加」すると表現なさっていたオーディエンスのみなさんからしてみれば、声援を送ることそれ自体や、あるいは出演者のかたと一緒に手振りをすることこそが、ライヴに「参加」するということであって(ちなみに、私の隣で観ていらっしゃった男性のかたは、ほとんどの手振りを完璧にマスターしていらっしゃいました。虹組ファイツの7期メンバーに応募したら即戦力なんじゃなかろうかというくらい)、したがってそうしたみなさんは、сн∀маさんのライヴにも同じように「参加」をなさった、という認識でいらっしゃるのだとは思います。
ライヴに足を運ぶことを「参戦」と呼ぶのは、もはや完全に定着してますしね。
でも、一般に言われている、ライヴへの「参戦」と、虹組ファイツのライヴへの「参加」は、やっぱりニュアンスが違うものだと、私は思います。
でなければ、сн∀маさんのパフォーマンス時と虹組ファイツのパフォーマンス時の、会場の雰囲気の違いは、説明し切れないと思う。
今回のсн∀маさんのライヴでは、ゲイ雑誌『バディ』の創刊20周年記念ソングである
「裸で GOGO!!」 や、同じく『バディチャンネル』の2014年のテーマソングである
「恋ふるえんざ」 など、сн∀ма名義になってからのオリジナル曲がパフォーマンスされました。それらが素晴らしかったのはもちろんなんですが、個人的に私が非常に嬉しく感じたのは、新曲としてパフォーマンスされた
「DISTANCE」 。
もともとこの曲は、かつては日本にも存在していたゲイ・インディーズ・シーンにおいて、石川綺羅さんと M'KEYS(エム・キース)さんのお二人が、石川綺羅 VS M'KEYS 名義で、LGBTアーティストの専門レーベルであった YOURFACTORY ENTERTAINMENT から2005年にリリースなさった作品です。
石川綺羅さんは、虹組ファイツ背番号01番の岡本 忍さんも在籍していたゲイ・アイドル・グループ、ミルフィーユのリーダーとしてデビュー。ミルフィーユ解散後はソロに転向。この「DISTANCE」は、石川綺羅さんのソロ・シングル第2弾です。
共同名義の M'KEYS さんは、当時は札幌を拠点となさっていたゲイ・ミュージシャンで、3人組のダンス・ミュージック・ユニット、RIGHTS OF DARK のメンバーとして2002年6月1日に YOURFACTORY ENTERTAINMENT からシングル「DISCLOSURE/LAZY SIGHT」をリリースしてデビュー。その後、ソロとして独立。2003年9月1日にソロ・デビューEP『Y』をリリース。2005年には、ゲイ・インディーズ・シーンで活躍している他のアーティストとのコラボレーションによるシングル連続リリース企画、VS PROJECT を始動。「DISTANCE」はその第1弾として2005年2月14日にリリースされました。
この VS PROJECT には、当時は田中守名義で活動なさっていた岡本 忍さんも参加されていて、сн∀маさんも既にカヴァーなさっている楽曲「17cm」は、田中守 VS M'KEYS 名義で、2005年10月16日に VS PROJECT の一環としてシングル・リリースされました。M'KEYS さんによるアレンジと、田中守さんによるアレンジの二つのヴァージョンが収録されていたのですが、сн∀маさんが歌われている「17cm」は、M'KEYS さんによる当時のアレンジをそのまま使用しています。
そして今回の「DISTANCE」のカヴァーは、その「17cm」からの流れの上にあるもので、やはり M'KEYS さんによる当時のバックトラックがそのまま使用されていました。
石川綺羅 VS M'KEYS による「DISTANCE」のリリース当時のレヴュー記事と、石川綺羅さんのバイオグラフィー、ミルフィーユのバイオグラフィー、そして RIGHTS OF DARK のバイオグラフィーは、このブログの親サイトである Queer Music Experience.に掲載してあるので、ぜひそちらもご覧になってみてください。
※石川綺羅 VS M'KEYS/DISTANCE(2005年3月24日掲載)
Here > > ※石川綺羅 バイオグラフィー(2005年11月14日掲載)
Here > > ※ミルフィーユ バイオグラフィー(2005年11月14日掲載)
