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11月1日付のGay.com UKの記事では、ウィル・ヤングの新曲「Switch It On」のヴィデオ・クリップが話題となっている。

Queer Music Experience.ウィル・ヤング プロフィール
http://k-serv.homedns.org/QueerMusicExperience/queer_musicians/overseas/will_young_profile.html

Check out Will Young's new video
http://uk.gay.com/article/4099
(ウィルの新曲のヴィデオ・クリップがフル・コーラスで視聴可)


11月14日発売の新曲「Switch It On」は、同月21日に発売されるウィル・ヤング2年ぶりのアルバム、『Keep On』からの先行シングルで、ウィル・ヤングの公式サイトでは、既に10月20日からヴィデオ・クリップがフル・コーラス視聴できるようになっている。

ウィル・ヤング公式サイト
http://www.wyoung.co.uk/



Will Young/Switch It On
新曲のジャケット



Gay.com UKの記事によると、「Switch It On」のヴィデオは、

古今の最もゲイゲイしい映画と、英国で最もビッグなゲイのスターを混ぜると、どうなると思う?

その通り!

それがウィル・ヤングの新しいヴィデオだ。


と紹介されている。

件の「古今最もゲイゲイしい映画」とは、何か。

ジャケットを見ればわかるとおり、アイドル時代のトム・クルーズが主演して大ヒットした『トップ・ガン』である。

この記事を読む限りでは、『トップ・ガン』という映画は、イギリスのゲイ・ピープルのあいだでは、もっぱら「the gayest film of all time」として認知されているらしい。

筆者自身は、『トップ・ガン』という映画を、ゲイ映画だと感じたことはない。別段ゲイの観客層を狙って作られた作品でもないだろうと思う。

ただ、『トップ・ガン』がゲイ受けする理由は、何となくわかるような気がする。

『トップ・ガン』は、一言で言ってしまえば、当時のアメリカのティーンの男の子たちが夢想していた、「あんなふうになれたらいいな」という職業やファッション、あるいは「こんなことをしてみたい」という恋愛や友情のシチュエーションを、全部トム・クルーズにやらせてしまえー! という映画だったのではないか。

それが証拠に、劇中の主要な人間関係は、全てトム・クルーズが演じる主人公マヴェリックとの関係性でのみ示される。

マヴェリックのいないところに、この物語の人間ドラマはない。(本当はただ1人、例外がいるのだが、それは後述)

たとえば、マヴェリックの恋人、チャーリー役のケリー・マクギリス。

彼女がこの映画の観客に果たす役割というのは、「年上の女性(しかも教官)から恋のレッスンを受けてみたい」という、観客の少年たちの、甘いタブーのお相手になること。その一点に尽きる。

極端な言い方をすれば、マヴェリックとチャーリーがメイク・ラヴにまで至った時点で、チャーリーの役割は終わっている。だから、2人の恋の結末が、物語の結末にならない。

主人公のライヴァル、アイス・マン役のヴァル・キルマーや、親友グース役のアンソニー・エドワーズの扱われ方も、チャーリーと同様だ。

キルマーやエドワーズが演じているのは、観客の男の子から見て、「こういうライヴァルがいたら燃えるよな」とか、「こういう親友がいたらいいよな」と思えるようなキャラクター。

それは言い換えれば、「トム・クルーズ気分の観客の目から見た、理想のライヴァル像であり、理想の親友像」になっているから、彼らの存在意義は、マヴェリックとの関係の中で初めて生じる。

