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マーク・フィリー、カミングアウト後のチャート・アクション

10月31日にイギリスで発売された、ウエストライフのニュー・アルバム、『Face To Face』からの先行シングル、「You Raise Me Up」が、10月30日付の全英シングル・チャートで、見事、初登場1位を記録した。

ウエストライフにとっては、これが通算13枚目のNo.1シングルとなる。





ウエストライフの日本での発売元である、BMG JAPANの公式サイトの記事によると、「You Raise Me Up」の売り上げは、過去12枚のナンバー1シングルを上回るセールスを記録しているとのことで、イギリスにおけるウエストライフの人気は、依然、衰えを見せていないようである。

このブログでも既に紹介しているが、ウエストライフのメンバーであるマーク・フィリーは、今年の8月19日に、イギリスの大衆紙『The Sun』のインタヴューの中で、ゲイであることをカミングアウトしている。

マーク・フィーリー、カミングアウト
http://queermusicexperience.blog10.fc2.com/blog-entry-26.html

Westlife / Face To Face
(右端がマーク・フィリー)


これがもし、ウエストライフがアメリカのグループだったとしたら、ウエストライフの人気は、マークのカミングアウトによって急落し、彼らはヒットチャート上から姿を消してしまっただろう。

しかし、イギリスという国は、オープンリー・ゲイのアーティストに概ね好意的だ。

今回、ウエストライフの新曲が、こうして初登場1位となったことで、そのことがまた証明された、と言えそうだ。

BMG JAPANの公式サイトでの解説によると、「You Raise Me Up」という曲は、シークレット・ガーデンというデュオ・グループのカヴァーらしい。

正直、「またカヴァー曲か」という気が、しないでもない。

というのも、イギリスやアイルランドのボーイバンドは、あまりにもカヴァー曲が多すぎるからだ。マークのカミングアウトの直前にリリースされた前作、『Allow Us To Be Frank』からして、スタンダード・ナンバーのカヴァー集だった。

しかし、まあ、イギリスの音楽市場においては、90年代にテイク・ザットが確立したカヴァー・ヒットの手法が、未だに有効ということなんだろう。

それは見方を変えれば、メンバーのカミングアウトがあった後でも、ウエストライフがこれまでの路線を全く変更していない、ということでもある。

つまり、ゲイであることをオープンにしたマークが、「そうです。僕はゲイですが、それがナニか?」と言わんばかりの姿勢で、依然としてアイドルであり続けていることの証明でもある。

仮に、ウエストライフが、このまま以前と変わらずに成功していくのならば、それはオープンリー・ゲイのアーティストのあり方として、ちょっと珍しいものになるかもしれない。



たとえば、それまでは全くゲイゲイしさを感じさせなかったアーティストが、カミングアウトを機に、堂々とゲイ・テイストを打ち出すようになるのは、個人的には、非常に嬉しいし、頼もしくもある。

しかし、マークに関して言えば、『The Sun』のカミングアウトのインタヴューの中で、
「他の誰かのロールモデルになることは望んではいない」
と語っていたことからも推測できるように、ゲイ・テイストを前に出したアーティスト活動を彼がすることは、少なくとも現時点では、あまり考えられない。

ゲイ・テイストというのは、あえて定義づけをするならば、アートの分野におけるゲイの指向性の、最大公約数である。言ってみれば、それはゲイ・コミュニティ内の多数派ということであって、そこに属さないオープンリー・ゲイのアーティストがいても、別におかしくはないわけである。

そうしたアーティストの1人がマーク・フィリー、という見方も可能だ。



「You Raise Me Up」の売り上げが、過去12枚のNo.1シングルのセールスを上回っているというのは、ひょっとしたら、以前と変わらないマークのあり方が、従来の女性ファン層をガッチリとキープしつつ、マークのカミングアウトを支持したゲイのリスナーをも、新たにファン層に加えることに成功したためなのかもしれない。

もし本当にそうだとするのなら、マーク・フィリーは、ゲイであることをオープンにしつつ、それまでの路線を堅持することによって、女性にとっても男性にとってもアイドルであるゲイ・アーティストという、新しいポジションを開拓した、ともいえるのではないだろうか。

ウエストライフのチャート・アクションは、そうした観点から見ても面白い。

その意味で、彼らにはどこまでもアイドル人気を堅持していってほしい。



それはそうと、『Face To Face』の日本盤の発売が、来年の2月っていうのは、あまりにも遅いような気がするんですが。

イギリスのヒットチャートの性質から考えて、日本でアルバムが発売されるころには、『Face To Face』はイギリスのヒットチャート上ではかなり順位を下げているはずで、日本での宣伝を盛り下げてしまうのでは? とやや心配。


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コメント

本文ではいろんな角度からの考察があって面白かったです。とりあえず一点だけコメント。

結局カミングアウトの影響が限定的だったおいうことで、アイドルがセクシャリティのアイコンというよりも、むしろ、キャラクターとかアーティストのイメージのアイコンであったのではないかと思いました。

日本ではゲイということがスキャンダラスなものとしてマーケティング的には認知されていますよね。HGなり、前田健なりの最近の例のように、人目を引くという点でスキャンダラスで、日本ではまだカミングアウトの意味を変えてくれるようなオープンリーゲイなアーティストは出てきてませんね。または僕たちの問題としてそれを支持するだけのコミュニティなり社会の成熟がないのかもしれません。

>tos

アイドルがセクシャリティのアイコンではなくなったのではなく、アイドルの役割とか機能が、リスナーのニーズに応じて、以前と比べて多様化している、ということなんじゃないかな。

その一つの表れが、マーク・フィリーのあり方だと思う。

セクシャリティのアイコンとして機能しているアイドルは、特に女性アイドルの場合、依然として、たくさん存在しているでしょ? 少なくとも、洋楽の場合はそう。

そう考えると、男性アイドルであるマーク・フィリーのカミングアウトの影響が限定的であったということから読み取れる情報というのは、イギリスの女性リスナーが、必ずしも男性アイドルにセクシャルなものを求めているわけではなかった、ということだと思う。

だから、マーク・フィリーのカミングアウトが導き出したものは、イギリスの男性と女性のあいだにある、セクシャリティへの意識の差、ということかもしれない。女性アイドルがビアンであることをカミングアウトした場合は、また違った受け止め方をされるだろうから。

カミングアウトの意味を変えてくれるオープンリーゲイのアーティストが日本にも出てきてほしい、という気持ちには全く同感。カミングアウトがスキャンダル的に扱われるのはイギリスでも同じなんだけど、日本の場合、カミングアウトする勇気を讃えるという論調はほとんど見られなくて、ひたすら色モノ扱いで終わるからね。

だからこそ、せめてゲイ・コミュニティの側からだけでも、有名人のカミングアウトをもっと好意的に受け止め、その勇気を讃える論調を拡げていく努力をしたほうがいいと思ってます。

前田健のカミングアウトは、実はかなり勇気がいったと思うんだよね。
たぶん、今の日本では、お笑い芸人しかカミングアウトできないでしょ。笑いに紛らせないと、ゲイであることを告白しにくい空気がある、というような。お笑い芸人だからこそ、ゲイであることを受け止めてもらえる、という状況だと思う。

そういう空気を変化させていくためには、ゲイの当事者が前田健のカミングアウトを批判的に見るのではなく、ゲイの当事者こそが、彼のカミングアウトを勇気あるものとして支持するべきなんじゃないかと思います。

「You Raise Me Up」は、登場2週目も全英シングル・チャートの首位を守っています。やはり、これまでの人気を反映しただけではない、本格的なヒットの仕方をしているようです。
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