Here > > ※RIGHTS OF DARK バイオグラフィー(2005年4月6日掲載)
Here > > сн∀маさんが「DISTANCE」を歌ってくださったことが、私にはあまりにもあまりにも嬉しくて、だからこんなにも長々と解説を書いてしまったんですが、どうしてそんなに嬉しかったのかというと、この「DISTANCE」という楽曲は、сн∀маさんご自身も「神曲」(←ダンテの「しんきょく」ではなくて「かみきょく」です)とツイートなさっているように、紛れもない名曲ではあるんですが、実はこれがライヴで歌われたことって、ほとんどなかったんですよ。
というのも、ソロになってからの石川綺羅さんは、ゲイ・シーンでのライヴ活動を全く行なわれていなかったので。
この「DISTANCE」が初めてライヴで歌われたのは、虹組ファイツの正真正銘のデビュー・ライヴであった、2009年4月11日開催のゲイ・ライヴ・イヴェント『INSIDE OUT the LIVE 2009 SPRING』が最初でした。
このライヴ・イヴェントのエンディングで、VS PROJECT に参加なさっていた MASATO/F(マサトフ) さんと城野祐樹さん、岡本 忍さん、そして M'KEYS さんの共演によって、「DISTANCE」は初めてライヴで披露されたんですね。
MASATO/F さんは先述した RIGHTS OF DARK のメンバーのお一人。2005年5月13日に VS PROJECT の第4弾としてリリースされたシングル「LOST HEAVEN」でソロ・デビュー。そして城野祐樹さんは YOURFACTORY ENTERTAINMENT の主宰であり、虹組ファイツの初代監督でもいらっしゃったかたで、2005年7月1日に VS PROJECT の第5弾として、城野祐樹 VS M'KEYS 名義でシングル「Always Together」をリリースなさっています。
その『INSIDE OUT the LIVE 2009 SPRING』での 「DISTANCE」のパフォーマンス場面の写真がこちら。 左から、MASATO/F さん、M'KEYS さん、城野祐樹さん、岡本 忍さん。 岡本 忍さんは「DISTANCE」の歌詞を覚えていなかったので、 スマホで歌詞を見ながら歌っていらっしゃいます(笑)。 蔵出し初公開、リハーサルではなく本番のステージで(笑)、 スマホで歌詞を見ながら「DISTANCE」を歌う、 岡本 忍さんのクローズ・アップ。 虹組ファイツの記念すべきデビュー・ライヴでもあった『INSIDE OUT the LIVE 2009 SPRING』のライヴ・レポも、このブログの親サイトである Queer Music Experience.に写真付きで掲載しているので、ぜひそちらも参照なさってみてください。
※INSIDE OUT the LIVE 2009 SPRING(2009年4月11日開催、2009年4月21日掲載)
Here > > そして、сн∀маさんによる「DISTANCE」のパフォーマンスというのは、たぶん、この楽曲がライヴで披露される、これが2回めのことだったのではないでしょうか。少なくとも私にとっては、これがまだ2回め。
「DISTANCE」は、сн∀маさんがおっしゃっているように「神曲」であるにもかかわらず、オーディエンスの耳に触れる機会が、とにかく少なかったんですよ。
ゲイ・インディーズに限らず、インディー・ミュージックというのは、すべからく、たとえそれがどれだけ優れた楽曲であろうとも、メジャー配給の作品とは違って、一度リリースされたらそれっきりで、あとはひたすら忘却されていくのみのものなので、それにこうして光を当ててくれているсн∀маさんの存在が、私には非常に嬉しいし、頼もしいのです。
もちろんсн∀маさんご自身は、ゲイ・インディーズを伝承することが云々などと考えていらっしゃるわけではなくて、あくまでもゲイ・アイドルというカテゴリにおけるサウンド・クリエイターとしての M'KEYS さんのお仕事ぶりに着目した、ということなんだろう、とは思います。