この映画における、ケリー・マクギリス、ヴァル・キルマー、そしてアンソニー・エドワーズは、全員、「トム・クルーズとの関係性」でのみ描かれている。

トム・クルーズが演ずるマヴェリックを間に挟まないことには、彼らのあいだには人間関係が発生しないように最初から出来上がっている。

その意味では、彼らの存在は、老若男女を問わず、全く等価。

そして、それはイコール、
「この映画の中では、異性との恋愛と男同士の友情が、全く等価になっている」
ということでもある。

そのことが、『トップ・ガン』をゲイっぽい映画にさせた一つの要因ではないか。

それともう一つ、観客の男の子たちの中にある、「こういうカラダになれたらいいよな」という肉体美願望を満たすためのシーンも、『トップ・ガン』には用意されている。

それが、ビーチヴァレーのシーンや、サウナ風呂のシーンなどだ。

これらのシーンで映された男の半裸は、ゲイの観客向けというよりは、あくまでもティーンの男の子へ向けた、「カッコいい大人の男の見本」のようなものだったと思う。

しかし、こうした作りが、結果として『トップ・ガン』という作品を、ゲイの話題が全く描かれていないにも関わらず、「非常にゲイゲイしい映画」という評価に到らせたのだと思う。



そんな映画の中でただ1人、先述したように例外的な存在のキャラクターだったのが、後に大女優となったメグ・ライアンの演じた、グースの妻キャロル。

彼女が演じたのは、愛する夫の死に直面した妻の悲劇だが、そこには、マヴェリックの存在が入ってくる余地がない。たとえ夫の死にマヴェリックの判断ミスが関与したとしても、マヴェリックとキャロルの関係性それ自体の中には、ドラマの要素が設けられていなかったからだ。

したがって、すべてがマヴェリックを起点としたドラマの中で、ただ一人、マヴェリックとは無縁のドラマを演じたメグ・ライアンが目立つのは自明の理で、彼女はこれ以後、女優としてどんどん大きくなっていった。




閑話休題。

異性との恋愛と男同士の友情が完全に等価として描かれているこの『トップ・ガン』をベースにした、ウィル・ヤングの待望の新曲、「Switch It On」のヴィデオ・クリップについてである。

内容は『トップ・ガン』のパロディ。主人公マヴェリック役をウィルが演じ、ヴァル・キルマーのそっくりさんが演じるアイスマンや、アンソニー・エドワーズのそっくりさんが演じるグースと、本家『トップ・ガン』の印象的なシーンを再現している。

それらの再現シーンの中で、もっともカット数の多いのが、ビーチヴァレーのシーンと、アイスマンとマヴェリックが喧嘩になりそうになる、サウナのロッカー・ルームのシーン。

それらのシーンを、Gay.com UKの記事は、
「トム・クルーズが最初に我々ゲイの興味をそそったすべてを、ウィルがゲイの最新段階にまで引き上げたもの」
と評している。

そして、チェック・ポイントとして、
「汗まみれのサウナ・シーン」
「ヴィレッジピープルヘルメット」
「ビーチヴァレーでスパイクを決めて優しく肩を抱きあう男たち」
を挙げている。

この2番目の「ヴィレッジ・ピープル・ヘルメット」というのがよくわからないのだが、おそらくは、このヴィデオ中でのウィルのコードネームが、本家の「マヴェリック」ではなく、「カウボーイ」となっていることにひっかけての、ゲイのコスプレを指したジョーク? と解釈している。


「Switch It On」のヴィデオは、確かにゲイの匂いがする。しかし、ゲイ・テイスト満載、とまで言い切るには大人しいだろう。ゲイ・テイスト満載というだけなら、今年の作品の中だけ考えても、シザー・シスターズ「Filthy/Gorgeous」のようなヴィデオもある。

ただ、これまでのウィル・ヤングを考えると、彼は英国の人気オーディション番組『Pop Idol』出身のアイドルということで、既にカミングアウトはしているものの、国民的アイドルにふさわしいように、到ってクリーンなイメージで通してきた。

その彼が、これまでのイメージとは異なった、ラフでダーティーな雰囲気の楽曲を、ニュー・アルバムからのファースト・シングルとしてリリースしたということ、しかもゲイっぽさを明らかにうかがわせるヴィデオ・クリップを製作したということをこそ、Gay.com UKは大きく取り上げたいのだろう。


つまり、イギリスのゲイ・コミュニティは、ウィル・ヤングが単なる国民的アイドルから、国民的ゲイ・アイドルに脱皮することを、大きく期待しているのだと思う。

ニュー・アルバム『Keep On』で、ウィル・ヤングがどのようなイメージ・チェンジを見せてくれるのか、筆者も大いに期待している。


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2005.11.03 Top↑
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