しかし、全盛時のゲイ・インディーズ・シーンでアーティスト活動を行なっていたわけではない、いわば「ゲイ・インディーズ後」のゲイ・ミュージシャンであるсн∀маさんが、ハイ・クオリティーなオリジナル曲を繰り出しつつも、虹組ファイツ時代のソロ曲も封印せずに大切になさっていて、しかもそれだけではなく、今ではほとんど忘れ去られているかつてのゲイ・インディーズ・シーンで生み落とされた名曲を、当時のサウンドのままで継承し、光を当ててくださっているということが、私には非常に嬉しいのです。
ゲイ・シーンの最前線、かつ最先端を突っ走りつつも、シーンの先人たちが遺したものを、сн∀маさんは大切にして、受け継いでおられる。
そうしたсн∀маさんの姿勢が、この日にリリースされたсн∀маさんのファースト・フル・アルバム
『恋ふるえんざ』 には、しっかりと反映されています。
「ゲイ・アイドル」というカテゴリのファンのかただけでなく、かつてのゲイ・インディーズのファンであったかたたちにも、『恋ふるえんざ』というアルバムは必聴盤です。
それでは最後に、虹組ファイツの現役メンバーのかたたちのうち、私の推しメンのかたがたについて、ここではお二人ほど、書いていきたいと思います。毎回毎回、岡本 忍さんとсн∀маさんのことばかりを書いてしまっているので。
ただ、私にとっての推しメンとは、世間一般で言うところの推しメンとは、やや意味合いが異なっていますが。
まずは、背番号61番の、鈴木優吾さん。
鈴木さんは、今回の単独ライヴでソロ曲を披露されましたが、この生パフォーマンスが、非常に素晴らしかったんですよね。
これだけ歌えるかたなんだから、鈴木さんにはぜひ、ダンスはもちろんのこと、今回のソロでのパフォーマンスがそうであったように、「歌うこと」をこそ、これからも大切になさってほしいと、心からそう思いました。
「歌わないゲイ・アイドル」を批判・否定しているのではなしに、2014年3月現在では「ゲイ・アイドル」の定義が「歌を歌っているかどうか」には拠らないものに、事実としてなっている以上は、「歌うこと」それ自体が、現在では虹組ファイツの大きな特徴として機能しているのであり、鈴木さんが虹組ファイツの現役メンバーでいらっしゃるからには、そのグループとしての大きな特徴である「歌うこと」を、どうか大切になさってほしい、ということです。
そして、今後、仮に鈴木さんが虹組ファイツを卒業なさるときが来たとして(後ろ向きな仮定で申し訳ないんですが)、鈴木さんには卒業後も、引き続きソロ・シンガーとして、ぜひとも歌い続けていってほしいのです。私個人のワガママですが。
だって、これだけ歌ごころがあって、これだけ心に響く素晴らしい声と歌唱力の持ち主でいらっしゃるんだから。
背番号01番の岡本 忍さんや、既に卒業なさっている背番号37番の寺島雄助さんこと寺岡佑介さんなどは、虹組ファイツ加入前から既にゲイ・シーンでソロ・シンガーの活動を行なっていらっしゃったので、このお二方は例外として、虹組ファイツ卒業後もソロ・シンガーとして継続してゲイ・シーンで歌っていらっしゃるかたは、2014年3月現在では、сн∀маさんお一人だけなのかな? まあ、私が把握していないだけかもしれませんが。もし把握し切れていないかたがいらっしゃったなら、それは本当に申し訳ありません。
でも、とにかく、虹組ファイツに在籍していた期間を、「シンガー/ミュージシャンとしての良い意味での通過点」となさっているかたが非常に少ないという現状は、私にとっては残念というか、寂しいというか、非常にもったいない感じがするんですよ。まあ、卒業後にどのような道を歩まれるのかの選択は、しょせんは部外者でしかない私が四の五の言えるようなことでは全然ないんですけど。
それでもなお、ソロ・シンガーとしての力量が非常に高い鈴木優吾さんには、これからも末永く歌い続けていってほしいのです。
今後の虹組ファイツのライヴでも、鈴木さんの心のこもった歌声が聴けるのを、私は楽しみにしています。
仮に、この記事を鈴木さんがお読みになったとして、私の書いた内容が、鈴木さんに余計なプレッシャーをかけることになったりしたら、それは私の本意ではないので、鈴木さんのためを思うなら、ひょっとしたら書くべきではないのかなー、などと思いつつも。
……でも、いいや、書いちゃえ書いちゃえ!(笑)
一ファンとして、応援しております。
それから、背番号57番の、下嶋 大さん。
たぶん、このかたのパフォーマーとしての潜在能力って、かなり高いように、私は感じています。
人目を引きつける強い個性の持ち主でいらっしゃって、そのうえ、歌もダンスもMCも、どれをとっても、ものすごくこなれていらっしゃる。
それでいて、まだどの方向にも転がり出していない。
――という印象を、私は受けるんですよね。
今回のライヴをもって卒業なさった三浦小麦さんや北山一護さん、あるいはかつての南 浩平さんのように、グループという枠内にありながら独自の強烈な個性派キャラを確立できるだけの起爆力をお持ちでいらっしゃるはずなのに、しかしそういう方向には転がり出していない。
それでいて、既に人目を強く引きつける個性を、下嶋さんは発揮しておられる。
それが不思議だし、凄いなあ、と。
MCでのホゲっぷりを拝見するに(笑)、下嶋さんは場末の店子キャラも間違いなくこなせるんだけど、でも、その一方で、ダンスの動きを拝見している限りでは、オネエとは対極にある野郎系キャラも、これまた間違いなく、十二分にこなせるはずだと確信します。そして、ファッショナブルな路線にも対応できるセンスをお持ちだし、それとは対極の、泥臭いアーシーな路線にも十二分に対応できる個性をお持ちでいらっしゃる。
でも、まだどの路線にも転がり出してはいらっしゃらない。少なくとも2014年3月の現時点では。
たぶん下嶋さんは、パフォーマーとしては全方位対応型に近い資質をお持ちでいらっしゃるはずなんですよ。少なくとも虹組ファイツの単独ライヴを拝見して判断できる限りにおいては。
私は下嶋さんとは全く面識がないので、下嶋さんご本人が、どのようなスタンスで虹組ファイツの活動に臨んでいらっしゃるのか、私には全くわからないのですが、たぶん下嶋さんは、パフォーマーとしての欲を、もっと出してもいいような気が、なんとなくではあるんですが、私はします。
そういう潜在的な起爆力をお持ちのかただと、私は感じています。
仮に、この記事を下嶋さんがお読みになったとして、私の書いた内容が、下嶋さんに余計なプレッシャーをかけることになったりしたら、それは私の本意ではないので、下嶋さんのためを思うなら、ひょっとしたら書くべきではないのかなー、などと思いつつも。
……でも、いいや、書いちゃえ書いちゃえ!(笑)
一ファンとして、応援しております。
☆ というわけで、前回の単独ライヴの観覧記すらも大幅に上回る、とんでもなく非常識な長文になってしまいましたが、最後までお読みになってくださったみなさま、どうもありがとうございました。
私はメンバーのみなさん全員の Twitter のアカウントをフォローしているわけではないので、この記事に書いた内容は、実際のステージ上でのパフォーマンスのみを主な材料にした、一人勝手な憶測、あるいは私個人の妄想やワガママを、多分に含んでいますが、客観的事実と個人的な憶測・妄想とは、ちゃんと区別をして書いているつもりなので、この記事をお読みになってくださったみなさまにおかれましては、どうかそれらを混同なさらないよう、切にお願い申し上げます。
以上、『虹組ファイツ ゴー!5!Go! ~忍、降臨~』の観覧記でした。
参考までに、私がこれまでに書いてきた、虹組ファイツ関連の記事は、以下のとおりです。どれを取っても非常識な長文ばかりですが(苦笑)。
※冬の東京レインボー祭りで考えた、「ゲイ・アイドル」の性質の変遷。(2014年1月19日掲載)
Here > > ※虹組ファイツ単独ライブ4th ~みんなのハートに桜さけ!~(2013年3月23日開催、2013年6月4日掲載)
Here > > ※虹組ファイツ1st コンサート みんなの事がダイスキ!(2010年11月7日開催、2010年11月14日掲載)
Here > > ※INSIDE OUT the LIVE 2010(2010年5月15日開催、2010年6月30日掲載)
Here > > ※キャバレー☆ピロガネーゼ歌謡祭 2009春(2009年5月28日開催、2009年7月25日掲載)
Here > > ※INSIDE OUT the LIVE 2009 SPRING(2009年4月11日開催、2009年4月21日掲載)
Here > >
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